美味しいパンを、作り続けるために。
「ARTISANS」の宮島さん

食べる

2026.04.20

text by Ayaka Honma

昨年栃尾にできたパン屋さん、「ARTISANS(アルティザン)」。以前Thingsでお話を聞いた「picto」の宮島さんが新しくはじめたお店です。営業日には行列ができるという噂のこちらのお店、お話を聞くべくお店に向かうと、この日のパンはすでに完売し、残されたのは「撮影用に」と用意してもらったバゲットのみ。「その日のパンが売り切れたらおしまい」というスタイルには、宮島さんが模索している新しい働き方が見えてきました。

Interview

宮島 順子

Junko Miyajima(ARTISANS)

1987年長岡市栃尾生まれ。横浜にある国際フード製菓専門学校を卒業後、京都や東京、フランスで修行。2018年に見附市で「picto」をはじめる。その後、地元である栃尾で「ARTISANS」をオープン。

自分のお店を持ったからこそ、
感じたこと、考えたこと。

――またお話を聞くことができて嬉しいです。「picto」は宮島さんがフランスから帰ってきた後にはじめたお店でしたね。

宮島さん:いつかは新潟に戻ってお店を開くのがひとつの目標だったんです。戻るきっかけをくれたのが、フランスでの経験でした。パンを作る中で、ただレシピ通りに作るのではなく、その過程の意味を自分の中で消化して、「どんなパンが作りたいか」を考えて作る、という経験をしました。「私がパンを作る」っていうことに向き合えたからこそ、新潟に戻る決断ができたと思っています。

 

――新潟に戻ってからも、新しく気づいたことがあったのだとか。

宮島さん:オープン当初は、フランスでの経験が日本でどれだけ再現できるかを確かめるように作っていたと思います。お客さまがどんなパンを求めていて、自分のパンはどう受け入れられているのかをすり合わせながら。そうしたら、思っていた以上に、まだ自分がパンを作れない段階なんだっていうことに気づいたんです。

 

――えっ、宮島さんでもそう思うことがあるんですね。

宮島さん:フランスだと、部門ごとに分かれてそれぞれのパンを作るんです。クロワッサンを作る部門とか、バゲットやカンパーニュみたいな食事系のパンを作る部門とか。私は、食事系のパンを作る部門にいたので、フランスでクロワッサンを作る作業の一部は手伝ったことがあったのですが、最初から最後までは作ったことがなくて。「picto」をはじめてから、久しぶりにきちんとクロワッサンを作ったんです。いろんな本を読んだり、試しに作ってみたり……。独学でパンづくりを学んだのは、これがはじめての経験だったかもしれません。

 

――学べることがまだまだあった、というわけですね。その後、惜しまれつつも「picto」は閉店することになりました。

宮島さん:お店をやっていく中で、体調的にも限界だと感じることがあって。このまま続けると、元気に仕事ができなくなって、パンのクオリティが落ちてしまうかもしれないと感じるくらい、ギリギリでした。このまま続けていった先をイメージできなかったのもあったし、お客さまが私の作るパンを美味しいって言ってくださっているうちに、一度立ち止まろうって思ったんです。

 

――あらら、少し頑張りすぎてしまったのかもしれないですね。

宮島さん:前よりも自分のできることが増えたり、パンの味や見た目が良くなっていくと、すごく嬉しくなって作るのをやめられなくなっちゃうんです。気づいたら明日の分を仕込んでいて、「この前いつ休んだっけ?」って(笑)。この仕事を続けていきたいのに、どうやって続けたら良いかが分からなくなったんですよね。それでお休みをいただいて、自分の働き方を考える時間を作りました。

 

――ご自身の理想の働き方は、見つかりましたか?

