「カレーは自由」と語る、スパイスプッシャーのカレー理論。

古町に突如現れたカレー店。謎に包まれたベールをちょっとだけめくってみた。

新潟市中央区西堀通にある「Curry,Coffee&Beer SPICE PUSHER 164(スパイスプッシャー164)」。カレー店とは思えない店構えのその扉を開けると、おおっ、アンダーグラウンドな匂いのする空間が。常に改良を重ねられる現在進行形のカレーを提供するこの店には、決まったメニューが存在しない。ちょっと、いやかなり、謎に包まれた「スパイスプッシャー164」について、オーナーの飯島さんに話をうかがった。

 

SPICE PUSHER 164

飯島慎太郎 Shintaro Iijima

18歳から飲食業の道へと進み、2019年2月1日にカレー店をオープンさせる。イタリアン、鹿児島料理などの経歴がありながらも行き着いた先は、自由な表現ができるカレー。ちょっと怪しげな雰囲気漂う、フランク&ファニーなスパイス使い。

ここがカレーを食べる場所。

新潟三越をちょっと過ぎた西堀通、新津屋小路と交差するあたりにその店はある。カレー店といえば、黄色い店舗を想像しがちだが、「SPICE PUSHER」はそれとだいぶかけはなれた店構えをしている。日本らしからぬ、かといってインドらしさもなく、どこかよくわからない異国を感じさせてくれる雰囲気。おそるおそるドアを開けて最初に目に飛び込んでくるのは、カルチャー色の強いアイテムの数々と、ドンと中央に置かれた大きなテーブル。この店では、まず席に着く前にカウンターまで進むきまりらしい。壁に掛けられているメニュー表から食べたいものを選んで、先にオーダー。それから好きな場所に座っていいという。ちょっと戸惑う私たちを満面の笑みで出迎えてくれたのが、この店のオーナー飯島さんだ。

 

この人がカレーを作るヒト。

――今日はよろしくお願いします。いろいろ教えてください。

飯島さん:え~正直、そんなに話せることないですよ(笑)。

 

――そんなこと言わずにお願いしますよ(笑)。飯島さんは、昔からカレーを作っていたのですか?

飯島さん:料理は18歳の時にイタリアンからスタートしました。いろいろと修業をして昔、居酒屋を自分でやっていましたが、お金(生活)のために料理をするのが嫌になって、やめちゃいました。それからいろいろな時間を経て、カレーをはじめたんですよ。

 

――カレー出発ではなかったのですね。カレーにたどり着いたのは、なにかキッカケがあったんですか?

飯島さん:一度料理をやめたあと、なんか広い世界を急に見たくなって、ミャンマー、タイ、マレーシアを巡りました。そこで出会ったのがミャンマーカレーやラクサなどのカレー。あとはタイでの屋台文化です。めちゃくちゃうまいな!って思い、自分でもカレーを作ってみたいなと思いましたね。

 

 

――だからなんですね。カレーっていうとインドのイメージが強かったんですが、お店の雰囲気とかもちょっと違うなと思っていました。

飯島さん:アジア文化が強いかもしれないですね。カレー自体は特に意識はしてないんですけどね。

 

――カレー作りには、今まで培ってきた料理の経験が生かされていますか?

飯島さん:ん~料理をするうえでの基本的な部分は生かされていますが、カレーを作る上で一番、自分の経験が影響していると感じるのは、昔やっていた音楽活動ですね。DJをしたり、トラック制作(楽曲制作)をしていたので。僕がやっていた音楽って、リズムとかを組み合わせて作っていくのですが、カレーも同じでスパイスの組み合わせなんですよ。だから「カレーは音楽的」って思っていますね。

 

――確かにスパイスって、めちゃくちゃ種類がありますよね。組み合わせは無限大ですね。

飯島さん:そう、だから本を読んでいて急にスパイスの配合を思いついたり、音楽を聴いていてヒントが現れるときもあるので、その都度、次作るカレーのレシピを冷蔵庫に書き出してます(笑)。

 

――レシピは冷蔵庫に書くのですね(笑)。

 

これがSPICE PUSHERのカレー。

一般的な飲食店と異なり、決まったメニューが存在しないのが「SPICE PUSHER」のスタイル。基本的には3種類のカレーが用意され、定番である「チキンカレー」は常に進化を続けているので、同じ味に巡り合えることはまずない。その他のメニュー内容も日々入れ替わり、訪れる度にワクワクする。

 

 

この日選んだカレーは、すべてのカレーを贅沢に食べられる「トリプルあいがけ」。内容は定番の「チキンカレー」、「ミャンマーカレー(豚バラ)」、「アサリィパセリィ」の3種類。ちなみに進化し続けるチキンカレーは“其32”と書かれていたので、32作目だ。

 

 

「チキンカレー其1」とはどういったものだったのかと聞いてみると、「玉ネギをふんだんに使った無難においしいカレー」という答えが返ってきた。でも無難では面白くないと、そこからいろいろ試行錯誤がはじまり現在に至る。ちなみに「チキンカレー其の32」は、どういうイメージで作ったかというと、「90年代の低音ベースがブンブン鳴ってる音楽が流れるクラブに初めてやってきたシラフの元陸上部(25歳)の女性が、スピーカーの前で踊り狂っている、爽やかな様子」と素人には理解し難い回答が返ってきた。実際に食べてみると、爽やかなスパイスの香りを感じられつつも、どこか重みのある低音のようなコクが感じられた。説明を聞いたからイメージがリンクしたが、聞いていなかったのであれば、単純にうまい!って感想。見事に複数のスパイスが絡み合っている。

 

 

そしてもうひとつ、「SPICE PUSHER」のカレーには、音楽でいえばちょっとしたアクセントや遊び心ともいえる「トッピング」が加えられている。15種類ほど用意されたトッピングは、その日のカレーによって、スパイスの内容によって5~6種類が盛られる。福神漬けとは違い、箸休めというよりは、カレーと合わせて一緒に食べるスタイルがオススメ。この食べ方を楽しんでもらうため、テーブルに運ばれてくると「ちょっとずつ混ぜて、最後は一体化して食べると楽しめます」とアナウンスがある。

 

飽きずに作れる、それがカレー。

――飯島さんにとってカレーとは、どういう存在ですか?

飯島さん:音楽と一緒で、自由に表現できるものですね。僕って飽き性なんですよ。でも、そんな飽き性な自分を、唯一受け入れてくれたのがカレーでした(笑)。

 

――飽き性なんですね(笑)

飯島さん:でもスパイスって奥が深すぎて、一生終わらない楽しみ?遊び?なんですよね。スパイスの組み合わせのアイディアもたくさん浮かんでくるし、食材からもヒントがもらえるし、音楽も本も映画だって僕からしたらカレーのアイディアをくれるものなんです。だからカレーなら一生飽きずに作れるかなって。

 

――ずっと作り続けたとして、チキンカレーの「最終形」は訪れないかもしれない?

飯島さん:ん~むしろ「コレだ!」と思うチキンカレーができたとしたらカレー屋をやめますね。だってもう終わりってことでしょ?「解散!」ってひとりで叫んじゃいますね。それもそれで面白いか(笑)。

 

 

Curry,Coffee&Beer SPICE PUSHER 164

新潟県新潟市中央区西堀通5番町829


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