観てくれる人も自分も、楽しませたい。
ennakonomaさんが描く世界。
カルチャー
2026.04.25
寺泊を拠点に活動している「ennakonoma(えんなこのま)」さん。丸や線、点などを組み合わせた抽象的な作品や、猫や食べ物など身近なモチーフの作品をつくっています。今回は、個展を開催しているアトリエ兼ギャラリーである「かもめ借景」にお邪魔して、ennaさんのこれまでのことや作品のことについて、いろいろお話を聞いてきました。
ennakonoma
長岡市栃尾出身。都内の美術大学でアニメーションを学び、学生時代から自身の作品を発表する。卒業後は、地元である栃尾を拠点にイラスト制作やデザインの仕事を行う。昨年長岡市寺泊に拠点を移し、作品を制作している。
小さい頃から好きだった絵は、
自分の代わりに経験してくれる存在。
――今日はよろしくお願いします。早速ですが、これまでどんなことをされてきたのかを教えてください。
ennakonomaさん:東京の美術大学を卒業してから、イギリスに短期留学をしました。その後は栃尾に戻ってきて、絵を描く仕事やデザインの仕事をやっています。仕事をしながら、自分の作品を個展や展覧会で展示することもあります。去年、拠点を寺泊に移して、「かもめ借景」というアトリエ兼ギャラリーを作りました。絵の仕事をはじめてからは、20年近く経ちましたね。
――ennaさんが絵を描きはじめたのは、いつからなんでしょう。
ennakonomaさん:小さい頃から絵を描くのが大好きでした。テストやチラシの裏に余白があれば絵を描いていたくらい、真っ白な紙が私にとってはご褒美でしたね。実は、私の父と祖父も絵を描いていたので、美術大学に進むことも、ありがたいことに反対はされなかったんです。
――大学では、アニメーションを学ばれたんだとか。
ennakonomaさん:本を読むのがすごく好きで、アニメーションが持つストーリー性が似ていると思ったし、すごく憧れがあって、アニメーションを学ぶことにしました。1秒絵を動かすのに最低でも8枚の絵を描く必要があったので、とにかく絵を描きまくっていました。絵を描くのが好きな私にとっては、すごく楽しかったし面白い経験をさせてもらえましたね。
――イギリスの短期留学を経て、栃尾を拠点に活動をはじめられました。その活動のかたちも他の人とは少し違ったようで……。
ennakonomaさん:自分のアトリエを拠点に、作品の制作はもちろん、そこで展示会を開いて販売をするまで、自分でやっています。作品を売るって、すごく難しいんですけど、面白くもあって。絵を描くのは最高に楽しいし、展示会に向けて飾りつけしていくのも楽しい、お客さんが来てくれるのも、楽しい。でも作品の値付けだけはすごく気を遣う作業だなって思います。高くても安くてもダメ、スリリングで刺激的なお仕事だなって思っています。
――ネガティブに捉えられがちな側面も楽しまれているのが素敵です。
ennakonomaさん:値付けは大変ですけど、やっぱり売れたらすごく嬉しいですから。私にとって絵は、自分の代わりになんでもやってくれる存在なんです。極端な例かもしれないんですけど、好きな人に絵を渡す予定があれば、簡単に会えますし(笑)、私と誰かを新しくつなげてくれることもありますから。絵は、私から生まれたものではあるけど、私が持っていないものをたくさん持っている絵に、人とのコミュニケーションを支えてもらったり、辛いことも怖いことも代わりに経験してくれているんです。


