新潟市東区にあるイオン新潟東の入口前に、水色の可愛いキッチンカーが停まっているのをよく見かけます。「PanDa café(パンダカフェ)」という名のこのキッチンカー。そばには「黒いクレープ」と書かれたのぼり旗が立っていて、車の周囲にあるパンダのマスコットはまるでお客を呼んでいる招き猫のよう。黒いクレープとは何か。なぜパンダなのか。オーナーの手島さんにお話を聞いてきました。
PanDa CaFe
手島 ひとみ Hitomi Teshima
新潟市東区生まれ。短大で調理の勉強をし栄養士と調理師の資格を取得。神戸のケーキ店、居酒屋、カフェといった飲食店のスタッフや保育園の給食スタッフとして経験を積む。2015年にキッチンカーのクレープ店「PanDa CaFe」をオープン。趣味はハンドメイドからスノボ、旅行、ツーリングと幅広い。
——朝は雨が降っていたから心配でしたけど、晴れてよかったです。キッチンカーは天気、大事ですもんね。
手島さん:台風みたいに風が強いと、もう大変。パラソルは折れるわ、メニューは吹っ飛ぶわ、パンダのマスコットは飛んでいくわ……。特にタケシの飛距離はハンパないっけね(笑)
——タケシって……ああ、このパンダのマスコットですね(笑)
——キッチンカーならではの苦労ってあるんですか?
手島さん:ひとりでやってるっけ、キッチンカーから離れらんないことくらいかな。離れている間にお客様が来るかもしれないって思うと、なかなか離れられないんて。
——それは大変ですね。じゃあ逆にキッチンカーの良さというと?
手島さん:いろんなところで営業できるってことかな。今はイオン新潟東で出店することがほとんどだけど、その他にも新発田市の「やお家」さんでも出店してるし、イベントでも出店してるっけね。
——イベントというと、具体的にどんなイベントに出店してるんですか?
手島さん:「新潟ふるさと村」の「クレープ祭り」とか、胎内市の「チュ−—リップフェスティバル」とか、「みなとぴあ」のプロジェクションマッピング「光の響宴」とかでも出店したよ。今では追っかけの人もいて、県外からも出店先に来てくれるっけありがたいよね。
——手島さんは以前からお菓子作りをしていたんですか?
手島さん:短大で栄養士と調理師の免許を取ったんだけど、ケーキ作りがしたくなって神戸に行ったんだよね。
——なんで神戸?
手島さん:美味しいケーキっていったら神戸ってイメージじゃん。バイクで神戸のケーキ屋さんをめぐって、一番美味しいと思った店に弟子入りしたの。そこでお菓子作りの修行をさせてもらったんだけど、人間関係に疲れて辞めることになって、居酒屋とかカフェとかの飲食店で働いたんさ。最後は保育園で給食を作ってた。
——どうしてキッチンカーでお店を始めることになったんですか?
手島さん:いろんな飲食店で働いているうちに、いつかは自分でお店をやってみたいって思うようになってたんだよね。それで空き店舗を探してみたんだけど、なかなか自分がピンとくる場所が見つからなくって、そうこうしているうちにキッチンカーにたどり着いたって感じ。調理も接客もひとりでできるし、自分に向いてるって思ったんて。
——なるほど。そのキッチンカーでクレープ……それも真っ黒なクレープを売ろうと思ったのはどうしてなんですか?
手島さん:クレープってトッピングでいろいろ遊べるじゃん。でもクレープ販売のキッチンカーって世の中にたくさんあるから、どうやって差別化しようかって考えたんさ。これでも結構リサーチしたりするタイプだっけ、いろいろ調べていたら海外のセレブの間で黒いフードやドリンクが人気になってるって知ったんだよね。
——それで真っ黒なクレープを売ることになったんですか。
手島さん:そうそう。竹炭で黒い色をつけているから、笹が好物のパンダを店名にして「PanDa CaFe」ってことで(笑)
——真っ黒なクレープはインパクトあるから話題になったんじゃないですか?
手島さん:ところが最初は黒い色が受け入れてもらえなくて、全然売れなかったんだよね。通りがかりの人たちが「なんでクレープが黒なん」とか「気持ち悪い」とか言っていくんて。(みんな丸聞こえなんですけど……)みたいな感じでさ(笑)
——それはせつない(笑)。でも今は受け入れてもらえるようになったんですよね。
手島さん:2017年に東京の上野動物園でパンダの香香(シャンシャン)が生まれて、TBSの報道番組でパンダつながりの店が紹介されたの。そのときにうちのクレープも紹介されたんだよ。その後、地元のテレビ局が日曜のお昼にやっている情報番組でも、生放送で紹介されたの。そのときはイオン新潟東の入口前で出店してたんだけど、イオンの中まで行列が続いたっけね(笑)
——うわ。テレビの影響力は恐るべしですね。パンダのキャラクターって最初からトッピングされていたんですか?
手島さん:最初は黒いだけのクレープだったんて。でも新潟ふるさと村のイベントに出店したとき、この色のせいかまったく売れなかったんさ。
——そうだったんですか(笑)
手島さん:それでパンダのオリジナルキャラクター「タケシ」のマスコットを作ってキッチンカーの前に置いたら、それだけで行列ができるほど人気が出たんて。まさに「客寄せパンダ」だよね(笑)。それで調子に乗って「だったらクレープの上にパンダを乗っけてしまえ!」って思って遊び始めたんさ。
——遊び始めた……(笑)。そういうノリだったんですか。
手島さん:パンダにピンクの綿菓子で作ったアフロのカツラをかぶせて「パーティーピーポー」とかね。ハロウィンのときには「目ん玉クレープ」とか「脳みそクレープ」とか(笑)。「脳みそクレープ」なんか型を自作までしたのに気持ち悪がられて全然売れなかったわ(笑)。パンダのトッピングを乗せられるだけ乗せてって言われて、23個乗せたこともあったなぁ。最新の期間限定クレープは鍋みたいなトッピングが乗っている「冬は鍋」。
——どれも遊び心があふれているというか、あふれ過ぎてこぼれそうっていうか……(笑)
手島さん:お客様がクレープを受け取ったときに驚いてくれるのが楽しいんて。その反応見たさにやってるのかもね。どんなに行列になって待たされても、クレープのキャラとかトッピングを見て笑顔になってくれるからね。だからクレープの包み紙も楽しんでもらえるように自分でデザインしてるんさ。あみだくじとか漫画とか。
——今後やってみようと思っていることってあるんですか?
手島さん:キッチンカーと平行してネット通販をやってみようって思ってる。クレープはさすがに無理だから、焼菓子とかハンドメイドのオリジナルグッズとかね。あと、ちょっと宣伝させてもらっていい? 1月1日は朝から阿賀野市の旦飯野神社(あさいいのじんじゃ)でクレープ売ってるっけ、初詣のついでに買いにきてねー。
とにかく気さくでフレンドリーな手島さん。話しているとこちらもついつい敬語を使うのを忘れてしまうほど。そんな手島さんが生み出すクレープは、どれも笑っちゃうようなユニークなものばかり。可愛くて面白い「PanDa CaFe」のクレープは、きっとインスタ映え間違いなし!
PanDa CaFe
090-9675-6646