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田園風景を見渡せるのどかなカフェ「椎谷Coffee」。

高校時代からの夢を叶えた、ある男の物語。

「飲食店をやってみたい」という夢を追いかけ、さまざまな経験を積んだのち、終着地点として2019年にカフェ「椎谷Coffee」を開いた椎谷さん。夢を叶えるためにどのような人生を歩んできたのか。どうして田園風景が広がるこの場所を選んだのか。ほっこりした人柄の椎谷さんに、いろいろとお話を聞いてきました。

 

椎谷Coffee

椎谷忠司 Tadashi Shiiya

1974年新潟生まれ。デザイン専門学校卒業。手描きの看板屋に就職。30代を節目に飲食店にて本格的な修行をスタート。2019年「椎谷Coffee」をオープン。パステル画を得意とする。

 

デザインと飲食業。年代を区切った人生設計。

――椎谷さんは、どのようなキッカケで飲食店に興味を持たれたのですか?

椎谷さん:実家が米農家をしていて、作業時期になると地域の人たちが集まるんです。小学校高学年の時に、チャーハンを作ったら喜ばれて。それから興味が湧きましたね。小さな頃から料理をすることは日常だったので、こんなに「おいしい」って喜んでくれるなら仕事にしたいなと、なんとなく思いました。

 

――家族ではなく、地域の人に喜んでもらえると、違った嬉しさがありますよね。

椎谷さん:そうなんですよね。高校時代には「将来は飲食店をするんだ」と声に出していましたが、絵を描くことも好きで。自分の店をやる時に看板とか描けたらいいかもって思い、高校を卒業後はデザイン専門学校へ進みました。

 

――看板といえば手描きの時代もありましたね。

椎谷さん:今ではほとんど見なくなりましたよね(笑)。卒業後は、まず絵を仕事にしようと決めて、手描きの看板屋に就職したんです。店舗看板やアルビレックスの企業看板など、いろいろと描かせてもらい。ただ、その仕事は20代までと決めていました。

 

 

――20代までというのは、どうしてですか?

椎谷さん:20代までは絵を学び、仕事としてやり切ろうと思って。30代からはしっかりと将来に向けて飲食業を学ぶと決めていました。なので、本格的に飲食店をオープンするための修行や準備は30代からなんです。

 

――しっかりとした人生設計をされていますね。昔の僕に教えてあげたいです(笑)。飲食業のスタートはどうされたんですか?

椎谷さん:まずは接客を学ぶために、あえてアパレルショップを選びました。お客さんとの会話や、ちょっとした気遣いなどを学べて、そのときの経験は今とても役立っています。その後は調理師免許を取るためもあって、居酒屋へ。ホールもしながら、実際に調理経験を学びました。学校給食を作る会社で、決められた時間内に安全でおいしい食事を段取りよく作るスキームを習得したり、徐々に準備が整いはじめました。

 

日常から結びついたカフェの存在は、一杯のコーヒーから。

――ここまでのお話では、カフェの存在がまったく出てきませんね。椎谷さんは、どうしてカフェを?

椎谷さん:「飲食店をしたい」とはずっと思っていましたが、このジャンルといったものはなかったんです。ただ、休日にカフェに行くことは日常で。ある時、コーヒーを飲んでいて気が付いたんですよね。カフェも飲食店だって。灯台下暗しってやつですね(笑)。それで気づいたらコーヒーの専門会社「鈴木コーヒー」へメールをしていたんです。手が勝手に。「カフェをやりたいです。学ばせてもらえないか」と。

 

――日常からの気づきで今があるんですね。それで「鈴木コーヒー」からレスポンスはありましたか?

椎谷さん:月に1回、セミナーを開催してもらえることになりました。1年半の間、プロからマンツーマンでびっちりとコーヒーについて、カフェについてを学ばせてもらいました。その時の先生が本当に楽しそうにコーヒーを語るんです。それでコーヒーはおいしいだけでなく、人をハッピーな気持ちにさせてくれるんだと思いましたね。

 

――その先生は、本当にコーヒーが好きなんですね。「椎谷Coffee」では、自家焙煎をされていますね。それも楽しかったからですか?

椎谷さん:焙煎セミナーを体験したんです。その時はおいしかったんですけど、いざ、自分で焙煎してみたらおいしくなくて(笑)。どうしたらおいしくなるのか、試行錯誤を繰り返していたら楽しくなってしまい、焙煎の沼にハマってしまいましたね。それで自分で焙煎したコーヒー豆を使おうって決めたんですよ。

 

「椎谷Coffee」のアレコレ。焙煎と地域の方への思い。

――焙煎は毎日されるのですか?

椎谷さん:基本的に毎日です。朝、晩の2回、だいたい4~5時間程度が焙煎時間になります。1回の焙煎で40分くらい、数種類の豆を焙煎するので意外と時間がかかりますね。

 

――思っていたよりも長時間ですね。やっぱり焙煎って、奥が深いですか?

椎谷さん:うん、かなり奥が深いですね。多分、掘っても掘ってもゴールにはたどり着けないと思います。でも、それが楽しいんですよ。自分の思っているコーヒー豆の味がでない、正解がない。そんなことを追求していくのって、なんかロマンがあるじゃないですか?

 

――未知なる冒険って感じですね。「椎谷Coffee」では、常時何種類のコーヒーが楽しめますか?

椎谷さん:いろいろな豆を知ってもらい、味の違いを感じてもらいたいので、基本的には常時5種類のコーヒーを用意しています。ちなみに地域の方が好んで飲まれるのはブラジルのコーヒー豆なんですよ。個人的には華やかさのあるケニアも好きなんですけどね。

 

 

――5種類もあるんですね。地域の方はよく来店されますか?

椎谷さん:ご覧いただいた通り、「椎谷Coffee」は目の前が開けた田んぼになっています。近所で農作業をされていた方が休憩に来たり、年配の方も散歩がてら来てくれるんです。

 

――目の前の田園風景は圧巻ですよね。ただ、ちょっとわかりにくい場所だと思います。どうしてこの場所を選んだんですか?

椎谷さん:米農家ということもあり、地域の人たちとの交流が当たり前の環境で育ちました。作業の休み時間には、みんなでワイワイとお茶を飲んだり。そんなんで、ちょっとした憩いの場になれればと思い、田園風景を見渡せるこの場所を選びました。ずっと見てきた景色だからこそ、わかりにくい場所でも、たくさんの人にこの新潟ならではの田園風景とコーヒーを届けたいなって。

 

インタビューから知った、偶然の出会い。

椎谷さんが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、和やかに進んでいったインタビュー。コーヒーをとても楽しいものだと教えてくれた「鈴木コーヒー」の先生の話に、ちょっとだけ、もしかしてと引っかかることがありました。「その先生、もしかして星野さんでは?」とうかがうと、なんと大正解。以前にThingsでインタビューをさせてもらった「ホシノテラス」の星野さんでした。驚き。どことなく椎谷さんの雰囲気や、コーヒーに対する思いがリンクすることもあり、さらに納得。これからも、コーヒー愛に溢れる方が増えていってくれると、新潟のカフェはもっと楽しくなりますね。

 

 

 

椎谷Coffee

新潟県新潟市中権寺2330

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