蒲原まつりで有名な「蒲原神社」のいろいろを、若き神主に聞く。
その他
2023.10.19
新潟に夏を告げる行事として、市民から長く親しまれてきた「蒲原まつり」。約1kmに渡って400軒もの露天が立ち並び、柏崎の「えんま市」、村上の「村上大祭」と並んで「新潟三大高市」のひとつに数えられています。新型コロナウイルスの影響で2020年から3年間は中止されていましたが、今年から再開されることになりました。そんな「蒲原まつり」はよく知っていても、「蒲原神社」についてはあまり知らないという人、多いのではないでしょうか。今回は「蒲原神社」の神主・金子さんに、神社への思いや新しい挑戦についてお話を聞いてきました。


蒲原神社
金子 隆仁 Takahito Kaneko
1997年新潟市中央区生まれ。国学院大学神道文学部で学び、新潟に帰って2022年に「蒲原神社」の専業神主となる。映画、ドラマ、アニメを観ることが趣味で、サッカーはやるのも見るのも好き。
「蒲原神社」の可能性に賭けた若き神主。
——金子さんは代々「蒲原神社」の神主を務めてきたご血筋にあたるんですよね。
金子さん:はい、現在は祖父が宮司(ぐうじ)、父が禰宜(ねぎ)を務めています。
——じゃあ昔から「蒲原神社」を継ごうと思っていたんですね。
金子さん:国学院大学で神道文学を学びましたが、サッカー選手や映画俳優への憧れもありました。大学を卒業してから1年半は、俳優としてCMやドラマに出演していたこともあったんですよ。
——それはまた意外な経歴をお持ちなんですね。そうした夢がありながら、「蒲原神社」の専業神主になろうと思ったのはどうしてなんですか?
金子さん:「蒲原神社」には格式や魅力、何より大きな可能性があるのに、兼業でやってきたためにそれが発揮できないことがもったいなく思えましたし、歯痒くもあったんですよね。それから、今までは地元の人たちに支えられながら神社を続けてくることができましたけど、やはり自分たちが中心になって守っていくべきだと思ったんです。
——そもそも「蒲原神社」って、どんな神社なんでしょうか?
金子さん:いちばん古くは1,200年前の記録が残っているので、それ以前から存在していたと思われます。日本海を望む「金鉢山(かなばちやま)」にあった頃は「青海社(おうみのやしろ)」と呼ばれていて、その後は五つの神様をお祭りしていることから「五社(ごしゃ)神社」と呼ばれるようになり、1981年に「蒲原神社」に改称したんです。

——え、「蒲原神社」になったのって、わりと最近なんですね。
金子さん:古くから「蒲原様」と呼ばれて、親しまれてはいたんですよ。あと兼務している神社が46社、氏子の数は4万人で、実は日本でいちばん多いんです。それだけの数を兼業だけでこなすのは大変難しいと思ったのも、専業で神社の仕事に就くことを決意した理由のひとつですね。
——でも専業で神社の仕事をすることに迷いはありませんでしたか?
金子さん:それはありました(笑)。俳優業も続けたかったし、アルバイトしていた飲食店からも好待遇で、正社員に迎えてもらえる話もありましたから……。でも、誰かが専業で神社を守っていかなければならないという使命感の方が強かったんです。

地元の農業や人生に寄り添う「蒲原神社」。
——神主さんってどんな仕事をしているのか、ちょっと教えてください。
金子さん:境内の管理や御朱印、授与品の頒布、ご祈祷や出張祭、46社ある兼務神社の管理、それから各種祭典があります。神社は人とのつながりを大切にしますので、お知らせやご寄進にしても、メールや郵送、振込というわけにはいかないんですよ。ご自宅や会社にお邪魔して、顔を合わせながら直接お伝えしたり、お預かりしているんです。
——「祭典」というと「蒲原祭り」みたいな?
金子さん:そうですね。他にも春分の日には、五穀豊穣をお祈りする「春季祭」、10月第二日曜には農作物の収穫を感謝する「秋季祭」、11月23日には新穀を神様にお供えして、来年の豊作をお祈りする「新嘗祭(にいなめさい)」があります。その他、初詣、初宮詣り、七五三詣、結婚式、地鎮祭などの年中行事や式典もあるんですよ。

——なかなか盛りだくさん(笑)。農業にまつわる祭典が多いんですね。
金子さん:「土の神」である埴山姫之命(はにやまひめのみこと)をはじめ、農業に関わりの深い五行の神様をお祭りしていますからね。「蒲原大祭」では、稲作の豊凶を占う「御託宣(おたくせん)」が行われているんです。これは鎌倉時代に神主の畠山六郎重宗(はたけやろくろうしげむね)が行なって以来、800年以上も続いている神事なんですよ。
——とても長く続いているんですね。
金子さん:その畠山六郎重宗夫妻の姿を彫刻した木像が、2009年に新潟県有形文化財に指定されたんです。実物は御神体として奥の院で大切に安置されているんですけど、3Dプリンターで忠実に再現したレプリカをご拝観いただけます。

——農業にまつわるものの他には、七五三や結婚式のように、人生に寄り添う祭典ばかりですね。
金子さん:祭事というのは神様ではなく皆さんが主役なんです。僕たちは皆さんのお祈りを神様に代弁しているだけなんです。
——なるほど。ところで、神様や神社ってどういう存在なんでしょうね。
金子さん:「神道(しんとう)」というように「教え」じゃなくて「道」なんですよね。だから導いてくれる教祖がいるわけでも、教典があるわけでもない。皆さんの道しるべとか心の拠り所が神様であり、神社なんだと思います。

新しいことに挑戦していく、これからの「蒲原神社」。
——神主さんになってみて、いかがでしたか?
金子さん:世のなかの人々の神社離れもあって「父の代は安心だけど僕の代になったら心配」という声を聞いていたので不安だったんです。ところが協力してくださる方々と多くのご縁がつながり、いろいろと助けていただけるので大変ありがたいですね。
——それは心強いですね。反対に、やってみて難しいと思うことはあります?
金子さん:長い間のしきたりもあるので、新しいことをはじめようとしても理解を得られず、なかなか実現できないジレンマもありますね。
——「新しい」というと、どんなことなんでしょうか?
金子さん:「蒲原神社」は農作の神様ですので、JAとコラボした農機具のお祓いや、ペット同伴の初詣「わんわん初詣」、社殿を使ったプロジェクションマッピング、神話をモチーフにしたアニメ作品の制作を考えています。

——想像していた以上に「新しい」ことでした(笑)
金子さん:多くの方に神社へ足を運んでいただいて、もっと身近に感じていただきたいんです。その上で「蒲原神社」についても知っていただけたら嬉しいですね。事業者や若い人たちと一緒に、地元や新潟を盛り上げていきたいと思っています。
——そのために、今後取り組んでいきたい課題があったら教えてください。
金子さん:発信に力を入れていくことが今後の課題ですね。夏には境内にたくさんの風車を飾って涼を演出しているんですけど、世間には知られていないんですよね(笑)。「蒲原神社」は由緒正しい神社ですので、何事にも自信を持って取り組んでいきたいと思っています。

蒲原神社
新潟市中央区長嶺町3-18
025-244-4541
11:30-17:00/11:30-17:00
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