お菓子や甘納豆を下古町で100年以上売り続けている「佐藤菓子店」。
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2019.10.24
自家製甘納豆を作り続ける4代目の奥さんにお話を聞く。
新潟市の下古町と呼ばれる地域に、大正7年から100年以上も続いているお菓子の専門店「佐藤菓子店」があります。せんべい、あられ、飴など、どこかなつかしいお菓子が並び、ほっこりした気持ちにさせてくれます。特に人気なのは自家製の甘納豆。今回は「佐藤菓子店」の4代目・佐藤耕一さんの奥さんである一子さんに甘納豆やお菓子についてお話を聞いてきました。

佐藤菓子店
佐藤 一子 Kazuko Sato
1941年阿賀町(旧津川町)生まれ。1964年の新潟地震の日に結納をし、その年に「佐藤菓子店」に嫁入り。高校生の頃はスキーの全国大会に出場した経歴を持つ。現在は趣味も多く、料理教室に通ったり「さわらび会」に所属して俳句を詠んだり国内旅行を楽しんだりしている。
甘納豆はデリケート?秋から春の間しか作ることができない。
——今日はよろしくお願いします。いろんな種類の甘納豆がありますけど、何種類くらいあるんですか?
佐藤さん:今作っているのは、白いんげん、金時豆、あずき、栗の4種類。豆の種類でそれぞれ味が違うんだよ。昔はもっといっぱい作ってて、グリーンピースやそら豆の甘納豆もやってたけどね。
——食べ比べしてみたくなりますね。甘納豆はいつ頃から作っているんですか?
佐藤さん:うちのお父さんが「佐藤菓子店」の4代目なんだけど、昭和のはじめ、3代目の頃から甘納豆を作り始めたの。お父さんのお父さんだこってね。3代目は東京で甘納豆の作り方を修行してきたんだって。お店で甘納豆を始めた頃はすごく売れて、従業員もいっぱいいたんだわ。私が嫁に来たばかりの頃も、ご飯食べる暇がないくらい。うかうかしてると、朝ご飯が昼まで食べられないんだから。
——大繁盛だったんですね。甘納豆ってどんな風に作ってるんですか?
佐藤さん:甘納豆はできるまで3日間かかるの。まず豆を水に一晩つけてやわらかくするでしょ。次の日に豆をステンレスのかごに移して水炊きするわけ。このとき、豆が中で動くと型くずれしちゃうから、動かないように中蓋をして、しっかり豆を固定するのよ。一番小さい小豆が動きやすくて難しいんだわ。その後、蜜を溶かした大鍋に移してもういっぺん煮てて、煮立ったらそのまま一晩置いておくの。3日目にもう一度別な蜜で煮てできあがり。
——3日間もかかるんですね。作るときには、どんなことに気をつけてるんですか?
佐藤さん:最後の蜜で煮ているとき、細い針金で豆を刺して感触で仕上がりを見るのよ。固過ぎてもダメだし、やわらか過ぎてもダメだし。気候や気温、豆の種類でも蜜の吸い具合は変わってくるから、煮る時間を感覚でおぼえてるんだね。
——気候で変わるというお話で思い出しましたけど、夏場は作らないんでしたっけ?
佐藤さん:暑いと甘納豆の蜜が溶けちゃうから、夏場は作れないのよ。うちの甘納豆は保存料みたいなものは一切使ってないからね。だいたい6月の初め頃から9月の半ば頃までかな。でも、最近はおかしげたな気候が多くて、暑い期間が長かったりするから、それに合わせて変っちゃうんだわね。今年なんか9月の後半まで作れなかったもん。電話とかで聞いてから来てもらえるとありがたいわ。

スーパーでは売っていないようなお菓子を売っている店。
——「佐藤菓子店」はいつからやってるんですか?
佐藤さん:今の場所で始めたのが大正7年だから、もう100年以上続いてんの。その前は本町でやってたらしいから、歴史はもっと古いんだけどね。当時は「豆屋さん」って呼ばれてたの。お祭りの縁日になると「シャリカリ」っていう名の豆を砂糖で固めたみたいなお菓子を売っていたから、そう呼ばれるようになったみたいね。
——思ってたより長い歴史があるんですね。以前はどんなお菓子を売っていたんですか?
佐藤さん:まあ駄菓子屋だね。チョコレートやガムみたいなポケットもんとか。昔はこのへんにも子どもがいっぱいいて、コンビニはもちろん、スーパーなんかもなかった時代だからね。ポテトチップスなんか出始めの頃はあっという間に売れたのよ。

——今もたくさんお菓子が売られてますけど、何種類くらいあるんですか?
佐藤さん:せんべい、きなこねじり、豆天、飴玉…100種類以上あるね。スーパーとかで売ってないお菓子を置くようにしてるの。例えば、道の駅で見つけた気になるお菓子を買ってきて、製造元に電話して仕入れてるんだて。だから、新潟市ではうちにしか売ってないお菓子もあるのよ。あと、個包装されたものじゃなくて量り売りで取り寄せたものを、うちで包装して売ってるから安く売ることができるの。今ではもう、お菓子だけでやってる店って新潟市でもほとんどないのよ。
——ケースの中にも、せんべいとかあられがぎっしり入ってますもんね。ところで、あの木製の菓子ケースはいい感じですね。
佐藤さん:あれは柾谷小路にあった「藤田豆店」で量り売りの豆を入れて使ってたものなの。「藤田豆店」にはうちから甘納豆を卸していて、行くたびに素敵なケースだなと思ってたんだて。その「藤田豆店」が閉店することになって、片付けの手伝いに行った時にお願いして譲ってもらったのよ。

人情味があって顔見知りの多い下古町に寄せる思い。
——下古町は以前に比べてだいぶ様変わりしてるんですか?
佐藤さん:だいぶなんてもんじゃないわね。私が嫁に来たばっかりの時なんて、絶えず人通りもあったし、町に活気があったもん。今は子どもがまったくいなくなったでしょ。子どもがいないってことは、人がいないってことなんだから。何十年ぶりで新潟に里帰りしてうちの店に来たお客さんが「ここって古町ですよね?」って、あまりの変わりようにびっくりしてたほど。もっと人が増えてほしいとは思うけど、それはもう無理じゃないろっかねぇ…。
——そんな下古町ですけど、どんなよさがありますか?
佐藤さん:人情味があるわね。もう、みんな顔見知りだし。店に来るお客さんなんて知ってる人がほとんど。
——そういうのって本来は商売に大事な部分なんだと思いますよね。
佐藤さん:私の人生の中で一番の宝は、たくさん友達ができたこと。地域、店、趣味、それぞれ違う友達がいるの。それがなによりかな。家族にも恵まれて、今ではひ孫もいるしね。…あんた、子どもいるの?
——いやー、結婚もしてないんですよ(汗)
佐藤さん:早くしなさい。子どもできなくなるよ。
——は、はい…(泣)

取材の間もひっきりなしに常連らしいお客さんが訪れ、親しげに会話を交わす佐藤さん。100年以上も下古町でお菓子を売り続けている、まさに地域に根付いた老舗の姿を見たような気がしました。下古町の活気はなくなったのかもしれませんが、人情味は変わらずに続いてほしいと強く感じました。結婚できたらまた報告に行きますね。

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