過去にご紹介した西蒲区の「新潟長谷川屋」さんに新店舗が登場しました。新潟駅から歩いて10分ほどの場所にある、角打ちのできるお店「長谷川屋 新潟店」です。社長の長谷川さんに再びお話を伺い、前回取材したときからの変化や新しいお店のオープンに至ったきっかけなどを聞いてきました。
長谷川屋 新潟店
長谷川 陽路 Hiro Hasegawa
1990年新潟生まれ。西蒲区に本店を構える「新潟長谷川屋」4代目。千葉県内の酒屋にて3年間修業した後、2016年に家業へ加わる。2024年1月に新潟駅から徒歩10分の場所に新店舗「長谷川屋 新潟店」をオープン。
――長谷川さんは2019年にもThingsに登場いただきましたね。その節はお世話になりました。
長谷川さん:記事が掲載になったのは、確か10月でしたね。あの数ヶ月後にワインの保管庫が完成したんですよ。ワインのラインナップが広がりましたし、酒店として厚みが出てきたと思います。
――「新潟長谷川屋」さんは、もともと日本酒を得意とされていたんですよね。
長谷川さん:30年間西蒲区で日本酒をメインに営業してきたんですけど、ここ10年でガラッと方針を変えました。日本酒がメインであることに変わりはありませんが、ワインやジン、ビール、ウイスキーの取り扱いを増やしたんです。魅力的なスタッフが加わってくれて、徐々にそうなっていったんですね。
――そうなるといらっしゃるお客さんにも変化があったのでは?
長谷川さん:若い方や遠方からお越しくださる方は増えましたかね。今年のはじめに、新潟駅近くに「長谷川屋 新潟店」がオープンしたので、今まで以上に県外の方にも利用していただきやすくなったと思います。
――これまでは西蒲区の本店のみで営業されていたんですもんね。
長谷川さん:コロナ禍となってECサイトでの販売もはじめたんですよ。それまでは電話やファックスでのご注文ばかりだったんですけどね。そういう面でも、「外への発信」っていうのは意識していたでしょうか。
――コロナ禍がネット販売をはじめるきっかけになったんですね。
長谷川さん:そうとらえてはいるんですけど、僕らはずっと「顔が見える商売」を続けてきたと思っているんです。やっぱり「作り手さんはこんな人で、こんなふうにお酒を造っているんですよ」って伝えたいですし、作り手さんにはどんな人が買い求めてくれたのかフィードバックしたいんですよね。「こういう場所で飲まれているんですよ」「こんな人が好きだと言って買って行きましたよ」って。それはEC販売ではなかなかできないことです。なるべくサイト上に詳しい情報を載せるようにはしているんですけどね。
――ワイン庫の新設にECサイト、いろいろと変化があったようですね。
長谷川さん:いちばん大きな変化は、「長谷川屋 新潟店」をはじめたことですね。
――店舗としては、本店に次ぐ2店舗目ですか?
長谷川さん:そうなります。ぼやっと「新店舗を構えたいな」とはずっと思っていました。西蒲区の本店は「知っているけど、行ける距離じゃない」と言われたこともありますし、新潟市中心部のお客さまも増えて配達量が多くなってきたんですよね。新潟駅に降り立って「よし、日本酒を飲もう」と楽しみにされている観光客の方もたくさんいると思うんです。今あるお店以外にも、日本酒を楽しめるお店が駅近にあってもいいよねって思いがありました。角打ち文化が新潟駅周辺にもっとあってもいいんじゃないかって。
――駅の近くだったら、バスや電車で来やすいからいいですよね。車だとアルコールは飲めないですもん。
長谷川さん:そうそう、そこは本店と新潟店の大きな違いですよね。僕、西蒲区が大好きなんですけど、アクセス面がいいとは言えません。本店は車じゃないと不便ですから。その点、「新潟店」は新潟駅から歩いて10分くらい。とても便利な場所にあります。
――角打ちができるということですが、日本酒以外もいただけるんですか?
長谷川さん:日本酒以外もたくさんありますよ。先ほどお伝えした通り、ワインやジン、ビール、ウイスキーなどご用意しています。
――お酒以外におつまみもあるんでしょうか?
