作る、食べる、学ぶ、料理教室
「食の学び舎 どら子屋」

カルチャー

2026.02.28

text by Etsuko Saito

和菓子講師としてキャリアを積み、自身の教室をはじめた本間さん。「食の学び舎 どら子屋」で、和菓子や味噌、梅干し作りの教室のほか、生徒同士の縁が生まれるお話会などを開催しています。お菓子教室でありながら、料理以外のことも学べる場として、さまざまなことに取り組む理由を聞いてきました。

Interview

本間 奈未

Nami Honma(食の学び舎 どら子屋)

1993年加茂市生まれ。製菓の専門学校で学び、講師として卒業校に勤務。レストランカフェでの勤務を経て、再び講師業に復活。2025年に「食の学び舎 どら子屋」をはじめる。ドラえもんが大好き。

あんこ嫌いが、
和菓子に魅せられる。

――本間さんはお菓子の専門学校を卒業してから、その学校の先生になられたそうですね。

本間さん:最初は先生の「補佐」みたいな感じで、徐々に講師として授業を任せられるようになりました。

 

――専門学校では、和菓子を専攻していたんですか?

本間さん:学生時代は和菓子、洋菓子、パンといろいろ勉強しました。そもそも「これを習得したい」とはっきりとした考えがあったわけじゃないんです。私、あまり計画性がなくて、流れるように生きてきたので(笑)。卒業した学校が料理の大会に積極的に参加していて、「私も出場したい」と思ったのが進路の決め手でした。

 

――それも立派な動機ですよ。

本間さん:実は、子どもの頃からあんこが大嫌いで。和菓子の大会は「無理やり参加させられてる」って気持ちでいたくらいなんですけど、自分で炊いたあんこがあまりにも美味しくて。「手作りって、こんな味がするんだ」と感動したんですよね。嫌いだったあんこがきっかけで、和菓子にどんどんハマっていきました。

 

――和菓子のどんなところに惹かれたんですか? 造形美なのか、それとも味なのか?

本間さん:手を動かして作っていく過程が好きです。洋菓子には、焼きあがるまでどんな仕上がりになっているかわからないドキドキ感があります。一方の和菓子には、生地の形が変わっていく様子を楽しみつつ、自分の手で繊細に仕上げていく魅力があります。そこに、すごく惹かれるんです。

 

なみ先生手作りのお汁粉と梅干し。甘いとしょっぱい、それぞれが互いの旨みを引き立てる。

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昔ながらの食文化を
伝える。

――「どら子屋」さんをはじめたきっかけというのは?

本間さん:人に教えることとおもてなしが好きなので、和菓子の講師をしている間も「自分での料理教室を開いてみたいな」とひっそり思っていました。いろいろなタイミングが重なって環境は整ったんですけど、でも何からはじめたらいいのかさっぱりわからず……。地元の商工会さんに相談して、事業を立ち上げるまでリードしていただけたことが心強かったです。

 

――事業を立ち上げて、意識の変化はありましたか?

本間さん:当たり前ですけど、経営は学ばないとできないものだな、と痛感しました。お菓子にばかり一生懸命になっていたけど、「どうしたら喜んでもらえるのかな」とか、今までとは違う視点で考える癖ができました。たくさん本を読んで、経営者の先輩方のお話を聞いて。「なるほど、そうなんだ」という発見がたくさんあって、とても楽しいです。

 

――あらためて「どら子屋」さんについて、教えてください。

本間さん:練り切りやあんこ作りといった、和菓子を学ぶ教室です。それ以外にも、お味噌や梅干しを手作りするレッスンも開催しています。今はパックのお出しだとか、簡単で美味しいものがたくさんありますよね。そういうものも重宝するんだけど、昔ながらの製法をちゃんとお伝えしたいと思っています。ずっと日本で受け継がれてきた生活の知恵を、みなさんに知ってもらいたいんですね。じゃないと、大切な文化が消えちゃいます。

 

――お味噌や梅干し以外にも、いろんな日本の食文化がありますもんね。

本間さん:和菓子も季節のお菓子です。春になったら食べるもの、おはぎのように彼岸に食べるもの、と習慣づけられているものがたくさんあります。

 

――そういうことへの関心は、和菓子を学ぶ上で自然と湧いてきたんですか?

