夏が終わりに近づいてきました。残暑を乗り切るため、夜は冷えた日本酒と美味しいつまみを楽しみたいものです。今回は、JR長岡駅から徒歩5分の場所にある「旬味とみ井」の富井さんご夫婦にお話を聞いてきました。「旬味とみ井」は、お酒に合うおつまみ=あてを出すお店として、2025年5月にオープン。席数11席の落ち着いた雰囲気が特徴です。たまにはひとりで優雅に。大事な人との記念日に。ぜひ、長岡のお店選びの参考にしてください。
旬味とみ井
富井 将太 Syouta Tomii
1990年長岡市生まれ。専門学校卒業後、長岡市内の老舗中華料理店で修業を積み、調理師免許を取得。和食店で日本料理の基礎を学び、旅館に転職して魚料理の腕を磨く。2025年5月、妻の加奈さんと「旬味とみ井」をオープン。趣味はサッカー観戦。休日は包丁研ぎをしながら精神統一。
旬味とみ井
富井 加奈 Kana Tomii
1990年長岡市生まれ。学生時代のアルバイトから飲食店に携わり、そのまま飲食業界に就職。接客サービス・店舗管理業務を経験。和食店勤務時代に同級生だったご主人の将太さんと再会。「旬味とみ井」では、接客を担当。休日の楽しみは読書の時間。スポーツ観戦が趣味。
――「いわしのあて巻き」が人気だと聞きました。こちらはどのような料理ですか?
将太さん:千切りきゅうり、大葉、酢取り茗荷(甘酢漬け)と新鮮ないわしを、薄く剥いたきゅうりで巻いたものです。自家製の黄身酢をつけてお召し上がりいただきます。
――日本酒に合いそうですね!「あて巻き」ってきゅうりで巻くことをいうのでしょうか?
将太さん:「あて巻き」は、お酒のあてになるような、味付けされた具材をメインにした細巻き寿司のことです。シャリを少なめにしたり海苔だけで巻いたりとお店によってかたちは違いますが、きゅうりを使っているのがうちの特徴ですね。
――なるほど、じゃあ「いわしのあて巻き」はお店の創作料理なのですね。
加奈さん:何かうちの名物になるような料理を出せるといいよねってふたりで話していたんです。予想外に皆さんに気に入っていただけて、「いわしのあて巻き」を目的に来てくださる方も多いです。仕入れが足りずに売り切れる日もあるんですよ。
――食べたいときは予約必須ですね。ほかのおすすめのメニューも知りたいです。
将太さん:うちは実家が「富井農園」という農家で、野菜は基本的に採れたての新鮮なものを提供しています。夏の時期の枝豆はもちろん、野菜がメインのあてもあるので、ぜひ季節ごとに楽しんでほしいですね。
――季節の美味しいお野菜がたっぷり楽しめるのはいいですね。お料理はアラカルトがメインですか?
将太さん:ご予約いただければ、海鮮メインのコース料理もご用意しています。最近はコースをご注文くださるお客様も増えてきました。
――おふたりはお店をオープンするまではどんなお仕事をされていたのでしょうか?
加奈さん:私は学生の頃のアルバイトからずっと飲食業に携わっています。この仕事が好きで、ほかの仕事はしたことがありません。
将太さん:僕も飲食店ですね。専門学生時代に中華チェーン店でアルバイトしたことがきっかけで、この道に進みました。卒業後は長岡市内の老舗中華料理屋に就職したんです。そのお店で調理師免許を取得して、無事取得できたことを区切りに転職しました。
――今の将太さんを見ていると、中華鍋を振っているイメージができませんね(笑)。日本料理はどこかで修業されたのでしょうか?
将太さん:これも長岡市内ですが、寿司と和食がメインの店舗で働いたことが日本料理のきっかけです。最初はグループ会社の介護福祉施設で入所者の方の食事をつくっていましたが、料理より人を管理する仕事に回ることが多くて少し参ってしまっていたんです。当時の部長がとても熱くていい方で、退職を伝えたとき「何とかやりたいことや得意なことをいかせないか」ということで、店舗を移らせてもらえることになりました。
――おお、ではそこで日本料理を学ばれたのですね。
将太さん:でも、最初は調理場に入ることもできませんでしたよ(笑)。大きい店舗で、調理場は有名なお店で料理長をやっていた人たちばかりだったんです。自分はホールからはじめて、そこのホール長にお客様を見る目線やサービスのことを教わりました。その後、入れ替わりのタイミングもあって調理場に入れるようになったんですが、寿司場に立ったときは本当に緊張しました。
――お客様から手元が見えるような場所ですか?
将太さん:そうです。もちろん練習もしましたが、当時はほとんど魚を捌いたことがなかったので毎日どきどきでした。でも、いろんな魚や調理方法に触れるたび和食の面白さにどんどんハマっていきました。
――その和食店から、本格的に魚料理を学ぶために寺泊の旅館に転職されたんですよね。
将太さん:魚の捌き方もそうですけど、仕入れからお客様の口に入るまでのすべての工程をちゃんと学びたかったんです。旅館では徹底的にしごかれました。ちゃんと叱ってもらえたというのが正しいですね。セリにも連れていってもらえて、全員が真剣に料理に向き合っていたので、成長できたと思います。
――創作料理もそこで学ばれたんですか?
将太さん:そこは盛り付けに関しても料理長の指示通りに、という厳しい環境だったので、アレンジするようになったきっかけはコロナ禍ですね。休業もあって、家でたくさん料理しました。学んだことを噛み砕いて、自分だったらどう料理で表現するかを考えて、毎日妻に食べてもらって(笑)
加奈さん:1日3食つくってたもんね(笑)
――では、その頃から自分のお店を持ちたいという想いがより強くなったんですね。おふたりがお店を立ち上げるにあたってこのあたりで参考にされたお店などはありますか?
将太さん:東坂之上町の「JINROKU(ジンロク)」さんですね。個人店で本当に人気のお店です。今は予約が一年待ちとかじゃないかな。
――へえ、すごい!
加奈さん:私たちの店舗のもう少し先に「まさや」さんっていう、連日満席で20年くらい経営されているお店もあるんです。駅からの距離で言えばうちよりまだ歩くので、この距離にあるうちのお店がお客さんを呼べなきゃいけないよねとは思っています。
――おふたりとも長岡のご出身ですが、これから地域をどのように盛り上げたいですか?
将太さん:単純に美味しいものがもっと長岡駅に増えてほしいですね。大手通は見ての通り、チェーン店が目立ちます。もちろん、チェーン店はチェーン店の良さがありますが、市場に行くといろんなお店の店主さんが朝から真剣な顔で魚を選んで、お客さんひとりひとりの顔を思い浮かべながら毎日料理をつくっています。隠れた名店じゃないですけど、間違いなくいい店が多い地域なんです。
加奈さん:でも集客に悩んでいるお店も多くて、それがすごく悔しいなと思います。もちろん値段はチェーン店に比べて少し高いですけど、長岡でしか食べられないこだわりを持ったお店が多いこと知ってほしいし、もっと増えてほしいと思っています。だからこそ、まずは自分たちがそのお店のひとつになれるよう、これからも美味しい料理と心のこもったサービスを提供していきます。
旬味とみ井