ただの珈琲屋さんではなかった、鳥屋野潟公園の「prefix coffee stand」。
カフェ
2020.11.20
鳥屋野潟公園の鐘木地区。その多目的エリアでテントを張って、朝の6時半から10時までコーヒースタンドをやっている人がいる……そんな情報をキャッチしたThings編集部。いったい何者だろう? 気になって(正体をつき止めに)早朝の鳥屋野潟公園へ行ってきました!

prefix coffee stand
大岩 由次 Yoshitsugu Ooiwa
1972年新潟市生まれ。27歳のときに青森に本社のある移動体通信の会社へ就職。携帯電話や衛星放送の契約販売の営業として働く。在職中の2年半で青森、秋田、岩手と東北3県の統括部長を歴任。30歳で新潟に戻り、新潟の出版社に就職して18年間勤務。その後独立し「infix」を立ち上げる。「prefix coffee stand」は、「infix」の運営する事業のひとつ。

珈琲屋さんだけれど、実は広告屋さんでもあった!
――まず鳥屋野潟公園でコーヒースタンドをやろうって思ったきっかけって何かあるんですか?
大岩さん:今年の5月に、僕がまだ「月刊新潟Komachi」を発刊する「株式会社ニューズ・ライン」の社員として働いていた頃なんですけど、「テイクアウト&ドライブスルーin鳥屋野潟公園」というイベントの企画運営に携わりました。鳥屋野潟公園の駐車場を借りて行ったテイクアウトイベントなんですけど、「コロナ禍でドライブスルー」っていうのが評判で、1回のイベントでだいたい1,000食くらい販売する実績ができたんです。それを継続してやっていくなかで、鳥屋野潟公園さんとの関係が構築されて、「公園でコーヒースタンドができたらすごく良いですよね」っていうような話をしていたら、「大岩さんだったらやってもいいよ」って言っていただけて。そこから実際に計画を立てて今に至る感じですね。
――大岩さんはニューズ・ラインさんで働いていたんですね。
大岩さん:ニューズ・ラインのときは月刊新潟Komachiの広告営業をやっていました。ただ、今は単純に「雑誌に広告を掲載しませんか?」っていう時代ではなくなってきているのは、皆さんご存知の通りだと思うんです。じゃあ、そういう中でどこでお客さんに利益を獲得してもらおうかとか、事業を継続的に続けていくためのサポートってどうやったらできるんだろうかってずっと考えていました。コロナで打撃を受けた飲食業の方への提案のその中のひとつが「テイクアウト&ドライブスルーin鳥屋野潟公園」の企画だったんです。
――なるほど。
大岩さん:飲食店の方たちの「広告は出したいけどこのご時世、収入も安定してないし売る場所もないしどうしたら良いか分からないんだよね」って声と、「公共空間を利用して、こういうことやったらうまくいくんじゃないの」っていう考えがうまく一致して。地元のタウン誌としては、この企画ではしっかり役目を果たせているんじゃないだろうかと感じていました。そんなときに、今後の働き方を自分の中でも見直すタイミングとも重なり、退職して会社との新しい契約形態で働く決断をしました。その頃から、コーヒースタンドをやらせてもらえるって話なんかもあったりしたので。僕としてはニューズ・ラインの名前を借りて広告企画営業として動けるし、自由度が高くなるので良いなと考えました。自分でやっていく自信もありましたし。事業を継続してニューズ・ラインのチームとしてやらしてもらっている感覚ですね。8月29日に退職して、9月1日から「prefix coffee stand」を始めました。

コーヒースタンドは数ある手段の中のひとつ。
――けっこうな急展開だったんですね。
大岩さん:そうなんです。いろいろな条件がそろっていて、あとは最終的には独立するかしないかの判断だけでしたね。
――前職では飲食店さんの担当されていたんですか?
大岩さん:飲食店さんだけではなく、サービス業全般ですね。美容室さんとかメーカーさんとか。他にも、県庁や各市町村にも出入りしていました。
――幅広い業種のお客さんとやりとりをしていたんですね。その中のひとつの企画として「テイクアウト&ドライブスルーin鳥屋野潟公園」だったわけですね。
大岩さん:「公共空間を利用した楽しみ方」っていうのを皆さんに提案したかったんです。公園もそうなんですけど、先月は、県庁の有志団体の公民連携推進プロジェクトのメンバー他、様々な方のご配慮、ご協力をいただいて、国指定重要文化財である萬代橋の上でコーヒースタンドやらせてもらったんです。皆さん普段当たり前のように通り過ぎている場所ですよね。そこに一杯のコーヒーがあるだけで人が集まって会話が楽しめたりコミュニティができるんです。そうするとエンターテイメントになる。「受け皿を作るだけで人が滞留してコミュニティができるってことを実証したかったんですよ」というメンバーの方の声に激しく共感して実現に至りました。例えば公園に行くにしても、「白鳥を見る」「紅葉を見る」みたいなテーマがあれば行けますけど、何もなければなかなか行けない。でも一杯のコーヒーがあれば、きっかけになりますよね。萬代橋のイベントなんかもなんかまさにそうで、昨今のアウトドアブームもあり、アウトドアチェアやコットなどを用意し、低い位置でくつろいでいただけるスペースも用意しました。萬代橋で地べたに近い位置で座ることなんてまずないですよね。座ってみるとまた違う景色が見えてきたり。
――確かになかなか萬代橋で座らないですよね(笑)
大岩さん:そうやって自分の住み慣れた街を違う視点で見ることができる。全然違ったものを体感することができる。それ自体がエンターテイメントであって、普段の生活に溶け込み見過ごしがちな公共空間を使うのって、こういったコロナの時代の新しい「過ごし方」の創出なんだと思っています。自分たちの住む街の魅力を再認識する機会と一緒に。


