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ローストビーフ丼とハンバーグ定食で勝負する「早亀食堂」。

新潟市中央区の閑静な住宅街のなかに「宿舎 早亀」という、建設作業員のための宿泊施設があります。そして、その敷地内に今年オープンしたのが「早亀食堂(はやかめしょくどう)」です。この食堂、食事メニューは「ローストビーフ丼」と「ハンバーグ定食」のみ。とても気になるので、オーナーの早川さんにお話を聞いてきました。

 

 

 

早亀食堂

早川 謹弘 Norihiro Hayakawa

1975年新潟市中央区生まれ。帝京大学卒業。東京の焼肉チェーン店で修業を積み、新潟に帰郷。新潟調理師専門学校で料理を学び、フレンチレストランやカフェで経験を重ねる。2006年に家業の「宿舎 早亀」を受け継ぎ、2023年に「早亀食堂」をオープン。最近は子どもと一緒にゲーム「Minecraft」にハマっている。

 

建設作業員専門の宿泊施設がはじめた食堂。

——周りは家が建ち並ぶ住宅地なのに、ここだけ広々していて公園みたいですね。見事な桜の木や池があって自然を感じます。

早川さん:今の子どもは木の枝や石ころに触れる機会が少ないようで、親子連れが来ると子どもが喜んでくれますね。池にはときどき鷺なんかの野鳥が現れることもあるんですよ。

 

——ファミリーにもぴったりですね。ところで、隣にある「宿舎 早亀」っていうのは?

早川さん:建設作業員向けの宿泊施設なんです。私のおじいさんである早川亀太郎がはじめたので、「宿舎 早亀」という屋号になっています。

 

——建設作業員向けの宿泊施設というのは、ちょっと珍しいですね。

早川さん:新潟県庁が移転してくるまで、このあたりは大きな工場の建ち並ぶ工場地帯だったんですよ。仕事で多くの作業関係者がやってくるものの、宿泊する場所がなかったので、行政から相談を受けたおじいさんが宿泊施設をはじめたんです。

 

 

——県庁が移転してきてからは工場が減りましたが、まだ作業員御用達なんでしょうか。

早川さん:今では送電線の作業をする方が多く泊まられますね。工事関係の仕事って、作業状況で工期が前後することも多いんですよ。ビジネスホテルだと宿泊を伸ばすことができなかったり、キャンセル料が生じたりするので、うちみたいに融通の利く宿泊施設が便利なんだと思います。

 

——作業員さんにとってありがたい施設なんですね。

早川さん:おかげさまで、工事関係者内のクチコミで今でも利用していただいています。古くからご贔屓にしてくださっているお客様もいらっしゃるので、なくすことができないんですよ。でもコロナ禍で宿泊数が激減したこともあって、敷地内で「早亀食堂」をオープンすることにしたんです。

 

今も生かされている、焼肉店やフレンチレストランでの経験。

——早川さんは昔から「宿舎 早亀」で働くつもりで?

早川さん:私が子どもの頃にはグルメ漫画が流行っていたので、その影響もあって飲食業をやりたかったんですよ。なかでも焼肉店をやりたいと思っていたんです。

 

——数ある飲食店のなかで、どうして焼肉店をやりたいと思ったんでしょうか?

早川さん:美味しい上に焼きながら食べるアミューズメント性もあって、誰もが楽しく食事できるところが魅力的でした。そこで焼肉店の経営を学ぶために、東京の焼肉チェーン店で働きはじめたんです。

 

 

——焼肉店での仕事は勉強になりましたか?

早川さん:店長や人事の仕事を経験させていただき、勉強になりました。そこで2年くらい働いた後に新潟へ戻り、自分に足りなかった調理の勉強をするために専門学校へ入学しました。

 

——それじゃあ、専門学校を卒業した後は調理の仕事を?

早川さん:学校の紹介でフレンチレストランに就職して調理の仕事をしていましたが、1年経った頃に系列店のカフェの店長を任されることになったんです。そのカフェでは本格的なフランス料理のランチを提供していたんですけど、学生も多いエリアだったので、リーズナブルなランチや100円のサンドイッチといったカジュアルな方向に切り替えたら、お客様が10倍に増えました(笑)

 

——それは大手柄じゃないですか。

早川さん:でも忙しさのあまり体調を崩してしまったので退職して、人手不足で手が回らなかった家業の「宿舎 早亀」を手伝うことになったんです。これまで学んできた経験は今でも役に立っています。

 

適度なダサさとSNS映えが人気の秘密。

——「早亀食堂」のメニューは「ローストビーフ丼」と「ハンバーグ定食」の二本立てなんですね。

早川さん:リフォーム業者に相談したら、町外れの地元の人しか通らないような場所でカフェをはじめても難しいんじゃないかと言われたんです。それよりも何かに特化したお店をやった方がいいとアドバイスをいただいたので、「ローストビーフ丼」と「ハンバーグ定食」のお店をやろうと思いました。

 

——どうしてそのチョイスに?

早川さん:純粋に自分が食べたいと思うものを選びました(笑)。新潟には丼で食べられる「ローストビーフ丼」のお店がほとんどなかったので、それなら自分でやっちゃおうと思ったんです。牛もも肉を塩麹で漬け込み、低温で4時間半かけてじっくり焼き上げていますので、しっとりした柔らかい食感を楽しめます。

 

 

——ボリューム感もすごいですよね。「ハンバーグ定食」のハンバーグも大きいですけど……(笑)

早川さん:もともと「宿舎 早亀」の食事としてハンバーグを出していて、評判がよかったので「早亀食堂」でも提供することにしました。パスタやラーメンではなくご飯ものにしたのは、せっかく新潟でオープンするんだったら、麺ではなくお米で勝負したいと思ったからなんです。

 

——ローストビーフもハンバーグも手間暇かけて作っているんでしょうね。

早川さん:宿舎の営業と掛け持ちしているのでなかなか大変なんですけど、手を抜くわけにはいきませんからね。ありがたいことに自分が予想していた以上のご来店があるので、生産数が間に合わなくなっているのが悩みなんです(笑)

 

 

——人気の秘密はどういったところにあるんでしょう?

早川さん:あえて「早亀食堂」という店名にして、適度にダサいところがよかったのかなって思っています。お洒落でも敷居が高すぎたら入りにくいだろうし、ダサすぎても来てくれないと思うんですよ。そういう意味では、誰もが入りやすいお店だったのかもしれませんね。あと料理のビジュアルが特徴的なので、SNSで紹介したくなるものだったのかもしれないですね。

 

——ちょいダサを狙ったわけですね。これからは、どんなお店を目指していきたいですか?

早川さん:ただお腹を満たすためだけの食事じゃなくて、ワクワク感のある食事やスイーツを提供していきたいと思っています。

 

 

 

早亀食堂

新潟市中央区網川原2-29-8

11:30-15:00

不定休

 

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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