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食材を大切に使った蕎麦や料理が味わえる「蕎麦佳肴 五常」。

新潟駅南口から徒歩数分のところに佇む、隠れ家のようなお店「蕎麦佳肴 五常(ソバカコウ ゴジョウ)」。県外の和食店で修業を重ねたご主人が、5年前にはじめました。いったいどんなこだわりを持って料理と向き合っているのか、店主の金子さんに聞いてきました。

 

 

蕎麦佳肴 五常

金子 真太郎 Shintaro Kaneko

1992年埼玉県生まれ阿賀町育ち。埼玉、北海道、京都の和食店で日本料理を中心に学ぶ。その後新潟に戻り、2017年に「蕎麦佳肴 五常」を開業。映画鑑賞が趣味でゾンビ映画が好き。

 

ちょっと意外な、日本料理の道に進んだ理由。

——金子さんが料理に興味を持ったのはいつからなんですか?

金子さん:両親が津川で蕎麦屋をやっていたんです。その姿を見ながら育ったので、自然と料理の仕事に興味を持つようになりました。僕の通っていた高校は進学校だったので、ほとんどが大学進学を選びましたが、僕は断固として埼玉の寿司割烹に就職したんです。

 

 

——強い意思を感じますね。でも、数ある料理のなかから日本料理の道に進んだのは?

金子さん:若い頃は海外で暮らすのが夢だったんです。でも料理の仕事をするときにフレンチやイタリアンでは本場の料理人には勝てないので、日本料理だったら武器にできると思ったんですよ。まあ、結局海外で暮らす夢はあきらめたんですけどね(笑)

 

——そうだったんですね。日本料理の修業は厳しかったですか?

金子さん:最初に修業した寿司割烹は、親方が昔気質の職人で厳しかったですね。ご夫婦とその息子さんで営業しているお店だったんですが、僕が入ってすぐに息子さんが体調を崩してしまったので、その代わりに僕がいろいろな仕事に携わることになったんです。本来は長い年月をかけて下積みを経験するところ、すぐに仕事を教わることができたのは恵まれていましたね。

 

 

——どんなことを教わったんですか?

金子さん:お寿司をメインにしたお店だったので、魚の目利きから下処理、扱い方を学ぶことができました。でも僕はお寿司じゃなくて、もっと日本料理について学びたいという思いがあったので、その後そのお店を辞めて北海道や京都で料理の仕事をしたんです。

 

——けっこうあちこちに行ったんですね(笑)

金子さん:北海道では仕事のかたわらスノーボードを楽しみながら、本当にこのまま日本料理の仕事をやっていきたいのかどうか、自分の人生を見つめ直しました。結局、日本料理を続けたいと思ったし、もっと修業して料理を極めたいと思ったので、京都にある老舗のだし問屋が経営している日本料理店で修業したんです。

 

——そこではどんなことを学びました?

金子さん:削り方から使い方まで、だしについての勉強をさせてもらいました。修業していて感じたのは「自分で興味を持ちながら積極的に人の仕事を見ていないと、いくら教わっても身につかない」ということでしたね。

 

食材に込められたストーリーを大切にしたい。

——新潟で「蕎麦佳肴 五常」を開業したのはどうしてなんですか?

金子さん:料理の修業を続けてきて、自分の店をやりたいという気持ちがだんだん強くなっていたんです。「新潟に帰って考えてみよう」と思ったときに、いろいろな人とのご縁が重なって、出店するための融資を受けられることになったんですよ。そこで「蕎麦佳肴 五常」を開業することになりました。

 

——どんなお店として開業したんでしょうか。

金子さん:蕎麦と一品料理を味わいながら、お酒が楽しめる店として開業しました。舌の肥えたお客様からのリクエストにお応えするうちに、蕎麦以外にも本格的な日本料理を提供するようになっていったんです。

 

——どんなお蕎麦が味わえるんでしょうか。

金子さん:両親が津川の店で試行錯誤して作り上げてきた蕎麦の味を守り続けています。福島にある山都の蕎麦農家から届く「石臼粗挽き粉」を使った、手打ちの十割蕎麦なんです。気温や湿度といった環境で蕎麦のできが変わってしまうので、難しい反面やり甲斐も感じますね。

 

 

——日本酒はどんなものを選んでいるんですか?

金子さん:新潟の日本酒は確かに美味しいんですけど、県外にも美味しい日本酒はたくさんあるんですよね。ですから地酒以外にも美味しい日本酒があることを知ってほしくて、県外の日本酒を多く取り揃えています。日本酒以外では僕の好きなナチュラルワインも揃えているんです。

 

——お酒が美味しいとお料理も進みそうですね。どんなところにこだわった料理が食べられるんですか?

金子さん:日本料理ですから、食材にはこだわっています。新潟は生産者との距離が近いので、とても恵まれていると感じますね。農家や漁師、猟師の方にお会いして話をお聞きすることで、食材に対する理解も深まるしリスペクトの思いも強くなるんです。ひとつひとつの食材に込められたストーリーを大切に調理するよう心がけていますね。

 

——例えば、どのように調理しているんでしょうか。

金子さん:食材の個性を最大限に生かすよう努力しています。味付けでごまかして食材の個性が消えてしまわないよう、シンプルだけど奥の深い料理を目指しているんです。その分、仕込みにはじっくりと時間をかけるようにしています。食材によって仕込みに3日かかるものもあれば、ひと月かかるものもあります。妥協はしたくないので、つい時間をかけ過ぎてしまって、開店時間に間に合わなくなってしまったこともあります(笑)

 

 

——じゃあ、予約の際はできるだけ早めにした方がいいんですね。

金子さん:そうしてもらえると助かりますね。最近はコース料理を中心にしたスタイルに変えているので、今までみたいにひと皿ひと皿にこだわることも大切ですけど、全体の流れを意識することも心掛けています。料理のメリハリをつけながら、全体を通してひとつの物語を作れたらいいですね。

 

——料理に対するこだわりをいろいろお聞きできました。最後になりますが、店名の「五常」という言葉にはどんな意味があるんでしょうか?

金子さん:人として大切な「仁・義・礼・智・信」の心構えのことです。開業するにあたって店名にふさわしい言葉を国語辞典で探しているときに見つけました。お客様はもちろん生産者や食材に対しても、この言葉のように敬意を払って関わっていきたいと思っています。

 

 

 

蕎麦佳肴 五常

新潟市中央区天神1-18-15

025-245-0805

11:30-14:00(L.O.13:30)/17:30-最終入店20:00、日曜11:30-14:00(L.O.13:30)/17:30-最終入店19:00

不定休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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