今年の6月、三条市に「THE Ugly Duckling(アグリーダックリング)」というちょっと変わったカップケーキのお店が登場しました。ポップでカラフルなケーキはどれもかわいくてユニークなものばかり。今日は、デザインアーティストとしても活躍しているオーナーの小皆美佳さんに、ユニークなカップケーキについてお話を聞いてきました。
THE Ugly Duckling
小皆 美佳 Mika Komina
1988年三条市(旧下田村)生まれ。東京のファッションデザイン専門学校を中退後、しばらく東京でアルバイトをし、19歳のとき三条市に戻ってスイミングスクールのインストラクターを始める。2012年にアートシューズをメインにしたショップ兼アトリエ「PARTITA(パルティータ)」をオープン。店舗や住宅のデザイン、ウエディングのアートディレクションなどもおこない、2020年6月に三条市で「THE Ugly Duckling」をスタート。お酒や地元のラーメンを愛し、「焼酎は宝が一番」と熱く語る。
——とってもかわいいお店ですね。こんな引っ込んだ場所に、こんなかわいいお店があるなんてびっくりしました。
小皆さん:もともと隣の家の大家さんがパン屋さんをやっていた場所なんです。私は店舗デザインもやっていて、改装工事を請け負ったお店が、工事期間中にここを仮店舗として借りていたんです。ひと目見てピンときたので、この場所でお店をやろうと決めました。
——え、小皆さんって店舗デザインまでやってるんですか? カップケーキ屋さんだけじゃなく?
小皆さん:いろんなことをやってるんですよ(笑)。三条市内に「PARTITA」っていうショップ兼アトリエを構えて、アートシューズのデザインや販売、店舗や空間のデザイン、ウエディングのアートディレクションなんかもやってます。
——デザイナーさんなんですね。昔からデザインをやっていたんですか?
小皆さん:東京のファッションデザイン専門学校に行っていたんですけど、だんだんアルバイトの方が楽しくなってきちゃって、中退しちゃったんですよ。それでしばらくバイトを続けてから、子どもができたのを機に地元の三条市に戻ることにしたんです。新潟で2人目の子どもが生まれたんですが、なんやかんやあってシングルマザーだったので、子ども2人を抱えて会社勤めするのは難しかったんですね。そこで自分で作った子ども服を「三条マルシェ」とかのイベントで売るようになったんです。
——さらっとお話ししてますけど、当時のそれって結構大変な状況ですよね。子ども服は売れたんですか?
小皆さん:そのときバレエシューズに絵を描いて売ってみたら、すっごくウケてオーダーが殺到したんです。そこで小さい小屋を借りて、妹と一緒にアートシューズをメインにしたお店を始めてみたんです。珍しかったのかSNSで話題になって、いろんなメディアでも取り上げられたので、お客様が殺到したんです。それからはアートシューズのデザインを続けて、それ以外のデザインのオーダーも来るようになったんです。東京のラルフローレンショップで使う什器の特殊塗装なんかをやらせていただいたこともあるんですよ。
——とってもお忙しそうですけど「THE Ugly Duckling」を始めたのはどうしてなんですか?
小皆さん:妹の友達に調理師の子がいたんです。職場の人間関係に疲れて「PARTITA」で働きたいって相談されたんですけど、せっかく調理師の経験があるんだから、それを生かして一緒に新しいことをやろうってことになったんですよ。最初は私の好きな豚汁やラーメンのお店も考えたんですが、カップケーキなら上にいろんなものを乗せて表現することができるって思ったんです。
——最初にも言いましたけど、とってもかわいいお店ですよね。
小皆さん:一番意識したのは、お客様に喜んでもらうのはもちろん、驚いてもらいたいっていうことです。お店に来てくれたお客様から「何ここ!?」っていう声が聞きたかったんですよ。最近、私のデザインはわかりやすい言葉でいうと「カッコカワイイ」を目指してるんです。でも「THE Ugly Duckling」はカップケーキのお店だから女子率が高いだろうと思ったので、女子に寄せて「カワイイ」を目指しました。小さなお店の中に「カワイイ」をぎゅっと詰め込んだ感じですね。
——たしかにちょっと非日常的な空間ですよね。店名の「THE Ugly Duckling」にはどんな意味が込められてるんですか?
