アクリルで「飾る」を楽しむ。
「Kuwabara」のこだわりの商品たち。
その他
2025.12.22
カプセルトイを集めていると家に飾りきれないほど増えてしまう、なんてことがしばしば。「せっかくなら、可愛く飾りたい」と思っていたとき「Kuwabara」の「TOYSHELF」という商品を見つけました。調べてみると、以前取材したことのある「株式会社クワバラ」の自社ブランドの商品だったのです。代表取締役の桑原さんにブランドのこと、商品のことなど、いろいろ聞いてきました。
桑原 昭二
Shoji Kuwabara(株式会社クワバラ)
1973年長岡市生まれ。「株式会社クワバラ」代表取締役。デザイン系の専門学校を卒業後、アパレルショップなどで働き、24歳のときに父親が創業した「株式会社クワバラ」へ入社。40歳で代表取締役へ就任し、自社ブランドである「Kuwabara」を立ち上げる。TVドラマを観るのが好きで、最近良かったドラマは『じゃあ、あんたが作ってみろよ』。
時代の変化の中で感じた、
商品開発の必要性と、難しさ。
――桑原さんには、3年前にお話をお聞きしましたね。
桑原さん:前回は「株式会社クワバラ」の自社ブランドである「Kuwabara」のポストカードを飾る「CARD TAILOR」や本を飾る「BOOK TAILOR」のお話をさせてもらいました。あれから3年が経って商品がたくさん増えたんですよ。
――どんな変化があったのでしょう。
桑原さん:アクリル製品を安く、早く作れるメーカーが増えてきて、うちみたいに昔ながらのやり方で、手をかけて製品を作る会社は、企業向けの製品だけでは厳しくなってきました。受注製品だけではなく、一般の人にも買ってもらえる製品を増やしていこう、という流れになったんです。
――それで「Kuwabara」のラインナップを増やしていったんですね。
桑原さん:商品を作っていく中で、今までの受注製品と「Kuwabara」の商品はプロセスがぜんぜん違うっていうことに気づいたんです。受注製品はお客さんのリクエストから作っていきますけど、一般のお客さんに向けた「Kuwabara」の商品は、売れることが確定していない中で、商品を販売できるかたちにしなきゃいけないので、今でも苦労することが多いんです。
――具体的には、どんな苦労が?
桑原さん:たとえば「BOOK TAILOR」は、本を引き立てるためのもので、本を飾ってはじめて商品として成立するんです。「Kuwabara」の商品の多くはそういった、商品単体として何か意味があるものではなく、ご自身の本や小物を飾ることで商品に意味が生まれます。だから、ハサミとかコップみたいに、商品だけを見て魅力を感じてもらえることが少ないんです。
――飾るものを引き立てる、ということを大事にしているからこその悩みですね。
桑原さん:それに、「Kuwabara」自体が、大きなブランドではなかったので、まずはいろんな人に知ってもらう必要がありました。それで、東京で展示会に出展したり、POP UPをしてみたり、大きな都市で知ってもらうことからはじめてみました。
――ふむふむ。
桑原さん:展示会でも「Kuwabara」ならではの悩みが出てきて。うちの商品は、アクリルを使った商品ではあるんですが、インテリアから文具まで、いろいろなジャンルの商品をつくっています。そうなると、文具を扱う展示会では文具を仕入れに来るバイヤーさんが多いので、「Kuwabara」の商品を全部知ってもらうことが難しかったんです。
――なるほど、「アクリル」というジャンルがないから、ひとつの展示会で商品を全部見てもらうことが難しい、と。
桑原さん:どの展示会でも「自分たちのできることを、どう見せていくか」っていうことを考えていましたね。ただ、出展していく中で、メーカーさんから「こんな商品がほしい」っていうお声もいただけるようになって。そこから、うちのできることを提案して、新しい商品の開発や製品の受注にもつながっていたので、無駄ではなかったとも思っています。


