三条市に「バス長ラーメン」という変わった名前のラーメン店があるのをご存知でしょうか。お店の前にはバス停を模した看板も置かれています。店主がバスマニアなのか、それともバスの運転手だったのか……。詳しくお話を聞くために、店主の長沼さんを訪ねました。
バス長ラーメン
長沼 義宏 Yoshihiro Naganuma
1972年新潟市西蒲区(旧中之口村)生まれ。エレベーターメーカー、木材店のプレカット工場を経てラーメン店で修業をはじめる。2005年に「バス長ラーメン」をオープン。趣味は釣りやボウリング。
——「バス長ラーメン」っていうのは変わった名前ですけど、どんな由来があるんですか?
長沼さん:動かなくなったバスを店舗に使ってお店をはじめたので、自分の苗字からとった「長」と合わせて「バス長ラーメン」っていう店名にしたんです。何度か移転して現在の店舗になったんだけど、初心を忘れないようにそのままの店名で営業しています。
——それでお店の前にバス停の看板があったり、メニューにバス停のマークがプリントされたりしているんですね。長沼さんはもともとラーメンが好きだったんですか?
長沼さん:親の勤めていた職場の隣にラーメン店があって、子どもの頃はよくそこへ連れていってもらったので、当時からラーメンが大好きでしたね。でもラーメンの仕事をやろうとは思っていなかったんです。
——じゃあまったく違った仕事をされていたんでしょうか。
長沼さん:そうそう、エレベーターメーカーや木材会社に勤めていました。木材会社では工場長を務めていたんですよ。
——それなのに、どうしてラーメンの仕事をすることになったんでしょう?
長沼さん:ラーメン店で働いていた知り合いから誘われたんです。以前からラーメンをどんなふうに作っているのか興味があったので、好奇心もあって働いてみようと思いました。
——なるほど。実際にラーメン店で働いてみていかがでしたか?
長沼さん:ラーメン店どころか飲食店で働いた経験がなかったので、何もかも大変だったけど新鮮でもありましたね。
——どんなことが大変でした?
長沼さん:仕込みに時間がかかるので、働く時間が長いことですね。でもそれ以上に、接客はもっと大変だと思いました(笑)。人間だから毎日元気なわけじゃないんだけど、お客様にとっては関係ないことだし、ましてや店の看板を背負って対応しているわけだからテンションを上げて接客に臨んでいました。自分がお客だったときには考えもしなかった接客の難しさを学びましたね。
——接客って大変ですよね。自分でお店をはじめたのは、どんないきさつがあったんでしょうか?
長沼さん:いろいろなラーメン店が店舗として使ってきた、廃車のバスが空いていることを知ったからなんです。厨房設備もそのまま残っていたので、お金をかけずに店をはじめることができると思いました。そのバスに巡り会わなかったら、自分でお店をやることはなかったかもしれないですね(笑)
——オープンするにあたって、大変だったことはありましたか?
長沼さん:修業先の味をそのまま出すわけにはいかないので、自分の店の味を作り出すことが大変でしたね。かえしの配合やスープの取り方を自分なりに変えて作り上げました。その後も少しずつ変えてはいますけど、基本的には創業から変わらない味で提供しています。
——看板メニューは燕三条系の背脂ラーメンなんですよね。
長沼さん:そうです。うちの背脂ラーメンはトッピングの背脂でこってりする分、ベースのスープをあっさりさせてバランスをとっています。スープは弱火で煮ながら、くどくならないように気をつけているんです。あと、しつこさが出ないように背脂の質にもこだわっています。
——確かに食べやすくてスープまで飲み干せちゃいますね。オープンしてからの反響はいかがでした?
長沼さん:お金がなかったから宣伝もしなかったし、廃車になったバスは入りにくいのか、最初はお客様も少なかったですね(笑)。でもバスで営業しているラーメン店が珍しくて、地元テレビ局のローカル番組で紹介してもらったことで、だんだんお客様も増えていきました。
——移転されたのは、お客さんが増えたから?
長沼さん:それもありますけど、カウンターしかないお店だったので、家族連れのお客様が来づらかったんです。常連のお客様からも「家族を連れてきたい」という声があったので、その声に応えたくて広い店舗に移転しました。移転先は以前お寿司屋さんの店舗として使われていたので、小上がりもあって家族連れにも来ていただけるようになったんです。
——そこからまた現在の場所に移転したのは、どうしてなんでしょうか?
長沼さん:前の店舗は調理場から客席がすべて見渡せない造りになっていて、ちょっとやりにくいなと感じていたんです。だからもっとお客様に目が届く店舗で営業したいと思って、こちらに移転してきました。ただ、ちょっと広すぎたかなとは思うけどね(笑)
——これだけの広さがあると、スタッフさんの人数も多くなりますよね。
長沼さん:そうですね、だからスタッフのケアには気を使っています。できるだけコミュニケーションを取って、様子がおかしかったら相談に乗ったりもしているんですよ。おかげで、どのスタッフも長く働いてくれるのが自慢ですね。というか、みんなが僕を支えてくれているだけなんですけどね(笑)
バス長ラーメン
三条市東本成寺11-34
0256-64-8837
11:00-15:00/17:00-21:00
不定休