十日町の四季を1枚に乗せて。
「Pizzeria Remo」のナポリピッツァ。
食べる
2026.06.27
十日町市のレトロなショッピングモールにあるナポリピッツァの「Pizzeria Remo」。十日町出身の江口さんが、東京からUターンしてはじめたお店です。以前はバリスタとして東京で働いていたという江口さん。ナポリピッツァを作りはじめたきかっけや、十日町にお店を出した経緯など、いろいろお話を聞いてきました。
江口 弘展
Hironobu Eguchi(Pizzeria Remo)
1986年十日町市出身。高校卒業後は上京し専門学校でカフェのプロデュースを学ぶ。その後は都内のロースターでバリスタとして働き、ナポリピッツァに出会う。都内のピッツェリアでの経験の後、昨年十日町市内に「Pizzeria Remo」をオープン。自然とサッカーと温泉が好き。
好きな空間、好きな音楽で、
自分のお店を持ちたい。
――江口さんは以前、バリスタとして働かれていたそうですね。
江口さん:高校時代、将来何をしようか考えていたとき、当時は個人でカフェを開業するのがブームだったんです。それぞれの好きな空間で、好きな音楽を流して、コーヒーや食べ物を提供している人たちを雑誌で見て「いいな」と思って。食べることも音楽も好きだったので、カフェのプロデュースを学べる専門学校に進みました。勉強していく中で、いちばん興味を持ったのがバリスタの仕事だったんです。
――バリスタのどんなところに、面白さを感じたのでしょうか。
江口さん:コーヒーを使って、エスプレッソやカプチーノみたいにいろいろアレンジできて、それをお客様の目の前で作り上げていくところに面白さを感じたんです。卒業後はイタリアの「illy」というロースターの直営店で働くことにしました。「illy」の本拠地であるイタリアに研修に行くことがあったんですけど、そのときイタリアという国にすごく惹かれて。自分のお店を将来出すなら、イタリアの要素を入れたいな、なんて思っていました。
――働きながら将来のお店のイメージも膨らませていったんですね。
江口さん:バリスタとして働き始めてから6年経って、将来を考えることも多かったんですよね。お店を出すならコーヒー以外の何か違うものも組み合わせたいと思って。そんなとき、お店の近くにナポリピッツァの先駆けとなる有名店があって、そこでピッツァを食べたときの美味しさが衝撃的で、これを作れるようになりたいと思ったんです。
――コーヒーからピッツァの世界へ。かなり大きな歩行転換だったんですね。
江口さん:全然関係ないように見えて、実は共通点があるんですよ。ナポリピッツァはお客さんの前でピッツァ生地を広げてソースを塗って、具材をのせて焼くんですけど、この一連の流れはひとつのパフォーマンスになっているんです。バリスタがお客さまの目の前でコーヒーを作ることもパフォーマンスだと思いますし、その所作が美味しさにつながるところも似ていると思ったんです。
――なるほど、な共通点があったんですね。
江口さん:それにナポリピッツァはシンプルだけど、生地や窯のコントロールがとても重要で、すごく難しいんです。生地の発酵具合や薪の状態も毎日変わっていく中で美味しいものを作り上げていくんです。そんなところも面白いと思って、ナポリピッツァのお店で働くことにしました。

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コーヒーから、ピッツァへ。
未経験からスタートした、修業時代。
――心機一転、ナポリピッツァのお店で働くことになった江口さんですが、最初はどんなところで働かれていたのでしょう。
江口さん:最初は吉祥寺にあるお店で、ナポリピッツァとイタリア料理を学ばせてもらいました。ここでは2年くらい働いていましたね。最後の半年はピッツァにも触らせてもらえて、自分の中で料理とナポリピッツァがどういうものか、ある程度把握できました。その後は、地元の農家さんやまちづくりとも関係の深い石神井公園の名店「ジターリア ダ フィリッポ」にお世話になることにしたんです。
――その決断には、どんな思いが?
江口さん:いずれは新潟に帰りたいと思っていたので、農家さんとの付き合いやまちづくりも学びたいなと思って。このお店のオーナーは、過去にナポリピッツァの大会で世界チャンピオンになったこともあったので、技術も学べましたし。ただ、無理を言って働かせてもらっていたので、最初はホールサービスからのスタートでした。
――経験があるからといって、すぐにピッツァを焼けるわけではないんですね。
江口さん:「働かせてください」って頼み込んでいた身でしたからね。でも、将来お店を作りたいっていう思いを伝えたからか、オーナーの近くで働かせてもらえることになって。尊敬する人の仕事を間近で見ることができたのはすごく勉強になりましたし、面白かったですね。コロナもあって、ここでは8年くらい働いていました。
――その後、江口さんは新潟に戻ってきます。
江口さん:コロナも収まって、子どもがちょうど小学校に入学するタイミングで新潟に帰ることにしたんです。本当はもう少し早くお店をはじめたいという思いもあったんですけど、今振り返れば、東京で働いているときも楽しかったから、いいかなって。まさかナポリピッツァのお店を開いているなんて、上京したときの自分は思ってもいなかったでしょうけどね(笑)


