8月も中旬に差しかかり、いよいよ夏の暑さもピークを迎えます。暑ければ暑いほど、食べたくなるのがかき氷。今回ご紹介する「季節のくだもの 団吉氷店」は、旬の食材にこだわり季節感を大切にしているかき氷屋さん。蝉時雨の降り注ぐなか、「団吉氷店」の村宮さんに会いに行ってきました。
季節のくだもの 団吉氷店
村宮 菜々子 Nanako Muramiya
1988年新潟市南区生まれ。東京の大学を卒業後、都内の調味料メーカーやお菓子メーカーでマーケティング、商品開発を経験。その後お米と道具を扱うセレクトショップで旬な食材と関わる。現在はフリーランス。2022年に新潟市南区で「団吉氷店」をオープン。13年の登山歴があり、最も印象に残っているのは剣岳。
——村宮さんはかき氷屋さんをはじめる前はどんなお仕事をされていたんですか?
村宮さん:私はずっと食に関わる仕事をしたいと思っていたので、東京で調味料やお菓子のメーカーに勤めていました。そのうち、食は食でも四季を感じられる仕事をしたいと思いはじめて、お米と道具のセレクトショップで働くことになったんです。そこでは、旬の食材や日本の素晴らしい道具を取材して記事を作ったり、SNSで紹介したりしていました。生産者と一緒に商品の共同開発もしていましたね。
——じゃあ、その経験が「団吉氷店」さんにもつながっているんですね。でも、どうして四季を感じられる仕事をしたいと思うようになったんでしょう?
村宮さん:東京で仕事をしていたときは、あまりの忙しさで季節が見えなくなっていたんです。でも、ふと食事をしたときに「うまっ!」って感じる料理って、だいたい旬の食材が使われていることが多かったんですよね。だから、人が美味しいと感じるのは、旬があるからなんじゃないかって思ったんです。
——それで旬の食材に興味を持ったんですね。
村宮さん:はい。今は新潟と東京を往復しながら、フリーランスで食品のバイヤーやマーケティングの仕事をしています。
——そんな村宮さんが、南区でかき氷屋さんをはじめたのはどうしてなんですか?
村宮さん:私の祖父母はこの場所で70年間、酒屋を営んできたんですが、昨年の8月に引退することになったんです。でもせっかくのスペースがもったいないから、私と母は「ふたりで何かやりたいね」って話していたんですよ。昔から近所のお寺でお祭りがあると、祖父母の酒屋では店頭でかき氷を出していて、その思い出を大切にしたいという気持ちもあって。そこで母と一緒にかき氷屋さんをはじめることにしたんです。店名にも前の屋号の「団吉」を使いました。
——おじいさん、おばあさんが長く続けてきたお店を、村宮さんとお母さんがかたちを変えて引き継いだわけですね。
村宮さん:そうかもしれないですね。母は料理教室の講師やスイーツショップで勤務していた経験があるので、味づくりを担当してもらっています。あと酒販業の免許も祖父母の酒屋から引き継いだので、父がセレクトしたワインも販売しているんです。
——「団吉氷店」は、どんなかき氷屋さんなんですか?
村宮さん:地元はもちろん、全国の旬の果物を使ったかき氷の専門店です。
——おすすめのかき氷ってあるんですか?
村宮さん:そのときどきの旬にこだわりたいので、定番の商品はないんですよ。その季節に合わせて一番旬で美味しい果物を使っているので、2週間〜1ヶ月半で商品が替わります。夏は特に果物の多い季節なので、やりたいものがたくさんあって商品のサイクルも早いんです(笑)
——たしかに夏は果物が多い季節ですね。ちなみに今だと、どんなかき氷が食べられるんですか?
村宮さん:「メロンとライム」ですね。メロンの爽やかさをライムのピールで引き立てたかき氷です。アクセントとしてエクストラバージンオリーブオイルも使っています。最後は山椒ブランマンジェをお楽しみいただけるんです。
——ただシロップをかけたかき氷ではないんですね。そこまでいくと料理みたい(笑)
村宮さん:食材の組合せによって、味を引き立てることが楽しいんです。あと、どんな食材が使われているのかを知っていただいた方が楽しめると思うので、お出しするかき氷には使っている食材のお品書きをつけているんです。
——まるで割烹の献立みたいですね(笑)。たしかにどんな食材が使われているのか、それを知った上で食べると楽しみも増しますね。夏だけではなく、他の季節のかき氷も気になってきます(笑)
村宮さん:春はお向かいの農家さんが作っている越後姫に、トンカ豆を添えた「越後姫みるく」をやりましたし、初夏には「梅と山椒」もやりました。秋になったら、巨峰、シャインマスカット、いもジェンヌ、栗、いちじく、梨をやってみたいです。なかでも私の大好きないちじくは絶対にやりたいと思っています(笑)
——食材の名前だけでも美味しそうですね。考えてみると、南区ってそうした食材が豊富にある地域じゃないですか。
村宮さん:そうなんですよ。果物農家さんが多いので、相談に乗ってもらいやすい環境なんですよね。食材に使わせていただいたときは、お品書きのなかに農家さんの名前を入れるようにしています。それを見て、お客様が農家さんにも興味を持ってくださったら嬉しいですね。新潟は東京に比べて消費者と農家の距離が近いので、それぞれに推しの農家さんがいてもいいんじゃないかって思っています。
——かき氷以外にも食べられるものってあるんでしょうか?
村宮さん:旬の食材にこだわったちまきも提供しています。これも酒屋時代のお祭りのときに作っていたもので、地元では夏の代名詞になっていた食べものなので、それを引き継いだんです。春はたけのこ、初夏は新しょうが、今はとうもろこしを使ったちまきをご用意しています。あとは食べものだけではなく、雑貨も少し扱っているんです。
——へ〜、ちまきとはまた珍しいですね。ところで食べもの以外の雑貨って、どんなものを扱っているんですか?
村宮さん:季節を感じさせるような雑貨を揃えています。今なら秋葉区の秋葉硝子さんで作っていただいているガラス製の風鈴やグラスですね。
——やはり季節にこだわった商品なんですね。
村宮さん:自然から離れて忙しく生活していると、季節が見えなくなることもあるんですよね。以前、実家に帰って、時間帯によって鳴く鳥が違うことに気づいたんです。そのときに「ああ、私はこの季節のこの時間に生きているんだ」って、自分を取り戻せたような気がしたんですよね。お客様にもそんなふうに、この懐かしい空間で旬の果物を味わいながら、自分をリセットしたり、ひと呼吸置いていただけたらと思うんです。
季節のくだもの 団吉氷店
新潟市南区犬帰新田754
025-280-3034
11:00-18:00(L.O.17:30)
火水曜休