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季節ごとの食材の味わいや美しさを楽しめる「日本料理 ひらの」。

昨年の秋、古町通9番町に「日本料理 ひらの」という小さなお店が開店しました。日本料理のお店と聞くと敷居が高くて入りにくいと思われるかもしれませんが、店主の平野さんは物腰の柔らかい方で緊張もほぐれます。そんな平野さんから、料理やお店のこだわりについてお話を聞いてきました。

 

 

日本料理 ひらの

平野 徹夫 Tetsuo Hirano

1972年新潟市秋葉区生まれ。東京の調理師専門学校を卒業。新潟のホテルや京都の老舗旅館で経験を積んだ後、ふたたび新潟に戻ってホテル併設の日本料理店で料理長を20年間務める。2022年10月に独立し「日本料理 ひらの」を開店。これからは山登りをはじめとしたアウトドアにチャレンジする予定。

 

料理人を志したきっかけは、ファミレスでのアルバイト。

——平野さんはいつ頃からお料理に興味を持ったんでしょうか?

平野さん:私は高校時代にファミリーレストランでアルバイトをしていて、そのとき料理をすることの楽しさに目覚めたんです。それで高校卒業と同時に、東京にある調理師専門学校へ進学しました。在学中にふぐ割烹のお店でアルバイトをして、そのときに盛りつけの美しさに感動したことがきっかけで、日本料理をやりたいと思うようになりました。

 

——じゃあ、卒業してからは日本料理のお仕事を?

平野さん:新潟に戻ってホテルの和食部門で働きました。当時はホテルウエディング全盛期だったので、とにかく忙しかったんです。でもたくさんいる先輩や同期に負けたくないという気持ちもあったので、少しでも多く仕事をもらえるよう、人よりも早く職場に入って自分の仕事を終わらせるようにしていましたね。

 

 

——頑張り屋さんなんですね。それじゃあ、上司に可愛がられたでしょう。

平野さん:おかげで先輩から京都の老舗旅館を紹介していただいて、修業させてもらえることになりました。包丁と着替えだけを持って京都に着いたら、そのまま旅館に連れて行かれて夕方まで仕事をすることになったんです(笑)

 

——いきなりですか(笑)。新潟のホテルと京都の旅館では仕事のやり方も違うと思いますけど、戸惑うこともあったんじゃないですか?

平野さん:厨房内では下駄履きを勧められたんですけど、履き慣れなくて仕事にならなかったので、自分で買ってきたゴム長を履いて仕事をしていました。あと最初は関西弁がよく聞き取れないこともあって苦労しましたね(笑)

 

——修業は厳しかったですか?

平野さん:新潟でやってきたこととのレベルの違いを思い知らされましたね。「焼き方」のポジションで働きはじめたものの、あまりに仕事ができなかったので1日で降格させられてしまったんです。だからそれまでの経験は忘れて、最初から修業をはじめるつもりで頑張りましたね。

 

 

——あらら……。それは厳しいですね。

平野さん:忙しい上に料理人が少ない職場だったので、繁忙期の秋から正月明けまでは休みがもらえなかったんです。休みがもらえても前日に告げられるから、なかなか予定が入れられないんですよね。あと調理場の上で寝泊まりしていたんですけど、そこは料理人の休憩所にもなっていたんです。自分が非番の日でも親方と顔を合わせるから、休んだ気がしなかったですね(笑)

 

——プライベートがないですね(笑)。そんなに厳しい修業のなかで、どんなことが勉強になりました?

平野さん:旬の食材を使った季節感の表現や、器について学ばせていただきましたが、いちばん大きかったのは料理に取り組む姿勢だったように思います。

 

——厳しいだけに学びも多かったんですね。その後は新潟に帰ってきたんですか?

平野さん:はい、最初に勤めていたホテルのなかにある日本料理店で料理長を務めさせていただきました。教えることが苦手なので、人を育てる難しさを感じましたね。スタッフに休みをあげたいけど、忙しくてなかなか休ませてあげられないというジレンマもありました。

 

食材にこだわり、持ち味を引き出すための工夫。

——独立して「日本料理 ひらの」を開店されたいきさつを教えてください。

平野さん:ホテルや旅館の料理人って、自分の作った料理を食べているお客様の姿を見る機会がほとんどないんですよね。だからお客様の顔を見ながら料理が作れるよう、小さなカウンターだけのお店をはじめたんです。お客様にも料理を作る様子を楽しんでいただけたらと思っています。

 

——お料理は平野さんおひとりで作っているんでしょうか?

平野さん:料理だけではなくて接客サービスに至るまで、基本はひとりでやっています。何しろ料理ひと筋でやってきてサービスはまったくやったことがなかったので、ドリンクの出し方やお会計の対応がぎこちなくて、お客様にご迷惑をお掛けすることもしばしばなんです。料理よりも苦戦していますね(笑)

 

 

——まさか、すべてひとりでやっているとは(笑)。お話をお料理に移しまして、こだわりをお聞きしたいと思います。

平野さん:いちばんこだわっているのはお出汁です。まぐろ節とかつお節、そして利尻昆布を多めに使ったお出汁は、あっさりした親しみやすい味で食材を引き立ててくれます。食材にもこだわっていて、旬の美味しい食材から持ち味を引き出す料理を心がけるようにしています。そのため食材同士の組み合わせにも気を使っていますね。お互いの味が引き立つよう、組み合わせを考えるのは楽しいです。

 

——他にも食材の持ち味を引き出すための工夫をされているんでしょうか?

平野さん:焼き物は厳選した備長炭を使うことでふっくら焼き上げるようにしていますし、炭の香りも楽しんでいただけると思いますね。あとこだわり抜いた浄水器を使っていますので、料理に使うお水にも自信があります。そのお水を使って土鍋で炊き上げる魚沼産コシヒカリは、お客様にもご好評をいただいているんですよ。

 

 

——夜だけではなく、昼もお食事を楽しむことができるんでしょうか。

平野さん:土曜は昼のご予約もお受けしています。茶懐石に近いイメージで、お食事の後にはお茶を点てさせていただいて、京都仕込みのわらび餅と一緒にお楽しみいただけるんです。夜は3種類のコースからお選びいただけますが、すべて2日前までの完全予約制でお願いしています。

 

——どうして完全予約制に?

平野さん:しっかりしたお料理を楽しんでいただくためにも、手間をかけた仕込みをしたいと思っています。面倒をおかけしますが、ご理解いただけるとありがたいです。

 

——食材をベストな状態で使いたいという思いもあるんでしょうね。それにしても、お料理のビジュアルが映えますね。

平野さん:お料理の盛り付けはもちろん、器にもこだわっていますので、見た目でも季節感を楽しんでいただけたら嬉しいですね。

 

 

——盛り付けの美しさは、平野さんが日本料理に惹かれた原点ですもんね。これから新しくやってみようと思っていることはあるんでしょうか。

平野さん:ご家庭でも気軽に専門店の日本料理が味わえる、お持ち帰りのお弁当を6月頃からはじめようと思っています。ぜひご利用いただきたいです。

 

 

 

日本料理 ひらの

新潟市中央区古町通9番町1478

025-201-7829

18:30-22:00、土曜12:00-15:00/19:00-22:30(完全予約制)

日月曜祝日休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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