時代を越えて支持される
「タカナシカメラ」の哲学。
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2025.12.07
撮影に使っているカメラが故障したとき、私がいつも頼りにしているのは、桜木インター近くの「タカナシカメラ」さんです。先日もレンズに不具合が起きたので相談すると、より使い勝手の良い中古レンズを提案してくれました。同社の創業は、大正9年。デジタル化が加速し、大手家電量販店も増えてきた時代でも地元のカメラ店が支持され続けるのはなぜか、代表取締役の髙梨さんに聞いてきました。
髙梨 修一
Shuichi Takanashi(タカナシカメラ)
1971年五泉市生まれ。東京の大学を卒業後、中国に1年間留学。帰国後は公益財団法人でのアルバイトを経て、東京の老舗カメラ店に勤務。1997年に新潟に戻り「タカナシカメラ」に入る。2005年に代表取締役に就任。
100年以上続く商い。
「タカナシカメラ」の今昔。
――「タカナシカメラ」さんの創業は、大正9年だそうですね。
髙梨さん:曽祖父が旧村松町で時計とメガネの専門店である「髙梨時計眼鏡店」を開業したのが、「タカナシカメラ」のはじまりです。祖父はシベリア抑留経験のある軍人で、復員後に商売をしようにもノウハウがなく、とても苦労したようです。なんとか食べていかなくてはいけないといろいろ試し、いちばんうまくいったのが曽祖父が開いた店の軒先ではじめた商いでした。それが、カメラと写真のお店なんですよ。
――今の「タカナシカメラ」さんの原点ですね。
髙梨さん:戦後、経済が急成長した時代です。昭和39年に有限会社として、昭和40年代には祖母も「宝石の商いをしたい」ということで、ひとつの店舗に、時計、メガネ、カメラ、写真、宝石があるという、なんとも盛りだくさんな業態で営業していました(笑)。その後に、父親の代で五泉市内にもカメラと写真の専門店を開きました。とても小さいお店でしたが、ありがたいことに新潟市内にも出店でき、平成になってからの一時期は、新潟市内と秋葉区、五泉と4店舗で営業させていただきました。
――今あるのは、「タカナシカメラ 桜木店」だけですか?
髙梨さん:鳥屋野十字路近くにあった「とやの店」を2007年にこちらに移転しました。2018年までは「村松店」もあったんですが、当時の店長が家庭の都合で退職をしてしまって。看板店長でしたので残念ではありましたが、村松のお店は閉めて、このときに本社登記も移したんです。そしてコロナ禍の影響で2020年に五泉の店舗も畳み、現在は「桜木店」のみとなりました。

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カメラの専門店が迎えた、
デジタル化の波。
――2000年代に入り、カメラ業界には大きな変化があったことと思います。
髙梨さん:フィルムカメラは、ほぼなくなりましたからね。2005年に先代が他界したのですが、その頃までは「写真を撮る=フィルムを買う」でした。現像と同時にプリントもご依頼いただいて、それができあがって初めて「写真を見る」ことができたんですね。デジタルカメラの出現によって、そのビジネスモデルが一気に崩れちゃって。同業さんの閉店も相次ぎ、私たちはどうにかして店を守らなくてはと必死でした。
――何か策はあったんですか?
髙梨さん:2000年前半から、ホームページ上で中古カメラの販売をはじめました。当初の受付方法は、電話とFAX、メールでした。なんだか懐かしいでしょう(笑)。その売上が徐々に伸びて、国内外のオークションサイトにも専用ページを設けるまでになりました。
――そこに着目されたのは、なぜですか?
髙梨さん:中古カメラの「情報」に価値があると思っていました。新品のカメラは、メーカー自身にイニシアチブがあって「新商品がリリースされたよ」「キャンペーンがあるよ」といった発信がされます。ところが中古カメラというのは、何が、どんな状態で出てくるかわかりません。なのに、「それ」を求めている方は大勢いらっしゃるんです。
――今ではカメラに限らず、中古品の売買が一般的にも浸透していますよね。でも、カメラファンの皆さんはずっと前からネット上で中古品の取引をしていたということですよね。
髙梨さん:光学機器は状態の差がとても大きいんですよね。数回しか使用していない新品同等の中古品もあれば、かなり酷使した後に何十年も使用していなかったというものまで多種多様です。カメラの中古市場が以前から盛り上がりを見せていたのは、そういう特徴が関係しているのかもしれません。それにジャンク品にもけっこうな需要がありますしね。バラバラにしてから自分で修理する人も、部品だけ必要という人もいらっしゃいますから。
――そういう方もいるだろうなと想像ができます。
髙梨さん:インターネットのない時代は、ミスマッチがとても多かったんです。情報が整理されていないから、お客さまの欲しいものと店の在庫をマッチングできるかどうかは、受付を行う担当者次第でした。インターネットが普及すれば、写真や動画が確認できるようになるはずだから、そこでしっかりと商品の紹介をすればいい。お客さまに製品の状態を正直にご紹介することが大切だと思ったんです。

