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新潟の食の伝道師。駅構内の案内所「TABIBAR & CAFE」。

県外から来た人の「新潟のお酒や食べものは美味しい!」という言葉をよく耳にします。東京や大阪にある新潟のアンテナショップも賑わっていると聞きます。新潟のお酒や食べものが美味しい理由は、もちろん気候風土によるところも大きいと思いますが、それ以上に、生産者の「思い」の強さもあるのではないでしょうか。そんな「思い」を伝える「食の案内所」が、JR新潟駅構内にあります。その名も「TABIBAR & CAFE」。今回は「おいしいナビゲーター」として新潟の食の魅力を伝える久保田さんにお話を聞いてきました。

 

 

TABIBAR & CAFE

久保田 健司 Kenji Kubota

1972年新潟市西区生まれ。千葉県の大学を卒業後、新潟に戻って自動車部品の卸売会社に就職し、新規のフランチャイズピザ事業に従事。レストランバスの会社を経て、2019年より「TABIBAR & CAFE」の「おいしいナビゲーター」に就任。「くぼケン」としてYouTubeでも新潟の食を紹介している。

 

県外からやって来た人に、新潟ならではの「食」をご案内。

——「TABIBAR & CAFE」ってどんなお店なのでしょうか。

久保田さん:お店っていうよりも、新潟の食についてご案内する「食の案内所」なんですよ。案内所の他に、プレミアムな日本酒が飲める「日本酒BAR」とか、発酵をテーマにしたフードやドリンクが楽しめる「発酵カフェ」とかもやっています。

 

——いろいろ気になるワードが出てきましたね。「食の案内所」っていうのは、どんなことをしているんですか?

久保田さん:新潟駅っていう場所柄、観光でお越しになる県外客や外国人の方が多くて。そうした方々に新潟の美味しい食を紹介したり、美味しい料理が食べられる飲食店をご案内したりしています。希望があれば、その場で予約までしてあげているんですよ。

 

——なるほど。ということはただのカフェやバーではなく、紹介をしている場所、ってことですね。

久保田さん:新潟には美味しい食がたくさんあるので、それを県外の人たちに知ってほしいという思いがずっとあったんです。でもそうした新潟の美味しいものって、ほとんど県内で消費されていて、県外の人が食べる機会って少ないんですよ。

 

——生産数が少ないと県外まで出回らないと聞きます。

久保田さん:そうなんです。あと県外から来た人って、新潟のことをよく知らない人も多いから、なんとなく新潟駅のまわりにあるお店や有名なお店に行くことが多いんです。それだけじゃもったいないから、ここでいろんなお店を紹介しているんですよ。

 

提供しているフードやドリンクは「発酵」がテーマになっている。

——カウンターがありますけど、「日本酒BAR」ということは、ここで飲むこともできるんですよね?

久保田さん:新潟の美味しい地酒を味わっていただけます。ここでしか飲めない、お猪口一杯で1,000円くらいするプレミアムな日本酒が揃っているので、お値段は高めですけどお客様にはダントツで人気がありますね。

 

——え、そんな高いお酒もあるんですね。

久保田さん:日本酒好きの地元の方も飲みに来ますよ。カウンターで飲んでいたお客様同士が意気投合することもあります。地元の人と観光の人が仲良くなって、そのまま一緒に街へ繰り出す、なんてこともあるんです(笑)。そういうのを見ていると、人と地域をつなぐ場所として機能できているなぁって実感しますね。

 

 

——日本酒だけじゃなくてフードやドリンクも?

久保田さん:人気なのは「発酵カレー」ですね。日本酒も含めて、実はここで提供しているフードやドリンクのテーマが「発酵」なんですよ。雪国新潟の食文化を考えると「発酵」は外せないキーワードなんですよね。カレーにはカツオダシ入りのコシヒカリ玄米味噌が使われていて、辛みよりも甘みが強いのが特徴になっています。販売しているレトルトカレーも人気があるんですよ。

 

 

——へ〜、ドリンクは日本酒以外はどんなものを?

久保田さん:「糀ドリンク」や「発酵フルーツソーダ」があります。「糀ドリンク」は糀の自然な甘みを楽しむことができます。「発酵フルーツソーダ」は柿酢入りの発酵シロップをソーダで割ったもので、中に入るフルーツは季節によって変わります。

 

——とことん「発酵」にこだわったメニューになっているんですね。

久保田さん:提供するときにそのフードやドリンクの魅力が伝わるように、バックボーンを説明させていただいてますね。どんな地域で作られている、どんな歴史のある食べ物なのか、作っている酒蔵や生産者はどんな方なのか。料理の背景にある「新潟」を感じてほしいんです。

 

野菜の美味しさに感動したのがきっかけで、新潟の食と向き合う。

——久保田さんの言葉からは強い新潟愛を感じますが、ずっと新潟で暮らしてきたんですか?

