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本格的な牡蠣料理やふぐ料理が食べられる、古町の老舗和食店「かき忠」。

老舗割烹が多く集まる古町9番町。そのなかで牡蠣料理とふぐ料理を看板に長く親しまれてきたのが、お座敷割烹の「かき正」と和食店「かき忠」です。今回は3代目店主の橋本さんを訪ね、お店の歴史やこだわりについてお話を聞いてきました。

 

 

かき忠

橋本 宏 Hiroshi Hashimoto

1962年加茂市生まれ。法政大学工学部を卒業。東京の和食店で京料理の修業をし、1987年に新潟に戻り家業の「かき正」「かき忠」で働きはじめる。現在は3代目店主。古町の飲食店巡りが趣味で、古町活性化アイドルユニット「RYUTist」を応援している。

 

お座敷割烹がはじめた和食店。

——こちらは「かき正」と「かき忠」の2店舗を営まれていますけど、どちらが先に創業したんですか?

橋本さん:まず昭和8年に「かき正」が創業しました。広島出身の祖父が新潟にやってきて牡蠣料理の専門店をはじめたんですが、当時の新潟では牡蠣料理がまだ珍しかったこともあって相当流行ったようです。その後はお座敷割烹として、宴席などにご利用いただいてきました。

 

——戦前から続いてきた老舗なんですね。もうひとつの「かき忠」はいつ頃から?

橋本さん:昭和40年に創業しました。当時の古町には気軽に食事できるようなお店がまだ少なかったので、お昼どきに定食をはじめてみたらめちゃめちゃ流行って、当時は接客スタッフが何人もいたそうです。

 

 

——「かき正」はお座敷割烹、「かき忠」は和食店なんですね。橋本さんは昔からお店を継ぐつもりで?

橋本さん:子どもの頃から「かき忠」の広い調理場を遊び場にして育って、調理台でピンポンしたりしていましたからね(笑)。知らず知らず、そういう気持ちはあったのかもしれません。

 

——じゃあ、学校を卒業してすぐに「かき忠」で働きはじめたんでしょうか。

橋本さん:若いときって、いろいろやってみたいじゃないですか。だから東京にある法政大学の工学部に入ったんですよ。でも所属していた航空部でグライダーにハマってしまって、すっかり勉強がおろそかになってしまったんです(笑)。その結果、やりたい仕事に就くことができなくて、親戚の紹介で京料理の和食店で働くことになりました。

 

——和食の仕事をする運命だったんですね(笑)。修業はきつかったですか?

橋本さん:朝から晩まで昼休みもなく働き続けていましたけど、若いときって頑張れるんですよね。今だったら絶対できないけどね(笑)

 

牡蠣料理やふぐ料理のこだわり。

——「かき忠」で人気があるのはどんなお料理なんですか?

橋本さん:冬期メニューの牡蠣フライと、ふぐのコース料理ですね。どちらも本格的なものって、なかなか新潟市内では食べられないんじゃないかと思います。

 

——牡蠣フライって、いつ頃まで食べられるんでしょうか。

橋本さん:以前は広島産の牡蠣だけを使っていたので、3月までしか提供できなかったんです。ところが7〜8年前からは佐渡の加茂湖で獲れる牡蠣も使うようになったので、今では6月半ばまで提供できるようになりました。ずっと広島産にこだわっていたんですけど、あるきっかけで佐渡産の牡蠣を食べてみたら、思っていたより美味しかったんですよ。

 

 

——お客さんにとっては嬉しい話ですね。牡蠣料理に加えて、ふぐも提供されるようになったのはどんなきっかけで?

橋本さん:いつからかわからないんですけど、広島の牡蠣業者さんから下関のふぐ業者さんを紹介していただいてはじめました。最初は下関からふぐ料理の職人さんを呼んで、処理の仕方を教わったそうです。普段は「身欠き」といって捌かれた状態で入ってくるんですけど、3月頃の産卵期には新潟沖でも漁があり、活き〆で仕入れることもあります。

 

——ふぐの調理って難しいイメージがありますけど……。

橋本さん:当たり前のことをきちんとやっていれば、難しいということもないですよ。細かいことまで手を抜かず、きちんとやるよう心がけています。特に最近はすぐSNSに写真が投稿されますからね(笑)。どんなお料理でも丁寧に、盛り付けまで気を使うようにしています。

 

——お客さんにはどんな方が多いんでしょうか?

橋本さん:最近はサラリーマンが減って、女性のお客様が増えましたね。土曜には行列ができることもあります。私は古町活性化アイドルユニット「RYUTist」を応援しているので、同じようなファンの方が県外から来てくれることも多いんです。

 

古町の活性化に、少しでも貢献したい。

——「RYUTist」を応援されているんですね。

橋本さん:きっかけは3rdアルバムの「古町芸妓」でした。お座敷をやっていることもあって、古町芸妓さんともお付き合いしているので、このアルバムに興味を持って聴いてみたんです。どの楽曲もよくできていて衝撃を受けたので、今度はホームライブを観に行ったんです。そしたら、歌はもちろんダンスも素晴らしくて一気にハマってしまいました(笑)

 

——「RYUTist」は「Things」でも紹介したことがあるんですよ。

橋本さん:そうなんですね。うちの店にもメンバーがプライベートで食べに来てくれたり、スタッフさんが県外のお客様を連れて来てくれたりするんです。本当にありがたいですね。

 

 

——そういうつながりも、ローカルアイドルならではですね。

橋本さん:「RYUTist」は古町を活性化する目的で活動しているので、そんなところにも共感できるんだと思います。私も古町を盛り上げたい気持ちは強いんですけど、数人で動いてもなかなか変わるもんじゃないですからね……。せめて自分のお店で集客することができれば、少しでも古町に人を呼べるのかなと思っています。

 

——なるほど。では最後に、今後の意気込みをお聞きしたいと思います。

橋本さん:古町で100年近くお店を続けてこられたのは、本当にありがたいことだと思っています。私は毎日同じことをやっているんですけど、そのなかで日々新しい発見があるんですよね。これからも、そうした発見を大事にしながらお店を続けていきたいと思っています。

 

 

 

かき忠

新潟市中央区東堀通9番町1407

025-229-1818

11:30-14:00/16:30-22:00

日曜祝日休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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