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1枚のアクリルの板に、
とことんこだわりを込めて。
――今回、SNSで「TOYSHELF」を見つけて「こんな商品があったんだ」と思って、取材をお願いしたんです。
桑原さん:ありがとうございます。SNSは僕の奥さんがやってくれていて、県内外のセレクトショップやカフェに届いたらいいのかなって思っています。過去には、うちの商品を扱ってくれたセレクトショップがSNSに載せてくれて、大反響だったこともありました。SNSで知ってくれた方には、ぜひ実物を見てもらいたいなって思っているんです。
――と、言いますと?
桑原さん:「Kuwabara」の商品は、見た目だけではわからない、こだわりがたくさん詰まっていて。見つけていただいた「TOYSHELF」も、一見アクリルをただ曲げただけのように見えますが、この厚さのアクリルには、力を加えると戻ろうとする性質があるので、きちんと90度に曲げるのってけっこう大変なんです。
――それは、つくっている人にしかわからないですね。
桑原さん:他にも、この丸の形になるまでに、丸だけではなく四角もつくってみたりして試作を重ねていったんです。なんてことない、ただ1枚の板を曲げただけに見えるかもしれませんが、この形は試行錯誤を繰り返してようやく決まったものなんですよ。
――改めて商品を見ると、この形だから出る影も素敵だなって思います。
桑原さん:そう見てもらえると、すごく嬉しいですね。他にも、レコードを飾る「JACKET² for LP(ジャケジャケ)」もつくる過程ですごくこだわりました。使うアクリルの色を考えたとき、赤や青の原色っぽい色を使うと、アクリルを溶かして接着したときに、わずかに空気が入って白っぽくなっちゃうんです。性質上、これは避けられないので、それが比較的目立ちにくい蛍光色のアクリルを使うことにしました。
――実際にレコード飾ると、蛍光色の影がいいアクセントになります。
桑原さん: そのまま飾ってもらっても楽しんでもらえるように、背面をレコードの形に切り抜いています。ここも実はこだわったところで、切り抜いた後に面取りをしているんです。これによって光が入って立体的に見えるようになるんです。「JACKET² for LP」はレコード以外にも、絵やポストカードの上に掛けても楽しめますよ。


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どの商品も、品質にこだわり、
長く使える「商品」でありたい。
――どの商品も細かいところまでこだわりがあって、まるで作品のようです。
桑原さん:そう言われると嬉しいけれど、「Kuwabara」のアイテムはやっぱり「商品」だって思うんです。作品って、ある人が作ったら、どんなものでも「作品」になり得るじゃないですか。でも、「Kuwabara」のアイテムは作品のようにこだわっていても、ある一定のクオリテイでずっと作り続けたいものなんです。その意味で「商品」だなって僕は思ってます。
――日々、同じ質を保ち続けるという意味での「商品」なんですね。
桑原さん:同時に、「商品」だからこそ、長く使い続けてもらえるものでありたいとも思っているんです。そのために、デザインをシンプルに、耐久性のことも考えて、パーツは最小限にしています。「TOYSHELF」や「JACKET² for LP」が折り曲げたアクリルを使っている理由のひとつでもあります。
――桑原さんのお話を聞いていると、どの商品も形や色に意味があることを、改めて実感します。
桑原さん:商品を作っているところを見ていると、伝えたいことがたくさん出てくるんです。例えばアクリル板のカット面は、最初からこんなに透明できれいではなく、職人が丁寧に磨いています。そういう、商品からは想像できない手間やこだわりを、これからもっと伝えていけたらいいですね。
――最後に、これからの目標を教えてください。
桑原さん:まずは、もっと多くの人に「Kuwabara」の商品たちを知ってもらいたいですね。以前、台湾の方に「あなたたちの商品は、私たちを考えさせてくれる、何を飾っても自由なんだね」って言われて、はじめて僕たちのやってきたことが伝わったと思いました。日本だけでなく、世界の人にも見てもらう機会をもっとつくれたらいいですね。


Kuwabara
長岡市関原南1-4346
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