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ひとりだけど、ひとりじゃない。
「誰か」を思い浮かべて、作品を描く。
――「自分の作品は我が子のようなもの」という表現をよく聞きます。実際のところ、ennaさんはこの言葉、どう感じているのでしょう。
ennakonomaさん:子どもとはまた違う存在なのかなと思っています。もちろん、自分の作品に強い思い入れがあったり、作品が好きだっていう気持ちはあります。でもそれだけじゃなくて、絵を買ってくれる人に「飾りたい」って思ってもらえたり、幸せになってもらいたいとも思っているんです。だから、絵が売れたら本当に嬉しいし、「私の代わりにお客さんを楽しませてね! 」って送り出せています。
――絵を描いている段階から、手に取ってもらう人のことも考えていらっしゃるんですね。
ennakonomaさん:作品を観てくれる人を想像しながら、「ここにこの色を置いたらきっと面白いって思ってくれる」みたいに考えて絵を描くんです。これはパン屋さんに近い感覚なのかな、とも思っていて。パンを買ってくれる人を喜ばせたいから、職人さんは美味しいパンを作る一方で、「自分のパンはすごいでしょ」って周りに思ってほしいというエゴもある、みたいな。
――主観的な視点だけじゃなく、客観的な視点もお持ちなんですね。
ennakonomaさん:普段制作のときは、もちろんひとりで絵を描いているんですけど、いろんな人と一緒に絵を描いているような感覚になるんです。会ったこともないような人を思い浮かべて、100人くらいと一緒に大きな筆を振っているイメージが近いかな、と。ただ、人のためだけに描いているわけでもなくて。サプライズが好きなんですよ。運転免許を取ったときも、誰にも言わずに3、4ヶ月学校に通って周りを驚かせたことがありました(笑)。誰かに「わぁ! 」って言わせるのが私自身の楽しみでもあるから、自分を客観視して絵を描いているんです。ただ、前提として画面構成や色のバランスは、自分の好きなように表現することは大切にしています。


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描き手であり、鑑賞者。
観る人も、自分も楽しみたい。
――客観視しているということは、作者から離れて作品を観ている人でもあると思います。
ennakonomaさん:確かに、鑑賞者と同じ視点から絵を描いているかもしれません。お客さんや友人に「この絵が好き」って言われたとき、「私と趣味が似ているね」ってよく返すんですよ。私が描いている絵だから当たり前かもしれないんですけど、私は絵を描いている人であり鑑賞者だから、同じ絵が好きな人にこう言うのかもしれないです。
――絵を描く人であり、鑑賞者。とても面白いです。
ennakonomaさん:そう思うと、さっき言っていた「誰かを驚かせるために描く」の「誰か」には私も含まれていて。私も絵を観て楽しみたいっていう気持ちを持って、絵を描いているんだなって思いました。だからひとりで絵を描いていても孤独じゃないし、私の絵を観てくれている人と同じように自分の絵も楽しめているのかもしれません。
――いろんな作品づくりの中で、どんなことを大切にされているのでしょう。
ennakonomaさん:「集団的なノスタルジーを生みたい」っていうのは大きなテーマだと思っています。昭和レトロをモチーフにしたものって、私たちは当時を経験したことがないけど、懐かしさのようなノスタルジーを感じることがありますよね。私の作品を見た人の中に、そんなノスタルジーを感じてもらえるように意識しています。例えば、私の作品のひとつに、ヨーヨーの模様を想起させるものがあります。お祭りの思い出は人それぞれだと思うんですが、この作品を見たときに、思わず「うわー! 」ってなるような懐かしさがこみ上げてきたらいいなって思うんです。
――懐かしさって、思い出しているとすごく心地いい気がします。
ennakonomaさん:懐かしさの多くは、その人を幸せにしてくれるものだと私は信じています。新しくて、斬新なことをするより、ホッとする温かさのあるもので誰かを驚かせたいし、楽しませたいんです。その温かさを私の作品が引っ張り出す装置になればいいなと思っています。
――ennaさんのこれからのこと、ご自身ではどうイメージされていますか?
ennakonomaさん:うーん……、どうなっているんでしょうね。外からの影響を受けて、描くモチーフに変化はあるかもしれないけど、絵を描くということだけはやめていないと思います。絵じゃないにしても、ものを作っていない自分は想像できないかな。
――これからやってみたいことがあれば、教えてください。
ennakonomaさん:今考えてみると、やりたいことはだいたい実現できている気がします。あ、でも小説は書いてみたいと思っています。あとは今自分がやっている活動を続けていけるように、頑張っていきたいですね。この活動は、会社の株と同じだと思っていて。私が絵をやめるっていうことは、会社の株がおじゃんになってしまうということなので、絵を描き続けられるようにしていきたいですね。


ennakonoma
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