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会社の流儀は、
正直であること。
――大きな変化があった最中、髙梨さんは代表に就任されました。
髙梨さん:34歳でしたね。先代が急逝して、突然すべてを背負わされた思いでした。
――特に印象に残っていることはなんでしょう?
髙梨さん:ちょうどその頃、業界の構図が大きく変化したんですよね。当時国内トップのフィルムメーカーの関連会社が解散したり、別業界の傘下に入ったりということが相次いで。フィルムの仕入れをする際には、そういった会社と取引するのが当たり前だったんですが、業界が再編し、メーカーから直接商品を仕入れる流れになりました。あれは当時の常識からすると、天変地異ともいえる大きな変化でした。
――新品と中古、両方を取り扱っているメリットはありますか?
髙梨さん:おかげさまでNikonさん、Canonさん、ソニーさんなどお取引させていただいている国内メーカーはいくつもあります。ドイツのライカ社もそうです。新製品の情報をお客さまに伝えると、予約を承ると同時に下取りのご相談をいただくこともありますよ。
――常連さんは、新潟以外にもいるのでは?
髙梨さん:日本全国はもとより、世界中からお問い合わせをいただいております。
――「タカナシカメラ」さんの名が知れているのは、中古市場に強いからなんでしょうか?
髙梨さん:継続して取り扱いをしてきた中古カメラに強みがあると思っています。それともうひとつは、とにかく正確な情報をお客さまに届け続けてきたこと。些細な傷がある場合でも、そのことを正直にお客さまにお伝えしてきました。正直であろうとする姿勢が、いちばん当社らしいところじゃないかなと思っています。
――カメラの専門学校を卒業したスタッフさんがいるそうですね。やっぱり専門分野に詳しい人材を採用されているんですか?
髙梨さん:彼はもともと、うちでアルバイトをしていたんですよ。就活の時期だというのに「勤め先が決まりました」と言ってこないから、みんなで心配していたんです。本人は就職先として考えている先はあると、なんだかモゴモゴしているような感じで。あるとき「『タカナシカメラ』で募集してないです……よね?」と聞いてきたんです(笑)。店長もベテランですし、カメラ好きのスタッフは多いんですが、一方の私はというと、業界に入ったばかりの頃はカメラにまったく興味がなくて。東京で修業をしていた当初、何も分からないまま店頭に立っていて、そのことをお客さまに正直に伝えました。すると大変ありがたいことに、お客さまがニコニコといろんなことを教えてくださいました。
――髙梨社長にお目にかかれる機会は滅多にないと思うので、思い切って質問させていただきます。上手に撮影するためのワンポイントアドバイスをもらえないでしょうか?
髙梨さん:「観察する」に尽きますよ。写欲が湧かなかったり、自分の中で盛り上がりを感じなかったりというときにシャッターを切っても良い写真は撮れません。どんな被写体であってもじっくり観察して、心が動いたときにシャッターを切ってみてください。きっと素晴らしい写真が撮れるはず。観察して、愛でる。愛でる努力をすることは大事です。

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