ぶどう狩りのシーズンに訪ねた「池田観光果樹園」の、これまでとこれから。
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2020.09.25
「観光果樹園」としての苦労や、やりがいを聞いてきた。
実りの秋を迎えて果物狩りが楽しいシーズンになりました。中でも「ぶどう狩り」は子どもからお年寄りまで多くの人たちに楽しまれているレジャーですよね。今回ご紹介する新潟市南区の「池田観光果樹園」は、気軽にぶどう狩りが楽しめる果樹園として毎年多くの人たちが訪れます。園主の池田さんに観光果樹園としての苦労ややりがいについて、お話を聞いてきました。


池田観光果樹園
池田 良一 Ryoichi Ikeda
1950年新潟市南区(旧白根市)生まれ。高校在学時に急逝した父に代わり、卒業と同時に5代目として果樹園を継ぎ、試行錯誤の末に観光果樹園を作り上げる。以前は山登りを趣味として楽しんでいたが、現在はぶどう栽培に追われる日々。
父の急逝で、まったく経験がないまま果樹園を継ぐことに。
——毎年、ぶどうがたくさん実っている光景を見るとテンションが上がっちゃいますね。
池田さん:いや〜、今年は雨が多くてぶどうにとっては本当に悪い年だったんさ。屋根があるハウス栽培だったらいいけど、うちみたいな露地栽培は本当に難しくってねぇ〜。でも、そんな中でもこれだけのぶどうが実ったのは努力の成果だと思ってるろもね。今の農業は勉強して経験を積まないと、なかなかできないんだて。
——ちょっとやそっとでは始められないんですね。池田さんはいつから果樹園の仕事をしているんですか?
池田さん:三条の商業高校に通ってたんろも、2年生のときに親父がくも膜下出血で急に亡くなったんさ。おら跡取りらったっけ、すぐに高校辞めて果樹園をやろうかとも思ったんろも、親戚の勧めもあってとりあえず高校を卒業してから果樹園を継いだんてば。
——それは大変でしたね。それまで果樹園の仕事を手伝ったりしたことはあったんですか?
池田さん:いやいや。全くやったことなかったし、お袋も親父の手伝い程度の仕事しかしてなかったっけ、何にもわからないまま果樹園の仕事を始めたんさ。そしたら最初の頃はまあ散々だったわね。ぶどうは腐るし病気になるし…。とことん惨めな気持ちを味わったね。
——大ピンチじゃないですか…。
池田さん:そうなんだけど、もうやるしかないから必死に勉強したこってさ。近くの果樹園に頭を下げて色々教えてもらったり、自分で色々な本を読んで勉強したりして、なんとか2〜3年後にはまともに収穫できるようになったんだわね。

亡き父の思いを受け継ぎ観光果樹園を始める。
——どのくらい前から続いている果樹園なんですか?
池田さん:おらで5代目らすけ、遡っていくと江戸時代くらいからやってんじゃないろっかねぇ。じいちゃんより前の話はわからねすけ、推測でしかねぇろも。
——昔から続いているかもしれない果樹園なんですね。「観光果樹園」として始めたのはどうしてなんですか?
池田さん:昭和36年頃に果樹園の前を国道8号線が開通して、親父がぶどう狩りのできる観光果樹園をやろうとしてたんさ。ところが親父が志半ばで逝ってしもたっけ、そうせば、おらが代わりにやってやろうかと思ったんだわね。
——ぶどう棚の下で行なうバーベキューはいつから始めたんですか?
池田さん:もう30年前くらいじゃないろっか。当時、山梨のぶどう園でバーベキューをやってるのを見て、うちでもやってみようってなったんさ。最初はバーベキューの火を起こすのにガスコンロを使ってたんろも破裂したことがあって、幸い大ごとにならなかったんろも、ガスコンロはおっかねっけ木炭を使うようになったんさね。バーベキューは大ヒットして、ぶどうの栽培しながらバーベキューもやってたからその頃は忙しくて大変だったわね。

美味しいぶどうを作るための、努力。
——おいしいぶどうを作るコツってあるんですか?
池田さん:あるさ。おらとこの果樹園では有機肥料を100パーセント使ってること。化学肥料は簡単に使えるんろも、雨が多かったりする気候の悪い年に当たってしまうと、ぶどうの劣化につながりやすいんだね。有機肥料は劣化しにくいから、そういうときに差が出てくるんだて。10年〜20年使い続けると効果が出てくるようになるわね。
——なるほど。長く使い続けると土質が変わってくるわけですね。
池田さん:そうだね。あとは、木の状態に合った着花量が大事だね。欲張って狭い間隔で成らせ過ぎると味が落ちて美味しくなくなるんだわね。味はぶどうの色でわかることも多いろも、シャインマスカットなんかは色で味がわかんねすけおっかないんさ。よく大きい房がいいと思っているお客さんが多いんろも、大きければいいってもんじゃないんて。粒の大きさと房の大きさのバランスが大事で、食べごろの標準的な重さは500gくらいだね。
——今のお話はぶどう選びの参考にします。ぶどう作りって苦労も多いんでしょうね。
池田さん:苦労ばっかりだわね(笑)。本当にぶどうは手間がかかるんさ。特にハウス栽培に比べて露地栽培は大変。中でも病気のチェックは大変な仕事のひとつだね。人間の病気と一緒で早いうちに見つけて手を打たなきゃダメだっけ、ぶどうの見回りは欠かさんねんだて。ヘッドランプつけて夜中に見回りすることも多いんさ。
——子どもを育てるみたいに、丁寧に育ててるんですね。
池田さん:どこの農家も丁寧に育ててるとは思うんだけど、うちは直販してるすけ、お客さんに自分とこの味がわかってしまうろ? だから余計意識して丁寧に作るようにしてるわね。
——お客さんは厳しいですか?
池田さん:お客さんにはいろいろ教えてもらってるね。自分ではうんめと思って作ってるんろも「美味しくなかった」って言われるときもあるしさ。そしたら、何でなんか考えるし、いろいろと勉強になるね。

後継者なき「池田観光果樹園」のこれから。
——これから先のことは、どんなふうに考えていますか?
池田さん:まあ、どういうふうになっていくのかねぇ…。子どもたちはおらが大変な思いしてるとこを見て育ったすけ、農業に対してトラウマになっちゃって誰も継ぎたがらねんだわ(笑)。経営を第三者に預けるかどうするか思案してるとこだね。やる気のある若い人が現れれば、譲ることも考えてるろもね。

高校生のときに亡くなったお父さんの志を継ぎ、知識も経験もないままぶどうの栽培を始め、観光果樹園を作り上げた池田さん。実っているぶどうを見る目は厳しいながらも、愛情にあふれる眼差しでした。これからも人々がぶどう狩りを楽しめる場所として「池田観光果樹園」が長く続いてくれるのを願っています。
池田観光果樹園
〒950-1455 新潟県新潟市南区新飯田2584-15
025-374-2305
7:00-18:00(時間変更の場合あり)
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