オーガニック食品の量り売り店、
身体と心が整う「chinoショップ」
その他
2026.05.03
量り売りのオーガニック食品や、身体と環境に優しい日用品が並ぶ「chinoショップ」。以前は衣料品を販売する「婦人館知野」だったお店が、どのように身体と心を整えるお店に変わっていったのか、店主の知野さんにお話を聞きました。一緒にお店を経営するエレナさんは「New Eyes#07」に登場していますので、こちらの記事もあわせてぜひご覧ください。
知野 幸一
Koichi Chino
1976年三条市生まれ。明治大学を卒業後ジュエリーメーカーに就職。25歳のときにイタリアへ渡りミラノのIED(ヨーロッパ・デザイン学院)でインテリアデザインを学んだ後、現地の建築事務所に勤務。滞在中にエレナさんと結婚。2011年に帰国し、両親が営む「婦人館知野」の仕事を手伝いながら、茨城、イタリア、三条の3拠点生活を送る。2024年に店名を「chinoショップ」に変更。
身体作りには食が基本。
実感から生まれた品揃え。
――まずは「chinoショップ」さんがどんなお店なのか教えてください。
知野さん:シンプルに言うと、みなさんの身体と心を整えるためのお店です。環境と人に優しい衣食住の商品販売、施術やカウンセリングを行っています。私たちは自給自足に近い生活を目指していて、作れるものはなんでも自分たちで作ってしまおう、と考えています。なので冬場のエネルギーは薪ストーブ。もちろん薪も自分たちで用意しています。
――店内にはたとえばどんな商品がありますか?
知野さん:豆類、調味料、オリジナルのチャイにハーブティー、環境に優しい洗剤などの日用品など、どれも私たち家族が普段から使っているものばかりです。
――こういった品揃えには、知野さんの経験が影響しているそうですね。
知野さん:幼少期は身体が弱くて、プールに入るとすぐにブルブルと震えてしまうような子どもでした。それで食事を変えたところ、体調がとてもよくなったんです。6年生の頃には誰よりも体力があったと自負しています(笑)

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イタリアで得た、
自分で生きる力。
――知野さんは20代半ばにイタリアに移り住むわけですが、何かきっかけはあったんでしょうか?
知野さん:もともと海外で暮らすことに興味がありました。「海外勤務ができそうだ」という理由で、新卒でジュエリーメーカーに就職したくらいですから。でも直接的なきっかけは、母が信頼していた人からのアドバイスです。その方が言うには「幸一さんはイタリアに行ってインテリアデザインの勉強をするとよい」と。それで勤めていた会社を辞めて、イタリアに渡ったんです。
――思い切りましたね。
知野さん:勤務先の海外勤務の可能性はあるにはあったんですけど、会社の事情は変わるものですから、それがいつになるのか、そもそも本当に海外で暮らすチャンスが巡ってくるのかもはっきりしませんでした。それであれば決断してしまおうと思いまして。「イタリアに行くのが吉」と言われた数ヶ月には、もう渡伊していたと思います。
――ちなみにイタリアでの生活で、びっくりしたことってなんですか?
知野さん:それはもう、いっぱいありすぎて(笑)。あらためて日本が安全な国であること、おもてなしの精神にあふれていると感じました。向こうでは子どもだけで公園で遊ぶなんて考えられませんから。他にも驚いたこと、大変だったことはたくさんあるんですが、イタリア暮らしで、私の心はずいぶん強くなりました。
――というと?
知野さん:日本では勉強に困ったことがないし、スポーツも得意だったので、周りのみんながワーっと寄ってきてくれるタイプの人間だったんです。それがイタリアでは言葉が話せないので、そもそも対等に扱われず。あまり得意ではないデザインの分野に進んだため悔しい思いもたくさんしました。それでも頑張って生きてきた、ひとりで諦めずにやり切った、と自分に自信が持てたんです。

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消費がもたらす収益の違和感と、
暮らしの再構築。
――イタリアで結婚をされ、新婚生活を送られました。日本にはどのタイミングで戻ってこられたんですか?
知野さん:いずれ日本で暮らそうと妻と決めていて、お互いの仕事に区切りがついたので2011年に帰国しました。帰国直前に父が倒れ、母が看病することになったため、実家の「婦人館知野」は素人同然の私たち夫婦がやりくりすることになりました。ですが、しばらくすると洋服販売という商売の仕組みそのものに疑問が湧くようになって。使い捨ての仕組みというか、たくさん服を買ってもらうことが収入になるんだけど、それって無駄な消費につながっているのではないか、とも感じたんですね。
――建築系のキャリアをお持ちなのに家業に入るなんて意外だな、と思ったんですが。
知野さん:「どこかに勤める方が楽かもしれない」と思いましたけど、妻は「住みやすい三条で家族とともに暮らしたい」と考えていたので、ふたりで自営業の道に進むことを決めました。しばらく「婦人館知野」の立て直しに奮闘して、ある程度経営状況もよくなったんですけど、やっぱりこの業界の仕組み自体に無理があるだろうという考えは拭えませんでした。それで、お金に余裕がないのもあって、自分たちの手で作れるものはなるべくそうしよう、と味噌作りをはじめたんです。それが性に合っていて、今度はオーガニックの食材を求めて、まったくの素人ながら野菜や大豆を作るようになって。だんだんと半自給自足的な暮らしをしたい、と思うようになったんです。
――それでどうされたんでしょう?
知野さん:知人が茨城県の田舎にベーカリーを開いたというので遊びに行ったところ、そこには自給自足に近い生活を送っている人がたくさんいたんです。「婦人館知野」を続ける母のサポートをしながら、私たちは茨城県で自給自足で暮らすことにしました。その間、イタリアへもたびたび渡っていたんですが、コロナ禍で渡航ができなくなって。妻と話し合って、三条へ戻り、自分たちの生活と考え方を伝えられるお店をはじめることにしたんです。
――いよいよ「chinoショップ」が誕生するんですね。
知野さん:お店は、棚2つ分の食品を置くところからはじまって徐々に今のようなお店になりました。食品を買いに来るお客様が増えてきたので、「婦人館知野」ではしっくりこないだろうと、店名も「chinoショップ」に変えました。
――新しい取り組みもいろいろとはじめているそうですね。
知野さん:資格を取得して、身体が楽になる施術も行えるようになりました。自分で施術ルームの施工もしたんですよ。今年は農地と空き家を活用して「三条ナチュラル研究所」をはじめたいと思っています。自然な暮らしを実践して、幸せを感じてもらう場です。
――農業にもチャレンジして自給自足の生活を目指している知野さん。いつもどんな信念を持っているんですか?
知野さん:かたちだけで終わりにしないように意識しています。たとえば一軒家を買ったとしても、働いてばかりでなかなか自宅に帰れないのであれば本末転倒です。自分が何を大切にしたいのかを見失わず、日々の暮らしの中で豊かさを実感したいな、と思っています。

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