本間さん:そう言われるといつから関心を持つようになったんだろう……。ご年配の方とお話しするようになって、自然と「日本の文化を大事にしなくちゃ」と思うようになった気がします。同世代と働いていた頃は気づけませんでした。60代、70代の方々は、所作がとても丁寧。そういったところも日本の美しさですよね。

 

――60代、70代の皆さんは、料理の腕も抜群です。

本間さん:それはもう、味噌作りなんてお手のものという方が多いですよね。なので、お味噌や梅干しを作りたいという方はもう少し下の世代の方かな。生徒さんで多いのは「あんこが好き」という方。あんこファンがこれほど多いのか、とびっくりしました(笑)。練り切りを自作して、お抹茶と一緒に食べるのを楽しみに来てくださいます。

 

見事な手捌き。あっという間に、あんこがごまあざらしに変身。
練り切りとお抹茶。自作の練り切りに愛着が湧き、食べることを躊躇う人が多いらしい。

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特別なものは必要ない。
ちょっとしたコツで絶品あんこ。

――人に教える、という意味では専門学校の講師と料理教室の先生と似ているところがあると思うんですが、違いがあるとするとどんなところでしょう?

本間さん:自信を持っているお菓子を自由に教えられるところは、いいですよね。私が「美味しい」と思っているものを提供して、同じ喜びを感じてもらえたら、それ以上に嬉しいことはないです。

 

――レシピはどんなふうに考えているんですか?

本間さん:面倒くさがりなので、常日頃、熱心に試作しているわけじゃないです。テーマに合わせて気合いを入れてレシピ作りに取り組みます。といっても「何をどの程度加えたらどうなるのか」は把握しているので、どうアレンジするかを考えるんですが……。やっぱりため息が出るくらい美味しいものを作りたくて。納得できない味になってしまった経験は、何度もしました。

 

――ちなみに、本間さんのあんこのレシピの秘密は?

本間さん:秘密ですか? 特別な材料を使っているわけじゃないです。あずき、きび砂糖、塩が基本です。手軽に手に入る材料でも、ちょっとしたコツで上手にできるんです。

 

鬼ももちろん手作りですよ。

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有意義であたたかい。
特別なひとときを過ごす場所。

――「食の学び舎」という屋号には、どんなメッセージが込められているんでしょう?

本間さん:寺子屋のような場所でもありたいな、と思っているんです。皆さんに学んでいただける「大人の学び舎」にしたくって。大人になると勉強する機会って、あまり多くないですよね。でも、子どもの頃より興味のある分野は広いと思うんです。得た知識を吸収する力もあるし。皆さんが食について学びを得たら、食卓も豊かになるし、健康にもなる。嬉しいことがたくさん待っているような気がしています。

 

――それで「学び舎」なんですね。

本間さん:もうひとつ、学びの機会になっているのは「お話会」です。お茶屋さん、整体師さんなど、得意分野をお持ちの方をゲストに招いて、堅苦しくない講座を開催しています。

 

――和菓子作りに、味噌、梅干し作り、お話会といろいろな催しがありますね。

本間さん:たくさんの方と知り合うことができて楽しいですよ(笑)。私、人が大好きなので。こんなに人間関係が広がるなんて、思ってもいませんでした。友達100人、できたと思います(笑)

 

――SNSで「どら子屋」さんを知って、受講する人が多いですか?

本間さん:そういう方もいれば、知人の紹介で、という方もいらっしゃいます。最近多いのは、参加者さんのSNSを見て興味を持ったという方。あとは私、営業を兼ねていろいろなところに遊びに行くので、出かけた先でお会いした方が来てくれることもあります。個人的には、お顔がわからない方が突然お越しになることがちょっぴり不安で。なるべくどこかでお会いしておくと安心かな、と思っています。

 

――目指している教室のあり方はありますか?

本間さん:「『どら子屋』に行くと楽しいよ」「美味しいものが食べられるよ」と思ってもらえる教室にしたいですね。ここで教えたお料理を「家でも一生懸命作ってください」とは思っていなくて(笑)。もちろん作ってもらえたら嬉しいですが、それ以上に、この場所で有意義な時間を過ごしてもらえたらいいなと思っています。皆さんに、ちょっと贅沢なひとときを届けたいです。

 

同じものはふたつとない。ぱっちりお目目のあざらし(左)と昼寝中あざらし(右)。

食の学び舎 どら子屋

※最新の情報や正確な位置情報等は公式のHPやSNS等からご確認ください。なお掲載から期間が空いた店舗等は移転・閉店の場合があります。また記事は諸事情により予告なく掲載を終了する場合もございます。予めご了承ください。

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