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人との縁を大切にする村上の酒屋さん「酒道楽 工藤」。

村上に春を呼ぶ「城下町村上 町家の人形さま巡り」。お店ごとに代々伝わる雛人形が飾られ、たくさんの観光客で賑わうイベントです。そんななか、雛人形に混じって不二家のペコちゃん人形がたくさん飾られている「酒道楽 工藤」というお店があります。こちらにお邪魔して、店主の工藤さんからお酒やおもてなしについてのお話を聞いてきました。

 

 

酒道楽 工藤

工藤 達朗 Tatsuro Kudo

1948年柏崎市生まれ。父親の経営する商店を継ぎ、1993年に「酒道楽 工藤」としてリニューアルオープン。書画やギターをたしなみ、剣道は教士五段の腕前。

 

酒屋にペコちゃん人形のコレクションがある理由。

——ペコちゃん人形のコレクションが見事ですね。なかにはかなり古いものもあるようですが……。

工藤さん:以前は日用品から食料品まで扱っている「よろずや」をやっていて、不二家さんのお菓子も扱っていたから、昭和30年代にディスプレイ用としていただいたのがはじまりなんだよ。それ以来、なんとなく集めてきたんだけどさ。

 

 

——工藤さんは何代目なんですか?

工藤さん:俺は2代目。羽越本線の桑川駅で駅長をやっていた親父が、定年前に退職して下駄二足からはじめたお店なんさ。日用品や食料品を扱っていた頃は、朝食に食べる豆腐を買いに来るお母さんや登校のときに文具を買いに来る子どもたちで朝から忙しかったね。

 

——工藤さんは、高校を出てすぐ家業を継がれたんですか?

工藤さん:大学に行きたいと思っていたけど、親父が歳だったから店を継いだんだよ。しばらくは周辺地域のことを覚えるために、ライトバンに商品を積んで移動販売して回っていたね。

 

——お酒をメインに売りはじめたのはいつ頃なんでしょうか。

工藤さん:スーパーやホームセンターがいっぱいできて、日用品や食料品がだんだん売れなくなっていったから、30年くらい前に改築してお酒をメインにした「酒道楽 工藤」をはじめたんだよ。食料品なんて、最後は豆腐とこんにゃくしか置いてなかったからね(笑)

 

——時代の流れを感じますね……。酒屋にリニューアルしてみて、いかがでした?

工藤さん:当時は「地酒ブーム」だったから新潟の地酒が大人気でね。東京の飲食店からもたくさん問い合わせがあって、蔵元と一緒に東京へ行って挨拶回りしたこともあったね。1日15軒くらいは回ったんじゃないかな。リニューアルオープンしたばかりの頃は、とにかく量を売ることばかり考えていたんだけど、だんだん量より質を大事にするような方針に変えていったんだよ。

 

お酒を売るだけではなく、魅力や楽しみ方を伝えたい。

——それでは工藤さんのオススメのお酒を教えてください。

工藤さん:やっぱり村上の地酒「大洋盛」と「〆張鶴」だね。大洋盛をつくっている「大洋酒造」さんからは「七曲り(ななまがり)」っていう、オリジナルブランドの日本酒をつくってもらっているんだよ。

 

——それはすごい! どんなお酒なんですか?

工藤さん:すっきり飲みやすくて、どんな料理にも合うようにつくられた日本酒だね。村上の人たちに親しまれている「臥牛山(がぎゅうざん)」って山があるんだけど、その登山道が「七曲り」って呼ばれているんだよ。その道の名前と人生をダブらせてつけた名前なんさ。

 

 

——ぜひ飲んでみたいですね。ちなみに、お酒を美味しく飲むコツがあったら教えてください。

工藤さん:常温で飲むのがお酒の味がわかりやすくてオススメなんだけど、お酒のつくりやシーンに合わせて自分好みで楽しむのがいちばんいいんじゃないかな。これからの季節だったら、かき氷みたいに細かくした氷を浮かべたお酒に、桜の花を添えて楽しむとかね。

 

——おおっ、春の雪解けを感じさせるかっこいい飲み方ですね。ではお酒を飲むときに、気をつけてほしいことはありますか?

工藤さん:お酒は光と熱を嫌うから、冷暗所で保存するようにすることだね。いいコンディションで美味しく飲んでほしい。そのためには健康に気をつけて、いい雰囲気で飲みたいよね。健康じゃなければお酒が飲めなくなるし、雰囲気が悪ければどんなに高いお酒でも美味しくないからね。あと水は必ず飲むようにした方がいいな。

 

——なるほど、気をつけます(笑)

工藤さん:ただお酒を売るだけじゃなくて、お酒の魅力や美味しい飲み方を伝えていくのが酒屋の務めだと思うんだよ。だからお付き合いのあるホテルを借り切って、お酒を通じて交流を深めるようなイベントを開催してきたんさ。その席でギターの弾き語りを披露したこともあったね(笑)

 

感謝の気持ちを絵手紙や似顔絵に託す。

——さっき来られたお客さんにお茶を振舞っていましたけど、普段からそういった対応をされているんですか?

工藤さん:こんな町外れにある店まで足を運んでくれるんだから、感謝の気持ちを込めておもてなしくらいしないとね。「おもてなし」っていうのは言葉の通り、表じゃない裏の見えないところで気を使ってあげることだと思うのよ。うちは価格勝負できるような店じゃないから、人との触れ合いを大切にやってきたんだよね。

 

——お客さんに何か渡されていたようでしたが……。

工藤さん:わざわざ来てくれたことに感謝の気持ちを表したいんだけど、何もあげられるものがないから、おみやげ代わりに絵手紙や似顔絵を描いて渡しているんだよ。先日、10年ぶりに来てくれたお客様がいて、当時描いてあげた絵葉書を今でも持っていると言ってくれたんさ。

 

 

——お客さんとの触れ合いを大切にされているんですね。

工藤さん:心の触れ合いはお金で買えないもんね。これからも人の縁を大事にして、心を込めてお酒の魅力を伝えていきたいね。

 

 

 

酒道楽 工藤

村上市堀片4-8

0254-53-2694

9:00-19:00

水曜休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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