――珈琲はあくまで数ある手段の中のひとつってことですね。それにしても企画の立ち上げからオープンまでのスピード感がすごかったですね。
大岩さん:広告業っていうのはこういう、企画作ってイベントを準備し告知することの繰り返しなんですよ。その感覚で進めたので、何か新しいことをやっていたっていう感覚はあまりなかったですね。進め方はニューズ・ラインにいた頃にさんざんやってきたことなので、展開も早くできたんだと思います。気持ち的には雇用形態が雇用契約から代理店契約に代わっただけって感じですね。ニューズ・ラインで18年間やってきたことを繰り返しているだけ。変化があるとすれば朝起きるのと夜寝るのが早くなったことですかね(笑)
――ちなみに今使われている珈琲豆はこだわりがあったりするんですか?
大岩さん:まずコーヒーはスペシャルティコーヒーと呼ばれる豆を使用しています。東堀の「LUXUOSO(ルシュオーゾ)」さんの焙煎した豆。僕自身、この豆を15年愛飲していて、LCFマンデリンというインドネシアの豆なんですが、品質や焙煎も安定しているのでこの豆を選びました。商売としてお客様に提供するには間違いない豆だと思いましたね。豆の詳しいことは以前こちらで取り上げていたLUXUOSOさんの記事を見ていただいた方が良いかもですね。僕の口から言うよりも説得力あると思うので(笑)。僕から言えるのは200gで1,900円する高価な豆、ということだけにしておきます(笑)。ちょっと寒いんで僕も珈琲飲んでいいですか?
――もちろんです(笑)

コロナの時代の新しい楽しみ方の創出。
――公園に人が集まるって、本来は普通のことでもありますよね。
大岩さん:新潟には公園がたくさんあって、新潟市だけでも1,600を超える数があるんです。市民ひとりあたりの公園面積は12.42㎡あると言われています。鳥屋野潟公園のようなタイプの公園は、散歩や散策を中心に楽しまれていますけど、一般的に皆さんはやっぱり遊具の充実した公園に行きがちだと思うんです。それがなんでかって考えたときに、世の中いろいろと便利に刺激的になりすぎて、「普通の公園」での遊び方がわからなくなっちゃったんじゃないかって思ったんです。そういうところがもっと変わればいいなって気持ちがあります。何もない公園でもコーヒースタンドのようなきっかけがひとつあれば、人は立ち止まって景観や季節を感じ、言葉を交わし、コミニュティができて、と、暮らしがひとつ豊かになるんじゃないかと思います。新潟にはそういう可能性のある空間がたくさんあるので。そこに僕たちみたいな人間が間に入ることできっかけ作りをしていきたいなって。
――それはコロナだからってのもありますか?
大岩さん:コロナのきっかけは大きいですね。やっぱり外でできることだし、今までとは違った生活に新しい価値を見出していかないといけないと思うので。今年の10月11日には、ここの敷地内にトリムの森ってセクションがあるんですけど、そこで公園の新しい利用方法を模索する施策のひとつでライブをやったりもしました。業界に強い友人に協力を得て、BLANKEY JET CITYの中村達也さんとDragon AshのATSUSHIさんの風人雷人というユニットのライブを、鳥屋野潟をバックに、沈む夕日に白鳥が帰ってくるみたいな景色の中で実現してもらいました。お客さんにもソーシャルディスタンスを保ちながらテントで見てもらったので、コロナ禍のイベントが難しい中でも工夫しながら実現が可能になりました。新潟にはこんな自然豊かな場所が、しかも街の中心地にあるってことを伝えたい。デイキャンプとか、冬はかまくら作ったりとか、他にもいろいろ企画しているものはたくさんあるのでこれからの鳥屋野潟公園の動きを楽しみにしていてください。

――朝のコーヒースタンドって、便利ですよね。
大岩さん:コーヒースタンドは事務所を兼ねて始めたようなところもあります。ニューズ・ラインもすぐ近くで広告代理店さんもこの辺多いですからね。朝の出勤前に広告の打合せとかで寄ってもらいたいなって。6:30~10:00までっていう営業時間にも明確な理由があって、その時間って、美味しいコーヒーが飲みたくってもコンビニくらいでしかコーヒー買えないんですよね。
――ああ、確かにそうですね。
大岩さん:美味しいコーヒーやお茶を飲んでもらいたかったので、自分の人生の中で出会って感動した「LUXUOSO」のマンデリンや、「冨士美園」の村上茶をお客様に提供しています。僕は珈琲屋ではなく広告屋なので。
prefix coffee stand
新潟県新潟市西蒲区松山16-2 studio Roop内 ※移転しました
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