身につける装飾品の中でも、腕時計は人柄や個性が出るアイテムのひとつなのではないでしょうか。自分だけにしっくりくる腕時計を選ぶことができる専門店が、昨年の11月にオープンしました。「TIME BEATS」という名前のこのお店は県内では珍しいユーズドとヴィンテージの腕時計の専門店なんです。このお店のオーナーである佐藤さんにお店をはじめたきっかけや腕時計の魅力について、いろいろお聞きしてきました。
TIME BEATS
佐藤 俊輔 Syunsuke Sato
1975年魚沼市生まれ。20年間新潟をはじめ、全国に展開している「THREEC」に勤務し、販売業務だけではなく、店舗の立ち上げに携わる。2024年11月に「TIME BEATS」をオープンする。趣味は骨董収集で、店内には佐藤さんのお気に入りのコレクションが飾られている。
――佐藤さんは以前から腕時計の販売をされているんですよね。
佐藤さん:以前からファッションに携わる仕事をしていたんです。「THREEC」がファッションを切り口に腕時計を展開していたころ、『ブライトリング』というブランドの担当として、ぜひ一緒にとお誘いを受けて時計の販売に携わりはじめました。
――ファッションといっても、洋服と時計では販売するときのアプローチが結構変わってきそうですね。
佐藤さん:前職で時計を少し扱っていたので、縁はあったんです。でも専属で時計を販売するとなると、100年以上の歴史を持っているブランドが多いので、プロダクトの良し悪しを調べるだけでなく、そこからさらに掘り下げていくことが必要になったので最初は大変でしたね。
――ブランドのもつコンセプトやそれにまつわる背景の知識がより必要になっていくんですね。
佐藤さん:知れば知るほど、プロダクトの生まれた経緯とか形の持つ意味にすごく興味が出てきてのめり込んでいくようになっていきましたね。
――時計に対して興味を持っているからこそ、知る楽しさを感じたんですね。
佐藤さん:「THREEC」に入ってから、より一層時計の魅力や奥深さが見えるようになりましたね。たった4センチくらいの時計が心に占める面積はとても大きいと思うんです。そこに魅力を感じていったんですよね。
――以前から佐藤さんはお店を持ちたいという思いがあったのでしょうか。
佐藤さん:あまり強い願望はなかったですね。でも「THREEC」で働いている間、ユーズドやヴィンテージの時計を扱うお店があまりなかったんです。一方で、リユースショップはたくさんあると思うんですけど、そこにはただ時計が並んでいるだけで、一つひとつの良し悪しを説明してくれるわけではないと思うんです。
――新品の販売店のように、ユーズドの時計を扱っているお店は確かに無いですね。
佐藤さん:せっかく自分が20年間時計に携わっていたので、それを違うかたちで生かしていくには、ユーズドやヴィンテージを専門的に扱うお店がなきゃダメかなと思ったんです。新潟市は政令指定都市だし、地域的にも必要かなと思い、お店を出すことにしました。
──お店にはどんな時計が置いてあるのでしょうか。
佐藤さん:ブランドや年代に偏らずに、国産から海外ブランドまで、メンズもレディースも問わず幅広く取り扱っています。
――聞いたこともないブランドの名前もありますね。
佐藤さん:有名なブランドはもちろん置いてあるんですけど、知る人ぞ知る的なブランドも置いてあります。ブランドも含め、県内では扱っていないような面白い時計も扱って、ある種味わいのようなものを出すようにしています。
――時計が好きな方でも新しい発見があるような品揃えなんですね。
佐藤さん:来てくださるお客様に関して、嬉しい誤算がありました。お客様のほとんどが、今まで東京でユーズドやヴィンテージの時計を探されていた方だったんです。現行の製品じゃない時計にも需要があると感じられて、とても嬉しかったですね。
――新潟にもユーズドやヴィンテージの時計の需要があったんですね。
佐藤さん:今はネットでも時計を買えてしまう時代ですけど、実際目で見て手に取らないと自分に合うかはわからないじゃないですか。実店舗を持つことでそういったニーズにも応えられますし、ユーズドやヴィンテージに対してのハードルが下がって、よりカジュアルなものだと感じてもらうきっかけになればいいなと思います。
――時計だけではなく、ベルトも販売されていると聞きました。
佐藤さん:どんな時計にも対応できるように幅広いサイズを扱っています。ベルトを変えるだけでも雰囲気が変わるので、髪型を変えるように楽しんでもらえると嬉しいですね。
――改めて、「TIME BEATS」のコンセプトを教えて下さい。
佐藤さん:「TIME BEATS」のロゴや店名には、音楽の要素が入っているんです。今扱っている時計は同じものはひとつもなくて、人から人へ、時代をまたいで集まってきたものがお店に並んでいます。音楽も一曲一曲に個性があって、時代を超えて楽しまれるものっていう部分がとても似ていると思って、「BEATS」という言葉を店名に入れたり、ロゴに音符を入れたりしました。
――音楽と時計に、意外な共通点があったんですね。
佐藤さん:機械式時計はゼンマイバネが動いて時間を刻んでいるんです。その一往復の動きを「ビート」と呼んでいることも名前の由来のひとつなんです。「ビート」を刻んだ時計が集まるから複数形で「BEATS」にしています。それぞれの時計が持つ個性を大事にするお店にしたいという思いもありますね。
──素敵な思いです。佐藤さんが大切にしていることはどんなことでしょうか。
佐藤さん:時計を実際に手に取っていただいて、時計の持つ背景や特徴を感じてもらいながら選んでもらうことですね。ここに置いてある時計はすべて試着できるんですよ。
――全部ですか、なんだか緊張しちゃいますね。
佐藤さん:高価なものだから遠慮しちゃうか人もいるかもしれません。大きな買い物だからこそ、ぜひ試着してもらって写真では分からない微妙な違いや実際の感覚を体験して欲しいですね。
――なるほど。試着できるのはこのお店ならではですね。
佐藤さん:お洋服を選ぶみたいに時計もカジュアルに選んでもらえたらと思います。それでもユーズドやヴィンテージの時計は一点物なので、自分にしっくりくる時計との一期一会を楽しんでもらえると嬉しいです。
――佐藤さんにとって時計とはどんな存在なのでしょうか。
佐藤さん:身につけるものの中で、人生でいちばん長く使えるものですね。24時間365日という時間の中で、時計はどんなシチュエーションでもつけられる存在だと思うんです。
――最後に、今後の目標を教えて下さい。
佐藤さん:県内では唯一のユーズドとヴィンテージを専門に扱うお店なので、品揃えも含めて「新潟にもこういうかっこいいお店あるよ」って言ってもらえるようにしたいですね。
TIME BEATS
新潟市中央区美咲町1-7-55 ソフィア美咲1階F1号
025-364-1107