小皆さん:「THE Ugly Duckling」っていうのは「みにくいアヒルの子」の原題なんです。生まれたときは不恰好でのけ者にされていたアヒルが、成長してみたら実は美しい白鳥だったっていうお話です。うちの店にはパティシエがいるわけでもないけど、美味しくて楽しいカップケーキを作る素敵なお店になりたいっていう、目標でもあるんです。「最初はきったねかったけど、じつは白鳥だったぞ。ほら見ろや」みたいな(笑)
——カップケーキもお店に負けず個性的ですよね。
小皆さん:他にあるようなものは作りたくなかったので、誰もやってないようなカップケーキを作ろうと思ったんです。それから、赤ちゃんからお年寄りまですべての人たちに「何これー?」とか「かわいいー!」とか「すごーい!」とか言ってほしいんです。欲張りなんですね(笑)
——たしかにインパクトがあって楽しいカップケーキばかりですよね。
小皆さん:ありがとうございます。パティシエの作るカップケーキではないのでデザインを重視してるんですが、お客様からは「かわいいだけじゃなくて美味しい」って言ってもらえます。商品名も攻めていて、お客様が注文するときにちょっと恥ずかしくなるようなネーミングを心がけてます(笑)。たとえばゴルフをモチーフにした「ishikawa ryo(イシカワリョウ)」とか、有名ポップアーティストをビーバーにした「Justin Bieber(ジャスティンビーバー)」とか。
——たしかに攻めてますね(笑)。そういうカップケーキってどんなふうにして生み出されるんですか?
小皆さん:スタッフと相談しながら私がデザインします。それを元にクリームや食材、味を決めていくんです。完成するまでにはいろんなレシピを試しますね。お客様を飽きさせたくないので、1〜2週間でカップケーキのラインナップを替えてるんです。
——スタッフの方々の意見もカップケーキに取り入れているんですね。
小皆さん:はい。うちの店ではみんながどの仕事でも対応できるように、仕事を覚えてもらってるんです。お菓子作りも接客もしてもらってます。表に出ることでモチベーションも上がると思うんですよ。今まで子育てをしてきて、家でくすぶっていたお母さんも、ここでは満たされたように楽しく働いてくれてます。本当に「人」って大事だと思いますね。接客の対応をしたスタッフの感じが良ければ、買ってくれたお客様だって嬉しいですからね。極端な例えになるけれど、お菓子を売るだけじゃなくて「人」も売ってるんだと思うんです。
——今後はどんなふうにお店をやっていきたいですか?
小皆さん:今は別々に営業している「PARTITA」や「THE Ugly Duckling」をまとめて、一つのお店にしたいなって思ってるんです。一つの場所でいろんな要素が満たされるような場所にしたいんですよね。その場所で子どもたちのためのアートスクールなんかも常設してみたいですね。田舎だからハイカラな仕事なんてできないって思ってる人も多いんだけど「好きなことをがんばってれば、メシ食っていけるんだて」っていうのを子どもたちに見せたいんですよ。あとは飲み屋を経営してチーママになりたい(笑)
——なぜかママじゃなくてチーママなんですね(笑)
ときどき三条弁を交えながら、ざっくばらんにお話してくれた小皆さん。「THE Ugly Duckling」のカップケーキみたいにとっても面白かわいい方でした。ハロウィンを前にして、今月はますますお店の本領が発揮されそうですね。みなさんのお宅にハロウィンのお化けが現れたら、「THE Ugly Duckling」のカップケーキを渡してみてはいかがでしょうか? イタズラされずに済みそうですね。
THE Ugly Duckling
〒955-0851 新潟県三条市西四日町1-17-18
080-4573-0908
11:00-18:00
木曜休