長谷川さん:角打ちスタイルでおつまみがいくつもあるお店もありますけど、うちはまだどうしようか固め切れていないんです。オープン当初はおつまみも用意しようと思ったんですけど、それをやり出したらキリがないっていうか、どんどん飲食店さん寄りになっていくじゃないですか。そのスタイルで営業するのは、僕らの本質とはちょっと違うと思うんです。僕たちはお酒のことだったり、作り手さんのことだったりを伝えていかなくちゃいけないから。それ以外のことに時間と労力を割くのはちょっと違うかなと思って、最近はおつまみメニューを減らしました。
――新店舗が新潟駅の近くにあるメリットはありましたか?
長谷川さん:メリットはさまざまな面で感じています。いちばんのメリットは県外から来やすいことでしょうか。作り手さんが「新潟店」に来られる機会も増えましたよ。作り手さんと一般のお客さま、料理店さん、料亭さんとが直接会ってお話するってすごく意味があるんです。言葉を交わし合うことで見えてくる景色が変わるんですよね。それを感じて欲しくて、月に数回、作り手さんを交えてここでイベントを開催しているんです。
――きっとよりお酒が美味しくなるでしょうね。作り手さんとユーザーさんをつなげようと積極的に動かれているのには、何か理由があるんでしょうか?
長谷川さん:う~ん。どんな情報も気軽に手に入る時代だからかもしれません。地味でもすごく美味しいお酒があるのに知られていなかったり、どういう背景で作られているか伝わっていなかったりしますからね。
――県外のお酒も扱っていらっしゃるそうですね。新潟ってお酒が有名だから、やっぱり地酒を中心に販売したくなるものかと思っていたので、意外でした。
長谷川さん:僕は最初に県外の酒屋さんで勉強させてもらったんですよ。県外では「うちの県の地酒だけをを売ろう」とするスタイルはありませんでした。それも影響していると思います。それに「長谷川屋」本店が30年間営業しているとはいえ、業界では後発なわけですよ。同じ新潟の酒蔵さんであってもお付き合いするまで時間がかかった時期もありました。それでも何とかして品揃えを充実させなくてはと考え、「県外のお酒も入れよう」というところからはじまっていった経緯もあります。
――それが今の充実のラインナップになっているんですね。
長谷川さん:それに広い視点で美味しいお酒が選べるって説得力があるじゃないですか。日本の魅力を、世界中を旅した人が語るのと、ずっと日本にいる人が語るのとでは違いがあるのと一緒で。洋酒もある、県外の日本酒もある、ワインもある中で新潟のお酒も販売している「長谷川屋」には、僕たちなりの説得力があるんじゃないかと思っています。
――新しく取り扱うところのリサーチはご自分でされるんですか?
長谷川さん:基本はそうですね。今は生産者さん同士もつながっているので、ご紹介いただくこともありますし、作り手さんがフラッとこの店にいらっしゃることもあります。素敵なコミュニティには自然と素敵な人が集まっている気がしますよ。
――そうとうな数の方とお会いになっているのでは。
長谷川さん:直接会いに行って、どんな人なのか、なぜ作っているのかなどお聞きします。いろいろと知った上でお付き合いをするのがいいと思っていて。なので国産のお酒が多いんです。一部海外のお酒も扱っていますが、その場合はインポーターさんとしっかり情報交換をします。
――最後に、次の展開としてどんなことを考えているのか教えてください。
長谷川さん:もっとこのお店を利用する動機をお客さまに提示できたらいいなと思っています。自由度が高い空間だし、まだまだいろいろな使い方ができると思っています。今取り組んでいること以外にもここでやりたいことがたくさんあります。
――交流の場になっているのはすごく面白いと思いました。
長谷川さん:そういう意味では「酒屋っぽくない酒屋」ですよね。「酒屋っぽくない」は褒め言葉だと思っているので、そうありたいと思っています(笑)
長谷川屋 新潟店
新潟市中央区弁天3-3-5 新潟マンション102
営業時間:12:00 ~~20:00
定休日:火曜