久保田さん:実はそうでもないんです(笑)。高校生の頃に「東京ラブストーリー」っていうテレビドラマが流行って、その影響で東京に憧れていたんですよ。当時は新潟なんてなんにもない所だって思っていましたね(笑)。それで東京の大学に行こうと思ったんですが、受かったのは千葉の大学でした(笑)

 

——新潟への愛は、いつ?

久保田さん:新潟を離れてみて、新潟の自然の美しさを思い出したんですよね。

 

——新潟の会社に就職されたんですか?

久保田さん:知り合いから自動車部品の卸売をしている会社を紹介されて入社しました。かわいい女の子がいっぱいいるって言われて、喜んで入社したら野郎ばっかりでした(笑)。でも楽しく仕事をしていましたね。

 

——飲食関係とはかけ離れた業界にいたんですね。どうして飲食関係の仕事をすることに?

久保田さん:会社のオーナーがある日「久保田くんはピザ好きか?」って聞いてきたんです。僕は食べることが好きだったので「好きです」って返事をしたら、会社で新しくやることになったフランチャイズピザ事業の責任者になって(笑)

 

——でもフランチャイズだと、新潟の食材を使う機会ってあまりないですよね。新潟の食と向き合うきっかけのようなものはあったんですか?

久保田さん:信濃川のやすらぎ堤で「ミズベリング」っていう、アウトドアラウンジのイベントがあって、社会実験としてスノーピークさんがテント出店していたんです。そこで食べた野菜が本当に美味しくって、感動したんですよ。バーベキューで焼いただけなのにこんなに美味しいものなのかって。それ以来、個人的に農家を訪ねていろいろ教わったり、レストランバスの手伝いをしたりと、新潟の食に関わるようになっていきました。

 

 

——「TABIBAR & CAFE」にはオープンから関わっているんですか?

久保田さん:その自動車部品の会社で勤めた後、レストランバスの会社に入社したんですけど、1年もしないうちにそこが廃業することになってしまったんです。そのときに「TABIBAR & CAFE」を始めようとしていた方から誘っていただいたんです。他の会社からもお声掛けいただいていてちょっと迷ったんですけど、新潟の素晴らしい食文化を伝える仕事がしたかったので「TABIBAR & CAFE」で「おいしいナビゲーター」として働かせていただくことになったんです。

 

——お店の運営は最初からうまくいきましたか?

久保田さん:まずクラウドファンディングで開店資金を集めたんです。そうしたら2日間で目標金額だった100万円を達成したんですよ。新潟の食に対しての関心の高さがわかって嬉しかったですね。でも、オープン当初は何の店かなかなかわかってもらえなくて、認知していただくことの苦労はありました。店頭でマイクを使った呼び込みをして、怖がって逃げられたりもしましたね(笑)。とことん旅行者の気持ちになって考えようということで、スーツケースを預かったり、道案内をしたりといったサービスもしました。その甲斐あって少しずつ認知してもらえるようになったんです。

 

YouTubeや食育ボランティアを通じて、新潟の食の魅力を発信。

——今後はどんなふうに活動していきたいと思いますか?

久保田さん:最初は、「10年以内に食を求めて世界中から人が集まる新潟にしよう」という計画だったんです。でも新型コロナウイルスのおかげで難しくなりましたよね。でもその代わりオンラインが盛んになってきて、発信はしやすくなったように思います。だから今後はオンラインを使った紹介もしていきたいと思って、毎週木曜の20時から「くぼケンのカオス酒場」っていうYouTubeチャンネルを配信しています。よかったら見てください。あと子どもに食の大切さや新潟の魅力を知ってほしくて、小学校から大学まで、食育授業のボランティアもやっています。

 

——おお、まさしく食の伝道師ですね。

久保田さん:一番の願いは新型コロナが早く終息して、新潟の街に県外の方々がまた遊びに来てくれることです。そして新潟の美味しいものを思う存分楽しんでほしいですね。

 

 

新潟の魅力を「食」の面から伝え、生産者や飲食店と人をつないでいる「おいしいナビゲーター」の久保田さん。取材中も、お店に入ってくるお客さんに「お酒好きでしょ? そういう顔してるもん」「お客さんはどこから来たの?」と、とびきりの笑顔で声をかけていました。県外の人も、地元の人も、新潟の美味しいものに興味があったらぜひ「TABIBAR & CAFE」を訪れてみてください。

 

 

TABIBAR & CAFE

新潟県新潟市中央区花園1-1-1 新潟駅内 3F CoCoLo西N+

025-383-8966

12:00-22:00

 

 

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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