宮島さん:一日何も仕事をしない日を作ってちゃんと休んで、仕事をする日も100%の力で頑張りすぎず、少し余力を残して仕事ができるようにバランスをとることですかね。ただ、今も頑張りすぎるときがあって、バランスはまだまだ模索中です(笑)

 

「picto」で使っていたカップが、ここにもありました。

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一度立ち止まって、考えて。
「ARTISANS」として、再出発。

――昨年、地元である栃尾で「ARTISANS」をオープンしました。

宮島さん:「ARTISANS」はフランス語で「職人」という意味の言葉です。次に出すお店も「picto」っていう名前のままでもよかったんですけど、一度お店を閉めてから、それまで経験できなかったことをたくさん経験しました。いざ新しいお店を出すことになったとき、自分を支えてくれる芯のような存在を名前にしたくて。私は職人でありたいなって思ったんです。職人って培ってきた感覚や、見てきたものやその時間をかたちにする仕事だなと思っていて、そんなふうに私も生きたくて、この言葉を選びました。

 

――こちらで作られているパンのことも、教えてください。「picto」のときからどんな変化があったのでしょう。

宮島さん:ベースは大きく変わっていないのですが、自分で2種類の酵母を起こすようになったので、ハード系のパンの種類が増えましたね。「picto」のときには使ったことがなかった材料で新しくパンを作ったりもしています。あとはクロワッサンの生地をベースにしたパンも、成形をアレンジして見た目の変化を楽しんでもらえたらなって思っています。

 

――以前よりも幅広く、新しいパンにもチャレンジできるようになったんですね。

宮島さん:今は週に2日を目安に営業していて。あとは仕込みの時間に回しているんです。毎日仕込みをするんですけど、1日の負担は減っているので、以前よりは身体の負担は大きくないんです。それに、コンスタントに仕込むことで、失敗したときのリスクが小さくなるし、私自身が集中しやすいなって感じています。前よりも時間を確保できるので、新しいパンの試作もしやすくなりました。

 

――週2日の営業日には、たくさんの方がパンを求めて「ARTISANS」へ足を運びます。平日の今日も、取材に来たときにはすでに完売していました。

宮島さん:今日は個数制限をもうけていなかったので、13時過ぎにはパンのほとんどが売れていきました。「picto」は週に4日営業していたので、オープン前にお客様が並んでいるっていうことが多くはなかったんです。でも、「ARTISANS」をはじめてから、みなさん並んでくださるようになって。少しでも待ち時間を減らせたらと思い、最近では整理券をお配りしています。

 

――「ARTISANS」に来たら食べてほしい、おすすめのパンはありますか?

宮島さん:来てくださる時間帯によりますが……、クロワッサンがあればぜひ食べてほしいですね。「picto」のときには作っていなかったハード系のパンも、フランスで学んだことが活かされていると思うので、食べてもらえたら嬉しいです。

 

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職人として、人として成長して、
日常に寄り添えるお店を作りたい。

――前回宮島さんにお話を聞いたのが2021年です。この5年間を振り返ってみてどうですか?

宮島さん:パンづくりの技術やクオリティは上がったな、と思う反面、人としてはまだまだだなって。「picto」を閉めてからは、それまでとは違った時間の中で、たくさんの方々とお会いして、自分自身と向き合う日々を過ごさせていただきました。それまではひとりでパンを作り続けていましたから。そのときに自分の未熟さをすごく感じて、これからは人としての部分も育てていけたらいいなと思います。

 

――「ARTISANS」はこれから、どんなお店になっていくのでしょう。

宮島さん:お店の中で立ってコーヒーを飲んでもらえるくらい、みなさんの日常に寄り添えるような、穏やかなお店にしていきたいですね。私の作れるパンの量を考えると、まだ営業日を増やすのは難しいんですが……(笑)

 

――仕事量を調整できるのは、ご自分のお店をだからこそですね。

宮島さん:そうですね。パンの種類や作り方、仕込む時間の使い方なんかも、自分の体力に合わせて変えていけたらいいですね。人としても成長していきたいので、外に出て誰かと関わりながら自分の仕事を続けられるようにするのが今の目標です。

 

――これからもお身体にお気をつけて、頑張ってください! 今日はありがとうございました!

 

絶対に美味しいんだろうな、と思わせてくれるメニューたち。どんなパンなのか、想像するのも楽しいです。
特別に許可をいただき、窓際に置いて撮影させていただきました。

ARTISANS

長岡市楡原1939-2

営業日はInstagramをご確認ください。

※最新の情報や正確な位置情報等は公式のHPやSNS等からご確認ください。なお掲載から期間が空いた店舗等は移転・閉店の場合があります。また記事は諸事情により予告なく掲載を終了する場合もございます。予めご了承ください。

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