万能健康食品「糀」の魅力を伝える
阿賀町「山﨑糀屋」の名物女将。

ものづくり

2026.07.02

text by Kazuaki Yamazaki

冬になると雪に閉ざされる阿賀町では、食品を発酵させることで長い冬の間の保存食としてきました。そのため、町内には糀(こうじ)をはじめとした発酵食品のお店をいくつか目にします。明治元年創業の老舗「山﨑糀屋(やまざきこうじや)」もそのひとつ。店頭には昔ながらの製法にこだわった糀や味噌、甘酒が並んでいます。趣ある町屋づくりのお店にお邪魔して、名物女将の山﨑さんからお話を聞いてきました。

Interview

山﨑 京子

Kyoko Yamazaki(山﨑糀屋)

1945年阿賀町(旧津川町)生まれ。23歳でのちに「山﨑糀屋」となる木炭問屋へ嫁入りし、6代目女将となる。48歳から2期にわたり町会議員としても活躍。糀の魅力を伝えるため、講演やワークショップもおこなっている。

木炭問屋から糀屋へ。
明治から続く老舗の歴史。

――津川は「狐の嫁入り」で有名ですけど、女将さんはいつ頃嫁入りされたんですか?

山﨑さん:23歳のとき。私が嫁入りした頃は木炭問屋だったのよ。このあたりは山ばっかりで木が豊富だから、みんな炭焼きをやっていたの。ここの祖先は西蒲原で造り酒屋をやっていたので、木炭問屋を営む傍で糀づくりをしていたのよね。

 

――じゃあ、糀づくりは副業だったんですね。

山﨑さん:そうだね。でも燃料革命が起こって、木炭や石炭に変わってガスや電気が主流になっていったでしょ? だから木炭問屋の仕事を縮小していって、糀屋の方を本業にしていったのよ。糀や味噌の小売はもちろん、各家庭で熟成する仕込み味噌の注文も多いの。

 

――女将さんは、どちらのご出身なんですか?

山﨑さん:二軒隣り(笑)。両親はもともと長岡に住んでいたんだけど空襲で焼け出されて、生後8ヶ月の私を抱えて父の実家があるこの津川へ逃げてきたの。羊を飼って羊毛や肥料を売っていたのよ。

 

――めっちゃ近所だったんですね(笑)。嫁入りしてみて、いかがでした?

山﨑さん:お義母さんは貿易商で働いていたほど頭のいい人だったのよ。そのお義母さんと叔母さんから糀の知識だけではなく、昔から伝わる暮らしの知恵をたくさん教わることができたわね。なにしろ昭和40年代に、まだ薪釜でご飯を炊いていたんだもん。

 

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薪釜を使って煮てつくる、
昔ながらの伝統製法。

――お店のこだわりについてお聞きしたいと思います。

山﨑さん:大豆を蒸すのではなく煮てつくる、昔ながらの製法にこだわっているのよ。電気やガスじゃなく薪火を使うから、遠赤外線効果で内側からしっかりと熱が入って、とろっとろに柔らかくなるの。おまけに大豆の灰汁が泡になって吹きこぼれるから、えぐ味が取れて甘く仕上がるのよ。

 

――でも、手間がかかるんじゃないですか?

山﨑さん:もちろん手間はかかるけど、良質な味噌をつくりたいからね。昔ながらの伝統製法には、食品への知恵が詰まっているのよ。

 

――その味噌を支えているのが糀なんですね。

山﨑さん:新潟産こしいぶきを使った特別配合の生黄糀(なまきこうじ)。糖度が高くて発酵力も強く、熱にも強いという特徴があるの。温度管理を徹底することで、品質の安定を保っているのよ。

 

――お米がベースになっているんですね。

山﨑さん:「こうじ」の表記には「麹」という漢字と「糀」という国字の二種類があるんだけど、「麹」は小麦を原料に使ったもの、「糀」はお米を原料に使ったものを指すので、米こうじにこだわりを持っているうちの店では「糀」の字を使っているのよ。

 

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美肌効果から整腸作用まで、
糀に秘められた驚くべき力。

――糀の素晴らしさを知ったのは、仕事で関わるようになってからですか?

山﨑さん:そうね。糀って本当にすごいのよ。そのことを伝えたくて向かいで営業していたスナックを改装した教室で、糀にまつわるワークショップを開催してるの。

 

――どんなワークショップなんですか?

山﨑さん:糀水(こうじすい)のつくり方や効果をお伝えしているのよ。誰にでも簡単につくれるのに、驚くほどいろいろな効果が感じられるの。

 

――例えばどのような?

山﨑さん:肌につければ、どんな化粧液にも負けないくらい、しっとりすべすべとした肌が持続するし、飲み続ければ腸内環境が整ってお腹の調子が良くなる。花粉症や老眼が解消したという声もあるのよ。私なんてもう80歳だけど、この通り肌がすべすべしてるでしょ?

 

――確かにつやつやですね。

山﨑さん:糀がもつ医学的効果を知りたくて、大学教授と共同研究もしてきたの。学術会議や講演会にも出席したし、本にも名前が載ったわね。

 

――それはすごい。

山﨑さん:糀の持つ力で健康な人が増えてほしいの。そのためにも、昔の人の知恵をたくさんの人に伝えていけたらと思っているのよ。

 

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思いついたら何でも挑戦する。
やりたいことをやるための人生。

――スナックの経営までやっていたんですか。

山﨑さん:磐越自動車道の工事がはじまるのを知って、スナックをオープンしたの。そうしたら工事関係者で連日にぎわったわね。津川でいちばん最初にカラオケを入れたんだけど、バケツいっぱいになったカラオケ代の百円玉を、そのまま何度も銀行へ持って行ってたのよ(笑)

 

――すごい行動力ですね。

山﨑さん:昔から思いついたらすぐにやっちゃうの。カラオケが好きだったから、とても有名な作曲家の先生に会いに行って「私、歌手になりたいんですけど、なれますか?」って聞いたりして(笑)。弟子にしてもらえることになったんだけど、レッスン代が高くて諦めたのよ。

 

――会いに行っちゃう行動力が素晴らしい(笑)

山﨑さん:考えるより先に動いちゃうの。標高の高いメキシコではゴルフボールがよく飛ぶと聞いて試しに行ったり、マサイ族の視力が7.0もあるのはどうしてなのか調べに行ったり……。

 

――どうして視力がよかったんですか?

山﨑さん:牛乳に牛の血液を混ぜて飲むことで、ビタミンAを多く摂取していたのよ。でもあそこは昼は暑いけど夜は寒いし、トイレに行くと番人がいて使用料を取られるから大変だったわ。

 

――今まででいちばん印象に残っている体験はありますか?

山﨑さん:ケニアのサバンナへ行って、野生の動物を見てきたことかな。カバの群れやヌーの川渡りを目の前で見ることができて感動したね。テレビや動物園で見るのとは全然違った。乗っていたジープがシロサイに追いかけられたときは怖かったけれども(笑)

 

――とても貴重な体験ばかりされているんですね(笑)

山﨑さん:私は「やりたいことをやるために人生がある」と思って生きてきたのよ。だから、今まで自分のやりたいことをやらせてもらってきたし「あのときやっておけば」といった後悔はひとつもないの(笑)

 

山﨑糀屋

東蒲原郡阿賀町津川452

0254-92-2030

9:00-18:00

6日、16日、26日休(土日曜を除く)

※最新の情報や正確な位置情報等は公式のHPやSNS等からご確認ください。なお掲載から期間が空いた店舗等は移転・閉店の場合があります。また記事は諸事情により予告なく掲載を終了する場合もございます。予めご了承ください。

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