JR新潟駅前の裏路地にあるピザ屋さん「ベントエマーレ新潟」。こちらは「ミシュランガイド新潟2020」に掲載されたお店ですが、肩肘張るような高級店というわけではなく、気軽にワイワイとピザが楽しめるカジュアルなお店です。今回は店長の牧野さんから、「ピザを日常食として楽しんでもらいたい」という熱い思いを聞いてきました。
ベントエマーレ新潟
牧野 貴仁 Takahiro Makino
1981年東京都生まれ。大学卒業後、ビストロやピッツェリアでの修行を経て、2016年に「ベントエマーレ新潟」をオープン。「ミシュランガイド新潟2020」ではミシュランプレートを獲得。小麦アレルギーだけどピザ職人。マルゲリータが好き。
――牧野さんは、いつ頃からピザ職人を目指していたんですか?
牧野さん:30歳くらいのときに「ピザが好きだから、ピザ屋をやりたいな」と思ったんですよ。それで、奥さんと都内のピザ屋さんの食べ歩きをしたがはじまりですね。
――意外と遅くからピザ職人を目指したんですね。
牧野さん:ですね。それまではフレンチを学んだり、ビストロで働いたりしていたから。……で、その食べ歩きをしているときに、うちの本店「ベントエマーレ」に行ったんです。今までいろんなピザを食べてきたけど、どこのお店よりもぶっちぎりで美味しくて。もう、ここで修業するしかないって思ったんです。
――そんなに美味しかったんですか。食べてみたいな……。それで本店で修業はできたんですか?
牧野さん:はい。募集は出ていなかったんですけど、電話でお願いしたらOKが出て修行することができました。でもいろいろあって辞めてしまって、他のピザ屋さんで働いていた時期もありました。
――あ、え……、辞めてしまったんですね。
牧野さん:そうなんです。でもその後、本店のボスから電話があって、「新潟に店を出すから戻ってこないか?」って言ってくれて。僕がいずれは奥さんの地元である新潟で独立するつもりだったのを店長は知っていたから、きっと、自分のために出店してくれたんだと思います。自分で言うのもあれですけど、ボスにはかなり可愛がってもらっていましたね(笑)
――おお、わざわざ新潟にお店を出してくれるなんて、素晴らしいボスですね。それって、目をかけてもらっただけでなく、牧野さんのピザ職人としての技術もあったからでは?
牧野さん:それはあるかもしれませんね(笑)。僕が修行していた頃は、お客さんに提供するピザはボスしか焼けないルールだったんです。でも、認められてボス以外で提供したスタッフの第一号が自分なんですよ。今では若い子でも提供するチャンスはあるらしいけど、昔はかなり厳しかったですね。
――やっぱり牧野さん、すごいじゃないですか。ちなみに、「ベントエマーレ新潟」と本店の「ベントエマーレ」って、コンセプトやメニュー内容は同じなんですか?
牧野さん:「ベントエマーレ新潟」は直営店舗だけど、基本的に自由なスタイルです。というのも、オープンするときにボスから「修行した上で、自分のフィルターを通して、自分が焼きたいピザを表現しろ」と言われていたから。それに「本店のイメージを壊してもいい」とも言われていました。だから根底は「ベントエマーレ」だけど、新潟の店は新潟オリジナルなんですよ。
――へー、直営店舗でもオリジナル要素が強いんですね。どんなお店作りをしようと考えましたか?
牧野さん:イタリアでは、シェアをしないで1人1枚のピザを食べます。でも、日本では逆にシェアをして食べるべきだと僕は考えているんです。だって、みんなでワイワイ食べて「それ美味しそうだね」「これ美味しいよ」とか、楽しく食べられたら素敵じゃないですか。だから「ベントエマーレ新潟」は、ちびっ子からお年寄りまで、誰が食べても笑顔になってもらえるピザと空間を作るように頑張っています。
――イタリア文化を伝えるよりも、まずはピザを楽しんでもらいたいということですね。
牧野さん:そうなんです。それに僕には夢があって、「お腹空いたね、ラーメンでも食べに行く?」みたいに、もっと気軽にピザを食べに行く文化を作っていきたいんです。だからこそ、いろんな人たちにピザの美味しさをまずは知ってもらうことが先決なんですよ。
――ラーメンのポジションを狙っているんですね。若い子が「今日のランチはピザにしよう」なんて言ってくれたら嬉しいですね。
牧野さん:それは嬉しいですね。イタリアだと、有名なお店には列ができています。そうなるとなかなかお店に入れないから、テイクアウトの需要が高くて、ピザ箱を持ったまま外で食べている光景なんて日常です。「ベントエマーレ新潟」は路地裏にあるんですけど、そんな場所で、近くのどこかに座りながらピザを食べている子がいたら……もう感動ですね(笑)
――そうか、ピザはイタリアではストリートフードなんですね。カッコイイな。「ベントエマーレ新潟」では、ピザ以外のメニューもあるんですか?
牧野さん:オープンしたときは、来店のキッカケ作りとして前菜やパスタ、それに女子会コースなども展開していました。でも、そうすると「ピザが充実しているイタリアレストラン」というイメージが定着してしまって……。最近、思い切って完全なるピザ専門店に切り替えてみたんです。他のメニューはちょっとだけ残っていますけどね。
――その決断も、やっぱりピザ文化の定着のためですか?
牧野さん:新潟は、どうしても外食でピザを食べに行く文化が弱いんです。だからこそ、「ピザ専門店にピザを食べに行く」という選択肢を持ってもらうことで、ピザの文化を根付かせたいと考えています。それに、これからピザ屋になりたいと考えている若者のためにも、ラーメンやハンバーガーなどと同ポジションにピザを持っていって、ピザ屋をやれる環境を整えていかないといけないんです。
ベントエマーレ新潟
新潟県新潟市中央区東大通2-3-5
025-385-6646