魚沼にお店を構える「que da uno(ケダウノ)」は、この地域で唯一、スペイン料理を提供しているレストランです。今回はオーナーの磯部さんに、魚沼だからこそのスペイン料理、どんなキッカケで料理人を志したのかなど、いろいろとお話を聞いてきました。
que da uno
磯部 晃伸 Akinobu Isobe
1987年魚沼市生まれ。小千谷高校卒業後、上京して六本木にあるバー「HEARTLAND」でバーテンダーとして勤める。スペイン料理店に移動になり、そこで料理とサービスを6年間学び、2016年に地元である魚沼に戻り独立。趣味は子どもとキックボクシング。
――磯部さんは、どんなキッカケで料理人を目指したんですか?
磯部さん:高校生のとき、フジロックに出店していたキッチンカーでアルバイトをしました。働きながら、ふと「このキッチンカーをやっている人って、このフェスが終わったらどうするんだろう」と疑問に思って、質問してみたんです。そうしたら、「この仕事が終わったら、沖縄でも行こうかな」って。その答えを聞いた瞬間、飲食業って自由なんだと感じて、将来は飲食店をやろうと決めました。
――それは本当にかなり自由な人だったんですね(笑)。じゃあ、高校を卒業してからは飲食業の道に?
磯部さん:そうですね。専門学校も考えたんですけど、現場の方が学べることが多いと思って、六本木にある「HEARTLAND(ハートランド)」というバーで働きはじめました。本来であればなかなか働けない場所なんだけど、支配人が僕と同じ小千谷高校の出身という縁もあったし、リニューアルのタイミングも重なって、たまたま働くことができたんです(笑)
――六本木……大人の街ですね。やっぱり業界人とか多いんですか?
磯部さん:業界人かどうかは分からないけれど、お客さんの80%は外国人でしたね。
――80%って……ほとんどが外国人じゃないですか。
磯部さん:まぁ、そんなところも「HEARTLAND」を選んだ理由なんですけどね。お酒の作り方はもちろん、インターナショナルな接客やサービスも学べますから。
――バーで経験を積んだ後は、どうされたんですか?
磯部さん:先輩たちから「料理も作れた方がいい」とアドバイスをもらって、同じ系列のスペイン料理店に異動させてもらいました。ただ、当時の僕にとって料理って、具材をザクザクと切って炒めて食べるという、一人暮らしの男子の料理レベルだったから、めちゃくちゃ大変でした(笑)
――えー。大丈夫だったんですか?
磯部さん:見て覚えろという昔ながらのスタイルだったんですけど、うざがられるくらいに質問をして、どうにか頑張りました。作るのであれば失敗したくなかったし、何時間もかけて仕込んだ具材を無駄にするわけにもいかないですからね。
――ちなみに、先輩たちは厳しかったんですか?
磯部さん:主に魚の血合いを掃除したり、野菜を切って仕込んだりしていたんですけど、営業中の圧は凄かったです(笑)。でも、揉みに揉まれて、どうにか一人前に成長できたから、いい時間を積み上げられたのかなって思います。
――それでは、「que da uno」について詳しく教えてください。今更なんですけど……これって何て読むんですか? スペイン語?
磯部さん:読めないですよね(笑)。これは「ケダウノ」と読みます。スペイン語で「残り1個」という意味なんです。何でも最初にやることに意味があると思っていて、その最初の席って常に「残り1個」じゃないですか。魚沼で初めてスペイン料理店を出店することもあったので、この言葉を店名にしました。
――初めてスペイン料理がやってきて、魚沼の人たちはどんなリアクションをしていましたか?
磯部さん:初めは「刺身ないの?」「日本酒は?」という声が多くて、お店としての印象は良くなかったと思います。でも、実際に食べてもらうことで「こんな料理があるんだ」「こんな食べ方があるんだ」と驚きと発見を感じてもらえて、今では地元の人たちにも喜んでもらえていますね。
――おお、それはいい流れですね。料理に魚沼らしさとか、何かこだわりがあったら教えてください。
磯部さん:魚沼って、特産になっていないだけでいろんな野菜が年間を通して収穫されているんですよ。だから、その地元食材をスペイン料理に落とし込んで、魚沼らしいスペイン料理に仕上げています。
――ふむふむ。
磯部さん:地元食材をたくさん使うことで、普段食べ慣れていないスペイン料理が魚沼の人たちにとって身近な存在になるし、逆に地元以外の人たちには、スペイン料理を通じて魚沼の豊かな食材を知ってもらえます。そんな場所として、この店をそれぞれに楽しんでもらえたらいいですよね。
que da uno
魚沼市小出島98
025-793-7626