伝統的な染めや織りを生かし、和モダンをコンセプトとしたものづくりを行っている「水田株式会社」。麻・綿などの天然素材を用いた商品作りや、自社染織工房による手仕事にこだわっています。代表取締役の黒崎愛子さんと取締役常務の公博さんにいろいろとお話を聞いてきました。
水田株式会社
黒崎 愛子 Aiko Kurosaki
1977年生まれ。小千谷市出身。2代目代表取締役社長。趣味はキャンプ。
水田株式会社
黒崎 公博 Tomohiro Kurosaki
1980年生まれ。横浜市出身。取締役常務/生産管理部 染色加工。趣味はロードバイクで大会にも参加している。
――会社の創業はいつになりますか?
愛子さん:1977年創業で、もともとは糸の商社として運営していました。この辺りの地域は平安時代から織物が盛んで、いろいろな織元さんとのつながりがありました。そのつながりから、糸の商社だけにはとどまらない、織物を使用した商品企画や販売をはじめることになるんです。
――小千谷縮の産地でもありますよね?
愛子さん:江戸時代に堀次郎将俊(ほりじろうまさとし)が、夏の布を改良するために平らの生地をシワ加工し、より涼しく着られるものを生み出しました。これが小千谷縮の発祥で今も続いています。当社での取扱いがはじまったのは20年くらい前からだと思います。
――愛子さんが入社されたのは?
愛子さん:約9年前になります。それまでは東京で保育の仕事をしていたんですけど、結婚のタイミングが分岐点になりました。現会長である父親から後継者がいないからいずれ会社をたたむと話を聞いたときに、もったいないって思ったのもありますね。せっかくだったら生まれ育った小千谷に戻ってきて会社を手伝いながら、子どもをのびのび育てるのもいいなと思うようになりました。
――公博さんはこちらにくる前は何をやられていたんですか?
公博さん:私は東京でアパレル関係の仕事に就いていて、販売やお店のPRなどを担当していました。妻の実家がこういう仕事をしているのを知ってからずっと興味を持っていました。アパレルと共通する部分もいろいろあるなと感じていましたし、長期休みに妻の実家に来て工場など見て、布の染織にさらに興味を持つようになりました。結婚がよいきっかけになって移り住んだ感じになりますね。
――入社されたときの印象とかって覚えていますか?
愛子さん:営業に関してとても積極的な会社だなという印象は受けました。大手からの大きな受注だけで成り立っているわけではなく、ホテル、旅館、卸売、商社、通販などいろんな取引先さんがあるなと改めて思いました。それぞれのお客様に合った商品提案や営業形態があるので、大変さはあるんですけど、うちの父親が頑張って開拓してきたんだなと実感しました。入社当初はそこが大変だった部分でもありますけど、他社さんとは違う当社ならではの強みなのかなと思います。
――かなり幅広い取引先ですね。
愛子さん:なので取り扱う商品も常に変化しています。時代に合わせた商品だったり、商品が変われば販売方法もまた変わってきますね。特注での色指定のお仕事を受けたり、かなり柔軟に対応しています。こういうことをやることで技術も高まって、価値を見出してくれるお客さんがいるんだと思います。できるだけ要望に応えようっていうのは常に根底にありますね。おかげでかなり商品量が多くなってますけど(笑)
――公博さんはどうですか?
公博さん:私は入ってからすぐ染織をしたわけではなく、最初はお客さんのところに出向いて営業をしていました。商品の多さに驚きましたけど、でも逆にいうと「なんでもできるんだな」っていうのがだんだん分かってきましたね。
――入社当時と今とで変わってきているところはありますか?
公博さん:当時からのれんやタペストリーが中心の商品になっていたので、商品のラインナップ的にはそこまで大きく違いはないです。ただ販売方法は大きく変わってきていて、旅館、レストランからの特注オーダーの商品が何倍にも増えています。
愛子さん:特注の1点ものというのはここ5年間くらい特に力を入れて掘り下げてきました。自社に染織工房があるので、これを強みとして活かせるのはオーダー受注なんじゃないかと思ったんです。ネット販売のシステムも構築したり、職人も増やしました。天然素材にこだわって、昔ながらの素材や染織方法でやるという強みを押し出していきたいですね。
――自社染織工房の強みを活かした営業に力を入れてきたと。
公博さん:今はデジタルプリントでやろうと思えば手軽な値段で簡単にできてしまうけど、やっぱり手作業っていうところにはこだわってやっていきたいですね。
愛子さん:例えばのれんにしても、平面だと分かりづらいんですけど、手作業で染めたものは実際の空間にかけてみると本当に素材の素晴らしさや染織の奥行き感が伝わってきます。そういった魅力は繊細な手作業からしか生み出すことができないですね。
――のれんて両面染めているんですか?
公博さん:のれんはどちら側からも人が見ることになるので、両面をしっかりと染めているんです。こういったところはデジタルではむずかしいと思いますし、手作業ならではかなと思います。表裏同じ工程を踏んで色をつけているんです。
愛子さん:あと当社では伝統的な和ではあるけど、ちょっとモダンさをいれるような工夫をしています。和でも洋でも合うようなラインを企画して、今の暮らしに合ったものになるように意識しています。着物を着ている人だけをターゲットにするのではなく、現代の生活に溶け込むようなものが作れたらいいなと思っています。これは一見すると伝統を重んじていないように見られるかもしれないですけど、現代に合わせるというのは逆に伝統を守ることにつながるのかなと思っています。まずは使ってもらわないと何も伝わらないですし、どんなかたちにせよ、受け継いだ技術を活かしていいものや暮らしに合ったものを作っていくというのは大事にしています。
――今後の目標は?
愛子さん:創業者である現会長はひとつのことにこだわらないんですよ。いろんなことに挑戦して積極的にやっていこうという会社なので、しっかりと今の暮らしに合わせながら上質なものを提供していきたいですね。会長は「温故知新」という言葉をよく使います。よいものは続けていきながら、いかに今を取りいれていけるかっていうところで、お客様のニーズにアンテナを張っていきたいと思っています。これからも老若男女問わず、いろんな方に商品を届けたいですね。
――それは楽しみです。
愛子さん:当社では工場併設の直営ショップ「布ギャラリー」を運営しております。麻のインテリア用品から手軽なお土産品まで雑貨小物類も充実しておりますので、小千谷にお越しの際はぜひお立ち寄りください。
水田株式会社
TEL : 0258-82-3213
営業時間: 10:00~17:00