主役を引き立てる植物を生産して10年、三条市「コスモグリーン」。
ものづくり
2025.07.27
東西オーストラリアのユーカリ類やオージープランツ、プラチーナのような園芸植物に、古典植物。新潟県三条市にある「コスモグリーン」では、このような聞き馴染みのない珍しい草花をたくさん生産しています。こちらの農園は、ある時期から「あえて主役ではない草花」に特化してきたのだとか。その理由を「コスモグリーン」の石丸さんに詳しく聞いてきました。

コスモグリーン
石丸 一人 Kazuhito Ishimaru
1979年三条市生まれ。横浜市の大学を卒業し就農。研修先での勤務を経て両親が営む「コスモグリーン」に入る。食べることが大好きで、特にイタリアンには目がない。

主力の菊から、アクセント草花へ。
――まずは石丸さんが園芸の仕事を選んだ理由を教えてください。
石丸さん:大学在学中に、「将来は何かを作る仕事がいいな」と思いまして。コミュニケーションを取るのが上手な方ではないので、ひとりで黙々と仕事を完結したかったんですね。でも、アーティスト系ではないなと(笑)。そこで農業や製造の分野に進もうと考えていたら、親が生花生産の農業法人「コスモグリーン」を立ち上げたんです。それで卒業後に1年間、広島の種苗会社で研修をさせてもらってから「コスモグリーン」に入りました。
――「コスモグリーン」では当時はどういったものを生産していたんでしょう?
石丸さん:メインは菊の生産でした。菊は安定した売り上げが見込めるので、業界でも主力の品目なんですよ。「コスモグリーン」の基本設計も「菊をメインに」ってことだったので、それでいいんだろうなと会社の意向通りに生産していました。
――20代前半って自分のキャリアに葛藤を持ったり、将来が不安になったりする年頃だと思うんです。石丸さんは、どういうモチベーションで農業をされていたんでしょう?
石丸さん:仕事の不満とか不安とか、そういうのはほとんどなかったんですよ。いろいろ考えるようになったのは、結婚してからですね。「将来家族が増えることを考えると、今の収入では心もとない」と思うようになって。

――そこで何か仕掛けられたことはあるんですか?
石丸さん:2016年でしたかね。ふたり目の子どもが生まれた頃に事業転換をしました。業界全体の流れが変わって、「菊ばかり生産していても仕方ないな」と思うようになったんですよ。当時は「コスモグリーン」の売上の6割が菊でしたけど、それでも菊の生産を完全にやめました。
――思いきりましたね。
石丸さん:生花を買う人が高齢化していることに加えて、菊は若い世代からの関心が薄い。「このままでは10年後に市場が縮小してしまう」と思いました。それで、若い皆さんが欲しがっている品目を生産しようと決めたんです。「一風変わった植物が欲しいな」という若手の花屋さんに、うちを使ってもらおうと考えたんですね。

手探り状態から、無事に収益を生む。
――具体的には、何をどう変えたんですか?
石丸さん:生産品目を生花から、草花類に変えました。お祝いや仏花、家庭で飾られるお花ではなくて、添えものの草花ばかりを作るんです。
――「添えもの」というのは?
石丸さん:副材というか、お花全体のデザインにアクセントを加えるような存在です。
――ちょっと言い方はよくないですけど、マイナーなお花というか。
石丸さん:そうそう、その通り(笑)。その「ドマイナー」にめいっぱい舵を切ったんです。そもそもこの業界は、コストと単価が結びついていないことがあるんです。いくらコストがかかっても、安いものは安い。なので低コストで生産できるものを作った方が儲かるんです。それが今、「コスモグリーン」で生産している品目たちです。

――何種類くらい生産しているんでしょう?
石丸さん:今は100種弱くらいですかね。収益に課題がある、栽培条件が合わないなどの品目はすぐに「生産しない」という判断をします。
――「コスモグリーン」さんと同じようなものはあまり市場に出回っていないのでは。
石丸さん:確かに希少ではあるんですけど、あまり知られていないから、市場でほとんど値がつかないときもあります。悔しいけど、そういうリスクはありますね。
――生産品種を変更して、ご苦労もあったと思います。
石丸さん:データが何もないから、参りました。栽培データを調べても、ほとんど出てこないんです。
――それで、どうされたんですか?
石丸さん:当たって砕けろ(笑)。何もかも手探りです。初年度はさすがに赤字でしたけど、2年目にトントンになって、3年目から利益が出て。経営的にはシミュレーション通りでしたね。

気候リスクにも動じない、生産力。
――私は植物を上手に育てられないんです。石丸さんは当然いろいろなノウハウをお持ちですけど、それでも予期できないことが起こりますよね?
石丸さん:困るのは、やっぱり台風被害です。毎年必ず起きると言ってもいいくらいですもんね。でも、もし一作ダメになったとしても、生産コストが抑えられているから、作業も気持ちもすぐに切り替えられます。そうでないと「これまでの労力とコストを取り返さなくちゃ。どうしよう」と苦しいんですよ。大概、ろくなことにならないですしね。
――以前、菊を生産されていたときとは違う感覚なんでしょうね。
石丸さん:植物が全滅する悪夢をたまに見ていました。今は、まったくそういう夢を見ません。

――しかし、そうとう大きな決断をされましたよね。
石丸さん:どう考えても赤字になるのはよくないことですからね。今では経営の知識もだいぶついてきましたけど、当時はそこまで知識がなかったから思い切った判断ができたのかもしれません。リスクの本当の怖さを十分にわからずにいたから、できたことです。
――今振り返って、「いい判断だった」と思いますか?
石丸さん:めちゃくちゃよかったと思っていますよ。「この先どうなるんだ」という不安はなくなりましたもんね。子どもは「コスモグリーン」を継ぐつもりはないみたいなので、経営的に安定した状態にしてどこかに引き継げたらいいですけどね。

コスモグリーン
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