田上にオープンした「おにぎり屋 かみむすび」の元気になるおにぎり。
食べる
2024.01.01
読者のみなさま、あけましておめでとうございます! 本年も「Things」をよろしくお願いいたします。今回は元旦にぴったりの、おめでたい名前のお店をご紹介します。その名も「おにぎり屋 かみむすび」。燕市吉田の商業施設「ネクストジェネレーション」にあるおにぎり屋さんで、昨年12月、田上町に本店をオープンしたんだとか。オーナーの有本さんに、おにぎり屋さんをはじめたきっかけや、お米や具材へのこだわりについて聞いてきました。


おにぎり屋 かみむすび
有本 大樹 Hiroki Arimoto
1976年加茂市生まれ。「株式会社IRC」代表取締役。ラフティングツアーの企画やドローン空撮、官公庁の装備開発、工場の運営など、幅広い事業に携わる。2023年6月、吉田の「ネクストジェネレーションタウン」内で「おにぎり屋 かみむすび」をはじめる。12月に田上町で本店をオープン。
おにぎりの究極を求めて。
――まず、有本さんが「かみむすび」をはじめられた経緯を教えてください。
有本さん:もともとバーガーショップをやろうと思っていたんです。アメリカ雑貨の収集が趣味っていうのもあって、あちこちでハンバーガーを食べて研究もしたんです。それでマルシェとかに出店していたんですけど、お客さんに「店舗はどちらですか」とよく言われて。いろいろな方からも話を聞いて、やっぱり店舗あってのイベント出店というかたちがいいのかなと思いました。店舗があればイベント限定で何か出すこともできるだろうし。
――それで吉田に店舗を構えることになったんですね。
有本さん:「ネクストジェネレーションタウン」を運営している会社の社長さんと異業種会で知り合って、仲良くさせてもらっていたんです。でもすでに他にハンバーガー屋さんが入っていたので、次にやると決めていたおにぎり屋さんをはじめることにしました。

――ハンバーガーからおにぎりって、かなりの方向転換な気もしますが……。どうしておにぎりにしようと?
有本さん:「日本人ならやっぱり米」というところと、やっぱり生まれてから今の今まで毎日食べてきているものじゃないですか。「その究極を求めたらどうなるんだろう」という考えが頭にありました。肉とか魚とかは、究極を求めたものがすでにかたちになっているわけですよ。だけど、おにぎりを究極に求めていったらどうなるんだろうかって思ったら面白くて。
――確かに。おにぎりって身近なものすぎて、その究極って考えたことがなかったです。
有本さん:あと僕が幼少期の頃、学校から帰ってくるとほぼ毎日、3時のおやつに味噌むすびか塩むすびが用意されていたんです。腰の曲がったおばあちゃんが握ったでっかいおにぎりを、口の周りを味噌だらけにして食べていたんですよ。
――素敵な思い出ですね。
有本さん:やっぱりその味が忘れられなくて。おばあちゃんはもう亡くなってしまったんですけど、「あのおにぎりを再現したいな」っていう思いがありました。そういうこだわりがあるので、塩むすびと味噌むすびはオーダーを受けてから作ります。もちろん他のメニューもオーダーを受けてからでも作るんですけども、その2種類を店頭に並べていないのには、そういう理由があるんです。

