僕らの工場。#14 「フェールムラカミ」のオーダーシャツ
僕らの工場。
2020.05.15
シャツって楽しい! 1枚からオーダーできる、自分だけのこだわりシャツ。
皆さんは「オーダーシャツ」って作ったことありますか? 百貨店なんかでよくある、生地や形を選んで、採寸をしてもらって、自分の体型に合わせたワイシャツを作る、アレです。そんなオーダーシャツを年間で約11万着以上製造しているのが、村上市にある「フェールムラカミ」さん。その規模は敷地面積3,000坪、建坪645坪と、実は日本有数の大工場。今回はそんなフェールムラカミさんのオーダーシャツへの取り組みについて聞いてきました。ものづくりに興味がある方、必見です!!

株式会社フェールムラカミ
横山 哲之 Yokoyama Tetsuyuki
取締役。1995年入社。以前はアパレルのOEM工場に勤務。裁断・縫製からミシンの調整まですべて自身で行う。工場内の業務の効率化を実行し、幅広い仕様や形を短期間で仕上げる工場の基礎を作り上げる。商品企画も担当し、ジャケット、刺繍、削りだしプリントなど、自社の体制を強化。

オーダーメイドの可能性を広げて、選べる楽しさが会社の強みに。
ーー早速ですが、フェールムラカミさんのことについて教えて下さい。
横山さん:はい、フェールムラカミは1990年にオーダーメイド専属工場として創業しました。当時最先端の、ジャストインタイム生産システムを導入した工場です。オーダーメイド専属なので1着1着違う仕様、形、サイズのものを1枚からでも受注し、生産する仕組みで稼働をしています。
ーーえ、1着からでも製造するんですか?
横山さん:オーダーメイドシャツは基本的にすべて世界に1つしかないものですので、今作っているシャツも1着1着すべて違うシャツです。なので、1枚からでもお受けして製造していますよ。
ーーオーダーメイド専属とはそういうことなんですね、すごいです。
横山さん:ありがとうございます。


ーー横山さんはいつ頃入社されたんですか?
横山さん:私は25年前に入社しました。それ以前もアパレル関係に勤めていましたが、そこではメーカーのOEMが主体でしたので、こういったお客様の要望に合わせてモノづくりができる会社に魅力を感じて入ったんです。入社してからは、生産管理全般を担当していました。前職でも裁断から縫製、ミシンの修理まで1人でやってましたので、現場に入ってからは作業の効率化を主に進めていました。それで、半年経った頃、企画にも携われるようになったので、シャツの可能性を広げていこうと思いまして。
ーー具体的にはどういうことを…?
横山さん:僕が来たときって「白」ばかりだったんですよ。だから入社半年くらいで面白くないな、と思って(笑)。それで赤を入れてみたり、次に紫を入れてみたり、とかね。まずはそこからでしたね。それからだんだん、仕様のパターンを増やしていったり、作ることのできる幅を広げて、よりお客さんの要望に答えられる仕組み作りを目指していきました。だってそっちの方が面白いでしょ?
ーーなるほど。ちなみに、横山さんが仰る「幅」というのは、どういうことなんでしょうか?
横山さん:形や仕様であれば、ほぼ無限に作れます。たとえば、襟の形って何十種類もあるんだけど、お客様の要望が「世界で見たこともない襟の形」の場合であっても、型紙から作れちゃいます。もちろん、ポケットの位置や形、カフス、前立て、切り返し、ボタン、着丈だって自由にオーダーいただけるんですよ。サイジングはお客様だけのサイズでお作りするので、腕の長さが左右違う人であれば、そのサイズに合わせて左右の袖の長さを変えてお作りできますし。だから、オーダーメイドの幅というか、可能性。そういう楽しさがこれからの時代、面白いなと思ったんです。
ーーでも現場の方は大変そう…。
横山さん:いやいや、逆に現場だって、毎日同じ色だったり仕様をしていても面白くないと思ったんですよ。僕だったら100枚同じのを作れって言われたら眠くなっちゃうもん。それに、今はクールビズ化も進んできたので、自分のオリジナルで作れるオーダーメイドシャツの可能性をすごく感じていて。だから幅を持っている強みがこの会社にはあると思っているんです。


2着で11,000円という、オーダーらしからぬお手頃感がすごい。
ーーでも1着1着をそこまでこだわって作ると、お値段が高そうですよね。
横山さん:2着で11,000円です。
ーーお手頃過ぎっす!(笑)
横山さん:まあ、それは、ある程度決まった型パターンの中でのお値段ですけど。今お話した襟の形、ポケットの位置や形、カフス、前立て、切り返し、ボタン、着丈の選択や調整はそのお値段の範囲内でできます。あとは刺繍だったり、型紙から考えないといけないような仕様だった場合は別途料金をいただいていますが、それでもプラス数千円です。
ーーまじっすか?それでも、めちゃくちゃお手頃だと思います!ていうか、これ、頼まない人いるんですか!?
横山さん:(笑)。知ってしまった人は、もうハマってしまう人がほとんどだと思いますね。生地だって「着物の生地で作ってくれ」って持ち込みで作ったこともありますし、その他の生地でもお受けしています。ウチでは毎回、海外で生地を直接仕入れて来ていますので、「トーマスメイソン」という世界一有名なシャツ生地も取り扱っています。さすがにこの生地でのご依頼の場合は1着11,000円となりますが、百貨店の相場では1着2~3万円なので、詳しい人は皆さん驚かれますね。
ーーほぼ、半額じゃないですか…。しかもオーダーメイドでいろいろこだわってデザインできる!
横山さん:そう、オーダーメイドってすごく幅があって面白いんですよ。僕たちもお客様が考えてオーダーしてくれるシャツに、すごく刺激をいただいていますし、面白いものは作っていてすごく面白いんですね。だから、お客様ご自身がブランドデザイナーになった気持ちでご依頼いただけると、すごく楽しいなと思っています。


お客様に「自分のシャツブランドを作るイメージ」で活用して欲しい。
ーー1着から作れるのであれば、ネット販売をやっている小規模なブランドさんとかも見本用としてオーダーできそうですね?
横山さん:もちろんです。1枚からOKなのでサンプル制作でも大丈夫ですし、受注生産としていただいてもいいと思います。それは、私たちの納期が「1DAY(別途料金)」から受け付けているので、ブランドさんがお客様から受注を受けてすぐウチに発注をいただければ、受注生産であっても、お客様をお待たせしないで商品をお届けできる仕組みもあります。
ーーえ、い、1日…?
横山さん:1着作るのに、最短2時間を切りますね。新幹線で東京に行くよりも超特急です(笑)
ーーすごいという言葉しか出てこない…。最後に今後の目標があればお聞かせください。
横山さん:そうですね、自社ブランドにも積極的に取り組んでいこうと思っていますが、何よりもまずは、「お客様自身のシャツブランドを作るイメージで私たちを使っていただける」そのことをもっと広めていきたいと思っています。シャツ作りってすごく面白いな、って感じてもらえると嬉しいですし、SNSなんかで気に入ったシャツを見つけて、「このシャツ作れますか」って感じでオーダーいただいても大丈夫です。「フェールムラカミって本当に何でもできるんだ!」って思ってもらえる会社でありたいですし、私たちも色々なものづくりに挑戦できると、刺激的で楽しいです。
――本日はありがとうございました!


株式会社フェールムラカミ
新潟県村上市坪根521番地6
0254-53-5811
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