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パンの無限の可能性を信じて。胎内市のベーカリー「PAIN de COPAIN」。

胎内市に昨年できた「PAIN de COPAIN(パンデコパン)」のオーナー・川口さんは、20年間勤めた会社から脱サラして、夢だったパン屋さんをオープン。お店のこだわりや意気込みを川口さんに聞いていました。

 

 

PAIN de COPAIN

川口 俊介 Shunsuke Kawaguchi

1975年胎内市生まれ。東京で機械設計の仕事をした後、新潟に戻り、きのこの生産販売を手がける会社で20年間働く。2021年より新潟市にある人気ベーカリー「パンステージ メリーズ」などで修業をし、2023年に胎内市で「PAIN de COPAIN」をオープンする。サラリーマン時代はよくゴルフに行っていたが、今は仕事に追われ趣味を楽しむ時間がない。

 

脱サラして胎内市にパン屋さんをオープン。

——川口さんはパンの仕事に長く携わってきたんでしょうか?

川口さん:東京にある機械設計の会社で働いた後に新潟へ戻って、きのこの生産販売をしている会社で20年間働いてきたんですよ。でも自分でお店をやってみたいという夢はずっとあったんです。

 

——その夢を実現しようと思ったきっかけは何だったんですか?

川口さん:新潟市にある「パンステージ メリーズ」というベーカリーで買い物したときに美味しそうなパンが並べられている店内を見て、自分が作ったパンをお店に並べてみたいという憧れを抱いたんです。それで「メリーズ」の社長に修業させてほしいとお願いして快諾してもらったんです。ただ、家族からは猛反対にあって、諦めることにしました。

 

——脱サラして未経験のパン屋さんをはじめるというのは、確かにご家族は不安を感じるかもしれませんね。

川口さん:でも諦めきれなくて、4年にわたって妻へのプレゼンや説得を重ねました。そしたらとうとう妻が根負けして協力してくれることになったんですよ。

 

 

——川口さんの情熱が奥さんに通じたわけですね。

川口さん:今でも感謝の気持ちでいっぱいです。4年ぶりに「メリーズ」の社長へ連絡したんですが、私のことをちゃんと覚えていてくれて修業をさせてもらえることになりました。ただ家族を養っていかなければならないので、じっくりと時間をかけて修業するわけにもいかず、短期間のうちにお店を出せるまでにならなければならなかったんです。

 

——普通の何倍ものペースで勉強しなければならなかったんですね。

川口さん:社長が私用のスケジュールを作ってくれたので、それに従って修業を進めました。仕事が休みの日でも自主的にお店へ行って、やったことがない作業や苦手な仕事を勉強しましたね。

 

——「メリーズ」ではどんなことを教わったんでしょうか?

川口さん:本当に多くのことを教えていただきましたが、なかでも「店内の隅々にまで気を配る」ということは勉強になりました。毎朝店内をチェックした後に、変わったことがなかったかを社長から聞かれるんです。「特に変わったことはなかった」と報告すると、変化に気がつくまでやり直しをさせられました。

 

 

——なかなか厳しいですね。どんなところが変わっていたりするんでしょう?

川口さん:前日のポップが貼りっぱなしになっていたり、入り口のマットが逆を向いていたり、BGMのボリュームがいつもより小さかったり、店内に流れている小鳥のさえずりのSEが止まっていたりといった細かい変化にも気づかなければならないんです。社長はあらかじめチェックして回って、変化に気づいていたんですよね。

 

——なるほど。「メリーズ」さんで修業した後にすぐお店をオープンしたんですか?

川口さん:「人手が足りないから手伝ってほしい」と頼まれたこともあって、長野のベーカリーで半年ほど修業しました。朝から晩まで休みなく働き続ける、同い年の社長の姿に大変刺激を受けましたね。そこで修業をしながらオープンの準備を進めていたんです。

 

経験の浅い素人だからこそ作れるパン。

——「PAIN de COPAIN」という店名にはどんな意味が込められているんでしょう?

川口さん:「COPAIN」という言葉にはフランス語で「仲間」という意味があるんです。いろいろな仲間たちとのつながりを大切にしていきたいという気持ちで、この言葉を店名に使うことにしました。地元の仲間とともに胎内市を盛り上げていきたいという思いもあります。最初は「ゆかいな森の仲間たち COPAIN」という店名にしようと思っていたんです。

 

——えっ、そうだったんですか?

川口さん:店内を森のような装飾にして、パンにもそれぞれ動物の名前をつけようと思っていたんですよ。ところが内装にお金が掛かり過ぎるので、そのアイデアは諦めることになりました。

 

——テーマパークみたいなお店にしたかったんでしょうか?

川口さん:パンを買うだけの場所ではなくて、眺めたり選んだりすることを楽しめる、そこにいるだけでもワクワクするような場所にしたかったんです。そのためにも豊富な種類のパンを用意して、何度でも足を運んでいただけるように商品の入れ替えをちょくちょくおこなっています。

 

——なるほど。どんなパンに人気があるんですか?

川口さん:出来たてを提供しているカレーパンは人気がありますね。これは「メリーズ」で教わった「焼きたて、揚げたて、作りたて」の「3タテ」へのこだわりを継承しています。でも衣には胎内産の米粉を使っていて、自分なりのアレンジも加えているんです。

 

 

——「3タテ」みたいに、パンを作る上で心掛けていることがあったら教えてください。

川口さん:オリジナリティを大切にしながら、できるだけ他のお店とは違ったパンを作りたいと思っています。他のお店と同じパンを作るんだったら、独立して自分のお店をやる意味がないですからね。いつかは誰も作ったことがないようなパンを作ってみたいんです。パンには新しいものを生み出すことができる、無限の可能性があると感じています。

 

——でも、オリジナリティのあるパンを作るのって大変そうですね。

川口さん:もちろん失敗も多いです。パンの概念を崩したいと思っているので、他の料理からアイデアを持ってくることが多いですね。肉味噌担々麺の具を使ったパンとか、シナモンロールやティラミスを応用したパンとか、いろいろなジャンルの料理やお菓子を参考にすることも多いんです。他のパン屋さんやお菓子屋さんから怒られそうだけど、経験の浅い素人だからこそ作れるパンだと思います。

 

 

——これからはどんなパンを作っていきたいですか?

川口さん:地元を盛り上げていきたいので、胎内市の方々とコラボしながら地元食材を使ったパンを作っていきたいんですよ。現在取り組んでいるのは「胎内高原ビール」とコラボしたバケットです。ビール酵母を使うことで今までにないようなしっとり食感のバケットになるんですが、酵母は生物なので毎日違うものができて安定しにくいんです。ビール酵母を上手に使いこなして、同じバケットを安定して作れるようになることが今後の課題ですね。

 

 

 

PAIN de COPAIN

胎内市中条3118-2

0254-28-9182

10:00-18:00

日木曜休

※掲載から期間が空いた店舗は移転、閉店している場合があります。ご了承ください。
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