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ここでしか作れない、
十日町らしさを感じるピッツァ。
――江口さんのピッツァをひとことで表すと?
江口さん:う〜ん……、なんでしょう。あらためて考えると難しいんですけど、何かに特化しているっていうよりは、今までの積み重ねてきたことが全部詰まったピッツァなのかなって思います。もちろん、十日町のこの場所でしか作れないっていうのは前提としてありますね。
――十日町らしさというのはどの部分でしょう。
江口さん:いちばん大きなものは水ですね。観光地としても有名な清津峡を形成した清津川の水を、ここでは日常的に使えるんです。東京とは全然違って、清津川の水は柔らかいですし、クセが無くて美味しいんですよ。その恵みは生地からも感じられると思います。生地に使っている小麦粉も、国産小麦だけを使っていて、安心・安全でうま味のある生地に仕上げています。
――使っている材料にもこだわりが。
江口さん:十日町と津南町からなる「越後妻有」っていう地域の食材を掘り起こしたくて、季節ごとにいろんな食材を使っています。春は山菜が本当に美味しいですし、これからの時期はズッキーニやとうもろこし、枝豆、茄子なんかも抜群に美味しいんですよ。そんな季節の食材を使って、期間限定のピッツァも作っています。
――お話を伺っている6月初旬の期間限定ピッツァは、アスパラガスを使ったものですね。
江口さん:津南町で採れたアスパラガスを使っています。実は津南町は、全国でも有数のアスパラガスの聖地で。実際に畑を見せていただいたことがあったんですが、山を登った先に急に平地が広がっていて、そこで栽培されているんです。風通しのいい高原ですくすく育った、とても太くてみずみずしいアスパラガスを、フレッシュ感も味わってもらえるように、ふたつの焼き加減でお出ししています。
――その土地の食材を存分に楽しめるとなると、県外の人も楽しめそうです。
江口さん:春の新緑のシーズンやGWには、県外の方にたくさんご来店いただきました。ここには、清津峡や当間高原、松之山温泉などの観光地や、国宝の「火焔型土器」や「大地の芸術祭」の作品のような芸術作品もあります。お店を通してこの土地の良さを、県外の方にも伝えていけたらいいなと思っています。


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地域の食文化を、次の世代へ。
十日町をもっと、面白くしたい。
――十日町でピッツァを作られてみて、ご自身の中で変化はありましたか?
江口さん:ここでピッツァを作りはじめたからこそ、気づいたことはありましたね。その土地で採れた食材を新鮮なうちに食べると、「美味しい」だけじゃない大地のエネルギーを感じるんです。食べるという行為そのものは同じなんですけど、豊かな土から採れた食材を食べると活力が湧いてくるんです。それをピッツァでも表現できるようにしています。そのために、実は十日町のお母さんたちの調理方法を参考にすることも多くて。
――例えば、どんなところを?
江口さん:この地域でいえば、山菜の下処理の仕方や味付けの仕方ですね。これって、どこかに書いてあるというよりは、お母さんたちが代々受け継いできた食文化なんじゃないかなって思うんです。ここから学ぶことはとても多いし、それを別のかたちで次の世代に受け継ぐこともできたらな、なんて考えています。
――十日町の食材の良さを表現するだけではなく、次の世代にもつないでいくと。
江口さん:ゆくゆくは食育につながる活動もしていきたいと思っているんです。子どもたちに十日町の食の豊かさを伝えて、地元に愛着を持ってもえたらいいなと思っています。大人になったときに「こんなお店があって、あんなことをして楽しかったな」って思い出して、僕みたいに、またこの地域に戻ってきてくれるような流れが作れたらって。綺麗事だなとは思うんですけ、そのきっかけは作っていきたいですね。
――その流れができれば、もっと十日町という場所が盛り上がりますね。
江口さん:十日町にも、こだわりのある新しいお店が増えてきています。「あのエリアに行ったら面白い」って思ってもらえるような地域になればいいなと思っています。そのためにも、僕はこのお店で、昨日よりも美味しいものを作り続けていこうと思います。


Pizzeria Remo
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