皆さんのご近所には、気軽にご飯を食べに行けるお店はありますか？ ひとり暮らしの方にとっては、近所にそういうお店があると便利ですよね。新潟市の営所通にある「海風亭（かいふうてい）」もそんなお店のひとつ。ホテルなどで板前を経験してきた店主が作る定食を、リーズナブルな価格で味わえるお店なんです。今回はフレンドリーなキャラクターの店主・梨本さんに、お店のこだわりについてお話を聞いてきました。
海風亭
梨本 寛之 Hiroyuki Nashimoto
1971年三条市生まれ。高校を卒業してすぐにロンドンの叔父の店でアルバイトを経験。帰国後は群馬県の伊香保温泉にあるホテルで板前としての修業を積む。独立に向けて何軒かの居酒屋で経験を重ね、2000年に新潟市で「海風亭」をオープン。読んだ歴史小説の舞台を巡るのが趣味で、推し武将は上杉謙信。
——このあたりもだいぶ街の様子が変わっちゃいましたね。
梨本さん：日本銀行もあるし昔は市役所や税務署があったから、いろいろな企業や店舗が集まっていたんですよね。営所通は護国神社の参道にもなっているから、お店もたくさんあったんですけど、今ではすっかり少なくなってしまいましたね。
——なんだか寂しいです。お店が少ないと住んでいる人も大変でしょうね。
梨本さん：この辺はコンビニやスーパーも離れているし、飲食店もあんまりないんですよ。特に気軽にご飯を食べに行ける店がないので、そういうお店を目指しているんです。
——地元の人たちにとってはありがたいお店ですよね。梨本さんはいつ頃から料理に興味を持っていたんでしょうか？
梨本さん：母親の実家が三条で青果店をやっていたので、子どもの頃から「食」に対しての興味は持っていたんだと思います。叔父がロンドンで料理人をやっていたので、高校を卒業してすぐイギリスに渡って叔父の元でアルバイトをして過ごしました。
——高校を出てすぐにロンドンで生活していたんですか。かっこいいですね。
梨本さん：ビザの関係で一度帰国したんですけど、ふたたびロンドンへ料理修業に行くつもりだったんですよ。ところが周りの説得にあってロンドンへ行くことを諦めざるをえなくなったので、代わりに群馬県の伊香保温泉にあるホテルで板前修業をすることにしたんです。
——ロンドンが伊香保温泉に変わったんですか（笑）。独立を考えたのはどうしてなんでしょうか？
梨本さん：ホテルでは料理人がお客様に接する機会はなかったんですよ。でも「お客様の顔を見ながら料理を作りたい」と思っていたので、自分で小さめのお店をはじめることにしたんです。オープンまでの間はいくつか個人経営の小さな居酒屋で働きながら、経営のやり方を勉強しましたね。
——それで「海風亭」をオープンされたんですね。
梨本さん：最初はお酒が楽しめる日本料理の店をやろうと思っていたんだけど、すぐ近くに大学病院があるからランチの需要が大きかったんですよ。そこで夜だけではなく、昼もランチ営業をすることにしたんです。
——お料理にはホテルでの板前修業が生かされているんでしょうね。
梨本さん：ホテルでの修業時代には「まかない当番」だったので、ランチの日替わりメニューにはその経験が役立っていますね。30人もいる先輩たちのまかないを毎日作っていたから、そのときに思いついたメニューなんかも提供しているんですよ。
——どんな経験も財産になるものなんですね。昼にランチで利用するお客さんと夜にお酒を飲みに来るお客さんでは、どっちが多いんでしょうか？
梨本さん：新潟大学の医学部や歯学部の学生さんがたくさん来てくれるようになったこともあって、お酒を飲みに来るお客様よりも食事に来るお客様が増えたんですよ。2017年に今の場所へ移転したんですけど、店舗が小さくなったこともあって、食事をメインにした「ごはんやさん」へとスライドしました。
——こちらのお店ではどんなお料理が食べられるんですか？
梨本さん：学生や単身赴任のサラリーマンが毎日でも食べに来てくれるようなお店にしたいので、味だけじゃなくて栄養バランスも考えた家庭料理を提供しています。
——他にも気をつけていることはありますか？
梨本さん：リーズナブルな価格設定にしなければ頻繁に足を運んでいただけないので、できるだけ価格が1,000円以内に収まるよう頑張っています（笑）。ときどきお客様から「たった10円しか違わないんだから、キリよく1,000円にしてほしい」と言われるんですけど、この10円の差って大きいと思うんですよね。
——魚をはじめとした原価が上がっているなかで、この価格設定は大変じゃないんでしょうか？
梨本さん：そうなんですけど、価格を上げるとご来店いただける回数が減ってしまうと思うんですよ。それなら価格を抑えて頻繁に足を運んでもらった方がいいですから、ギリギリの価格設定で頑張っています（笑）
——お客さんは嬉しいでしょうね。
梨本さん：原価の値上がりや深刻な人手不足で、外食産業の経営は難しい世の中だと思うんですよ。定食ひとつとっても小鉢を1〜2品減らさなければ価格が合わないんです。以前はセット内容として当たり前に入っていたものが、今ではオプション料金を取らなければやっていけないんですよ。
——袋入りのお菓子も容量が減ってたりしますもんね（笑）
梨本さん：そうそう（笑）。でも、そんなことばかりやっていたら、誰も外食してくれなくなっちゃうし、お店も減っていく一方ですよ。厳しい時代ですけど、なんとか価格を上げずに量もそのままで続けていけたらいいなと思っています。
海風亭
新潟市中央区営所通2-692-27 ビラ・プリンス101
025-226-0477
11:30-14:00／18:00-22:30
日曜祝日休
