胎内のいちご農園「にじいろファーム」の理想と情熱。
ものづくり
2024.05.16
フルーツというのは食べてみてはじめて、味や食感、香りの当たり外れがわかりますよね。見た目や重さでわかる人もいるようですが、素人にはなかなか判別が難しいところです。胎内市で越後姫を作っているいちご農園「にじいろファーム」では、美味しいと思えるいちごだけを販売するこだわりを持って品質管理をしています。いちごの香りが漂う直売所を訪れ、代表の五十嵐さんから栽培や品質管理について話を聞いてきました。


にじいろファーム
五十嵐 功 Isao Ikarashi
1980年新発田市生まれ。米や肥料を運ぶトラックの運転手を経験後、2019年より胎内市で「にじいろファーム」を開業し、越後姫の生産や直売をはじめる。若い頃は車やバイクにお金をかけていたが、最近は釣りや山菜採りを楽しんでいる。
子どもの反応に衝撃を受け、いちご農園をはじめる。
——こう言ったら失礼ですけど……五十嵐さんっていちごのイメージとはかけ離れたキャラですよね。
五十嵐さん:よく「怖い」って言われるんですよ。直売所を覗いたお客様が、僕の顔を見てそっと帰って行ったこともありました(笑)

——確かにいかついけど、気さくな雰囲気もあって親しみやすいと思いますけどね(笑)。話題を変えて……五十嵐さんはずっと農業をやってきたんですか?
五十嵐さん:「にじいろファーム」をはじめる前はトラックに乗って、米や肥料を運んでいました。農家を回って米を集めるんだけど、山積みの米を何万袋も人力で積み降ろしするので、ひと仕事終わると二の腕の筋肉がパンパンになって、腰も壊しちゃいました。
——かなりハードな肉体労働だったんですね。トラック運転手を辞めることになったのはどうしてなんでしょう?
五十嵐さん:視力が落ちてきて夜の運転が怖くなったので、転職を考えるようになったんです。会社勤めは自分の性に向かないと思っていたので、どんな仕事に転職しようかと迷っていました。
——いちご農園をはじめたきっかけは何かあったんですか?
五十嵐さん:知り合いの農家からもらったいちごを2歳の子どもに食べさせたら、それ以来、子どもがスーパーで買ったいちごを食べなくなってしまったんです。その出来事に衝撃を受けて、自分も子どもを虜にするような本物のいちごを作りたいと思って、2019年から「にじいろファーム」をはじめました。

——でも、農園ってどんなふうにはじめるんでしょうか?
五十嵐さん:まずは農園を作るための土地を探しました。いろんな土地を当たってみたんですけど、未経験ということもあって断られ続けて、諦めかけていました。でもある日、釣りの帰りにこの道を通ったら、生い茂る草木のなかに建物の屋根が見えたんです。何があるのか確認したらこのプレハブが建っていて、ここが農作放棄地だったことがわかったんです。地主を何度も訪ねて、何とか土地を使わせてもらえることになりました。
——でも、かなり荒れ果てていたんじゃ……。
五十嵐さん:冬の間に半年かけて雪のなかで草刈りと整地をしました。直売所に使っている建物も窓が割れてなかは散らかっていたので、片付けてリフォームしたんです。内装業をやっていた親父や仲間に助けてもらったおかげで、何とか営業できるようになり本当に助かりました。
——2棟のビニールハウスはとても立派ですね。
五十嵐さん:ええ、家が建つほどお金がかかりましたね(笑)

こだわりを貫き、究極のいちごを目指したい。
——それにしても、いちごの栽培は誰に教わったんですか?
五十嵐さん:最初は師匠の元で修業して、自分の圃場ではじめてからは我流で試行錯誤していました。わからないことは先輩に教わっていたけど、栽培する環境が違うから同じようにはならないんです。同じ肥料を使って美味しいいちごができるんだったら、みんなが美味しいいちごを作れるはずですからね。だから毎年やり方を変えながら、自分に合ったいちごの作り方を模索しています。

——トライ&エラーを繰り返すしかないんですね。やはり失敗も多かったんでしょうか?
五十嵐さん:もちろんです。1年目から失敗ばかりで、自分の気に入らないいちごは投げてきました。
——もったいない〜。
五十嵐さん:でも、投げたいちごをカラスが食べにくるんです。そうすると、このあたりにたくさんいるネズミやでかいカエルが姿を消したんですよ。私はカエルが苦手だからありがたいですね(笑)
——今は理想的ないちごを作れるようになりました?
五十嵐さん:コツは掴んだんですけど、毎回同じように作れるわけではないので、なかなか難しいですね。今でも毎回味見をして、自分で決めている最低基準を下回っていると感じたいちごは売りません。最近は枝折れのいちごが増えてきたので、今季はそろそろ終わりにしようかと思っているところです。
——「枝折れ」ってなんですか?
五十嵐さん:実の重さで枝が折れてしまったいちごのことです。そうなると実に栄養がいかず、味気ないいちごになってしまうんです。枝折れいちごが増えてくると、自分の気持ちも折れて売りたくなくなるんですよ。

——いちごの品質に厳しいこだわりを持っているんですね。
五十嵐さん:まわりに何もないような、こんな場所まで足を運んでくださるお客様に対して、納得できないようないちごを売るのは申し訳ないじゃないですか。でも、お客様から「いちごがあるなら売ってよ」って怒られてからは、納得いかないいちごも値下げして売るようになったんです。
——なるほど。
五十嵐さん:でも買う前にお客様から味見をしてもらいます。それでも大丈夫だったら買っていただきます。それから、できるだけジャムやジュースに加工して召し上がっていただくようお願いしているんです(笑)

——今日もまだ10時半なのに「完売」の看板が出ていましたよね。
五十嵐さん:開店時間から30分後には完売していましたね。以前は8時半から待っているお客様もいたので、お待たせするのも申し訳なくて売っていたんです。そうしたら、開店時間の9時半にお客様が来た頃には完売してしまって、そのお客様から怒られてしまいました。
——いちごの生産数はこれ以上増やせないんですか?
五十嵐さん:これ以上は手が回らないし、管理も難しいので増やせないですね。うちのいちごをたくさんの人に食べてもらいたいから、いろいろなサービスをしているんですけど、うちの嫁からは「趣味でやってるんじゃなくて仕事なんだよ」って叱られています。でも5年間は赤字を覚悟していたし、お金と人というのは後からついてくるものだと思っているんですよ。逆にお金ばかり追いかけていると、人が離れていっちゃうと思うんです。
——確かにそうですね。でも、農園を経営していくためにはお金も必要でしょう。
五十嵐さん:常連のお客様には「うちが潰れそうになったら寄付をお願いします」なんて冗談を言っています(笑)。お客様や家族をはじめ、いろんな人に支えられながら続けていられると感謝していますし、その恩に応えるためにいつか究極のいちごを作りたいですね。
——「究極のいちご」って、どんないちごですか?
五十嵐さん:一度食べたら忘れられなくなって、おかわりしたくなるようないちごです。うちの子はいちごに対しての舌が肥えちゃって、スイーツに乗っているいちごを「美味しくない」とか言っちゃうので、外食するときはいつもヒヤヒヤしています(笑)

にじいろファーム
胎内市村松浜
090-4029-5790
9:30-完売まで
不定休
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