試行錯誤して再現した、思い出の「味噌むすび」。
――「味噌むすび」ってあまり聞きませんが、お米の中に味噌が入っているんですか?
有本さん:味噌が塗ってあるんですよ。それに生味噌を使っているので、味がダイレクトに来るわけです。甘い味噌、しょっぱい味噌、さまざまあると思うんですけど、僕が子供の頃から食べていたものは「これは甘い?しょっぱい?どっち? いや……うまい!」ってなるものだったんですよね。
――じゃあ、その理想の味噌を見つけるまで苦労されのでは?
有本さん:最初に試してみた味噌も美味しかったんですけど、やっぱり自分の中で「違うな」と思って。親父に聞いたら「確か味噌を作っていたな」と言って、作り味噌をやっているところというと加茂の「小池商店」という老舗の味噌屋さんだという話になりました。そこのお父さんに聞いたら「確かに有本さんのところに味噌を納めていた」と。
――思い出の味噌が見つかったんですね。
有本さん:作り味噌って4月に買って家の暗室に置いて、熟成させたものを12月に食べるんですよ。それを繰り返し使うんです。「じゃあそれをやろうか」と言ったんですけど、「大変だよ」って言われて(笑)。今は「小池商店」さんで作られたものを買わせてもらっていて、味噌おにぎりと味噌汁に使っています。やっぱりその味噌がおばあちゃんが使っていたものに近くて、舐めたときに「これだ!」というのがあったんですよね。

――他にもいろんなおにぎりがあるようですが、人気なのはどれですか?
有本さん:人気なのは梅ですね。友達のお兄ちゃんが八百屋さんをやっていて、彼が作る梅干しがうまいんです。吉田でオープンしたときからずっと使っています。
――やっぱりお米にもこだわりがあるんでしょうか。
有本さん:お米は地元加茂の七谷産を使っています。「清らか米」といわれていて、何がいいって生活排水の入らない田んぼで作っているんですよ。粟ヶ岳の浄水された水が山から下りてその田んぼに入ってくるんです。そのお米を生産者から直接仕入れています。

――お店は朝7時からオープンされているそうですね。朝ごはんを食べに来てもらえるようにですか?
有本さん:すぐそばに高校と大学があるので、学生さんとか、あとは通勤前の方が買うかなっていうところで朝早くからやっています。朝の時間に30分だけでもゆっくりして、お味噌汁とご飯を食べていっていただきたいですね。
――ちなみに「かみむすび」って店名にはどういう思いが込められているんでしょうか。
有本さん:僕と、このお店を任せている女将が仲良くしているヒーラーの方がいまして。「ふたりでおにぎり屋をやろうと思っているんだけど、いい名前はない?」と聞いたら、その方が付けてくれたんです。「産巣日(むすひ)」っていうのが米の神様の名前らしくて。「産巣日の神は全てを生み出す力」。食べるからスタートできるわけですし。ちなみに、おにぎりとおむすびの違いってわかりますか?
――言われてみると分からないです……。
有本さん:諸説あるらしいんですけど、江戸前寿司は「握り」ですよね。あれは女性ができない仕事なんですよ。だから男性が握ると「おにぎり」、女性が握ると「おむすび」っていわれていたんですって。うちはおにぎり屋なんですけど、握っているのはおむすびなんですね。

これまでの仕事とは真逆の飲食業。でもそこに面白みが詰まっている。
――有本さんはこれまで飲食のお仕事をされてこられたんですか?
有本さん:実は違うんです。今もラフティングの会社を運営していて、他にもドローンでの空撮もしているんです。
――えっ! そうだったんですね。
有本さん:あともうひとつ、「有本製作所」という工場も経営していて、官公庁の装備開発もしています。
――そっちのお仕事についてのお話も気になります(笑)。じゃあ飲食業をはじめてみてから、戸惑うことも多かったんじゃないですか?
有本さん:飲食は大変ですね。今までやってきたお仕事はどれも、依頼を受けてから仕事をするんですよ。けれども飲食はそうではないじゃないですか。逆に、用意しておいて待つっていう仕事なので、今までの商売とは逆なんですよ。でもそこにも面白みが詰まっているなと感じますね。

――今後「かみむすび」がどんなお店になっていったらいいなと思いますか?
有本さん:お客さんが「落ち着くわ」と言ってくれる場所にしたいですよね。そこに合わせてうちのサービスも変化していければなって思います。それからうちのショップカードにも書いている「元気になるおにぎり」。これを大事にしていきたいですね。

おにぎり屋 かみむすび 本店
南蒲原郡田上町吉田新田37-1
TEL:080-5880-0008
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