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古い建物の歴史を今につなぐ、1日1組限定の民泊「OTONARI」。

ノスタルジックな街並みが残る新潟市下町エリアに「OTONARI」という民泊施設があります。登録有形文化財である築150年ほどの蔵と隣接の民家がひとつになった建物からは、懐かしさと新しさの両方が感じられます。今回はオーナーの髙須さんご夫婦に、建物の歴史や民泊をはじめたきっかけなどいろいろとお話を聞いてきました。

 

OTONARI

髙須 雅史 Masashi Takasu

1982年長岡市生まれ。新潟薬科大学を卒業後、薬剤師として働きながら2020年に「OTONARI」をオープン。古い建物を守るため、町おこし活動にも積極的に取り組んでいる。

 

OTONARI

髙須 真理 Mari Takasu

1984年長岡市生まれ。専門学校を卒業後、歯科医院と飲食店に勤務。3人の息子を持つママさんで、子どもたちのスケジュール管理にも大忙し。

 

祖父母の家で暮らしはじめ、建物の歴史と重みに関心を持つ。

——こちらの建物には、ずいぶん歴史があるそうですね。

雅史さん:母方の祖父母が代々所有していた蔵と空き家だった民家を自分たちでリフォームして、2軒をつなげて造った建物が「OTONARI」です。蔵は150年ほど前に建てられたもので、国の登録有形文化財でもあります。

 

——懐かしさもあるけど、今どきのおしゃれな感じもする素敵な建物です。

雅史さん:ありがとうございます(笑)。妻のセンスが内装やインテリアに生きています。

 

——どうして民泊をはじめようと思われたんでしょう?

雅史さん:12年前から古い建物を大切にするための地域活動に取り組んできました。なので「民泊をやりたい」というより、歴史のある建物を大切にする方法を考えていたんです。最初はゲストハウスをやろうと思って、この近くで何軒か物件探しをしました。買い取る直前まで話が進んだこともあったんですけど、なかなかうまくいかなくて。そんなとき、空き家だった蔵の隣のお家が売り出されていて。休みの日にそれを知って、慌てて不動産屋さんに交渉して隣のお家を買い取ったんです。そこから民家と蔵をつなげて民泊をはじめられないかと考えるようになりました。

 

真理さん:以前から蔵を活用して何かできないかと考えてはいました。カフェみたいな飲食店にしようか、ギャラリーとして貸し出そうかとアイディアはいくつかあったんですが、実現できずに何年も過ぎてしまって。そしたらある日、夫がお隣さんの家を「買っちゃった」と言うんですよ。本当に驚きました(笑)

 

 

——それで以前からの構想が具体的になったわけですね。でも雅史さん、どうして古い建物に興味を持つようになったんですか?

雅史さん:大学に入学するとき、祖父母の家が空き家になるから家賃なしで住めるというので引っ越してきました。今では妻と3人の息子と暮らしています。住みはじめたばかりの頃は、寒いし嫌だったんですよ。でも住んでいるとちょっとずつ愛着が湧いてくるんですよね。蔵に保管されているいろいろなものを整理すると、昔の写真が見つかったり、大切にされていたんだろうなってものが出てきたりして。そんな中で自分も結婚して、妻を迎えて子どもも授かってって、すごく貴重な体験をしていると思うようになったんです。ここで代々暮らしてきたご先祖さまと同じように自分も暮らしているってことが誇らしくなって。それで、古くからある建物を大切にする活動に興味を持ったんです。

 

——なるほど。確かに重みがありますね。

雅史さん:そういう視点に立ってみると、周りに残っている古民家も私と同じような思いで残されているんじゃないかと思えてきました。ちょうどすぐ近くに「旧小澤家住宅」という観光施設があって、新潟大学の学生さんが連携して下町エリアを元気にするための活動をしていたんです。そこでの出会いもきっかけになって、地域団体を作って町おこしをはじめました。

 

宿泊は1日1組のみ。周りを気にせずのんびりできる。

——建物は自分たちでリノベーションされたそうですね。

雅史さん:学生さんやいろいろな人に協力してもらって2年がかりでリフォームしました。「OTONARI」の宣伝をする狙いもありましたけど、僕自身が建物を生まれ変わらせる過程に興味があったんです。

 

——宿泊は1日1組限定なんですよね。

真理さん:我が家もそうですけど、子どもが小さいと他のお客さまを気遣いながらホテルや旅館で過ごすって、けっこう大変なんですよね。結局、親御さんは旅先でゆっくりできず疲れちゃう。そうならないように、1日1組限定にして親御さんもお子さんものんびり過ごしてもらおうと思ったんです。

 

雅史さん:民泊をはじめると決めてから、何箇所か民泊施設に遊びに行ったんですよ。便利だし気を遣わずに過ごせるからすごく良い時間になりました。来ていただいた方には、各々好きなように楽しんでもらいたいと思っています。

 

 

——県外からの利用者が多いですか?

雅史さん:県外からのお客さま方ももちろんいらっしゃいますけど、市内にお住いの方のご利用も多いですよ。誕生日会を開催するとか、お友達が来るからここでもてなすとか。ワーケーションでのご利用もありますね。

 

——「OTONARI」のおすすめの楽しみ方を教えてください。

真理さん:寝室がふたつあるので、いろいろなニーズに応えられると思っています。寝るタイミングが違っても気にせずにいられますし、お子さんを早く寝かせて親御さんはリビングでお酒を楽しむなんて過ごし方もできますよ。

 

雅史さん:添い寝はカウントせずに最大6名まで宿泊していただけます。6名で泊まるにしてもスペースにはゆとりがあるし、大勢で宿泊するほど利便性は高いと思います。(7名以上宿泊の場合は要相談)

 

人情と風情の町、新潟市下町エリアに思いを込めて。

——「OTONARI」さんがある下町エリアってすごく風情がありますよね。

雅史さん:古くからある街なので、ノスタルジックな雰囲気がありますよね。地元の人だけ行くようないい感じのお店も多いんですよ。そういうお店も含めて周辺スポットを紹介する地図を置いてあるので、皆さんそれを参考に散策されます。古くからの街並みを肌で感じられるところも「OTONARI」に宿泊する楽しみになっているのかな。

 

 

——雅史さんは「OTONARI」さんを運用する上で大切にしている思いがあるそうですね。

雅史さん:「古い建物には集客力がある、魅力がある」と伝えていくために、しっかり収益を出すことにこだわろうと最初から決めていました。そうでないと次につながらないじゃないですか。「自己満足で運営しているんじゃない。空き家が存続するきっかけになる事業なんだ」と日々思いながら取り組んでいます。

 

——これからもおふたりの思いが波及していくと良いですね。

雅史さん:今は経営面でも順調なので、今後は別の店舗も展開したいと思っています。店舗を新しく設けられたら周りへの説得力も増すでしょうから。そして新たな仲間ができると嬉しいですよね。下町エリアに誰かが来てくれると、この街がもっと元気になると思うんです。

 

 

 

OTONARI

新潟市中央区上大川前通12-2723-4

TEL 080-7318-5245(9:00~17:00)

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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