誰かの寂しさに、そっと寄り添う
ペン画アーティスト「harumi」さん
カルチャー
2025.11.28
新潟市のレンタルギャラリー「STACK-BOARD」のスタッフであり、作家としても活動中の「harumi」さん。本格的な作品づくりをはじめたきっかけは、関東から新潟へ引っ越してきたこと。馴染みのない土地で心が折れかけてから、「STACK-BOARD」と出会い、気持ちに大きな変化が生まれるまでのお話など、いろいろとお聞きしました。
harumi
1991年神奈川県生まれ。デザイン系の専門学校を卒業。ご主人の転勤のため2021年に関東圏から新潟へ転居。2022年から本格的に作家として活動する傍ら「STACK-BOARD」のスタッフとして働く。最近頑張ったことは「恐竜検定 中級」に受かるための勉強。無事に合格。
「誰でもない私」が、
作家として歩みはじめる。
――harumiさんは、いつから作家活動をされているんですか?
harumiさん:新潟に引っ越してきたのが2021年。その少し前から、趣味の範囲でものづくりをしていました。企画展に参加しはじめたのは、新潟に来た次の年からです。
――作家さんのお話を聞くと、小さい頃から何かしらを作ることが得意だったり、好きだったりという方が多いです。harumiさんは、どうでしたか?
harumiさん:私も子どもの頃から絵を描くのが好きで、中学生までは漫画家になりたいと思っていました。ストーリーを練るのが苦手で断念したんですけどね。その後にグラフィックデザインの存在を知り、デザイン系の専門学校へ進みました。卒業後はのんびりと自分のペースで、制作をしていました。
――作家としてスタートを切ったのには、何かきっかけがあったんでしょうか。
harumiさん:夫の仕事の都合で新潟に引っ越してきたんですが……。夫婦ともに縁もゆかりもない土地ですし、最初の一年間は、ほんとうに心細くて。気持ちがすごく沈んでいたんですよね。それで「このままではまずい。どうにかしなくちゃ」と創作活動に没頭するようになったんです。「ものづくりをすることで、自分は救われるかもしれない」と思って。
――harumiさんたちが新潟に来られた年って、かなり雪が積もった年だったような。
harumiさん:周りの人たちからもそう聞きました。今になれば笑い話ですけど、雪国の寒さと大雪に本気で絶望してしまって。越してきたのが、冬本番の2月というのもよくなかったんです(苦笑)
――でも、創作活動も孤独なような気がするんですけれども。
harumiさん:確かに孤独ではあるんですが、「寂しい」孤独じゃなくて「潜っていける」孤独なんですよね。
――ほぉ~。潜っていく孤独とは、納得の表現です。それで、無事に気持ちは晴れましたか?
harumiさん:作品づくりに没頭して数ヶ月経って、新潟が暖かくなってきた頃、何度か「STACK-BOARD」の前を通りかかりました。このお店との出会いが、私にはとても大きくて。
――今は「STACK-BOARD」さんのスタッフでもいらっしゃいますもんね。どんな出会いだったのか、教えてください。
harumiさん:鏡張りの店内を覗いて「どうも絵を飾っているみたい」とわかりました。そのうちお店のことがどんどん気になって、やっと入店できた日、ちょうど企画展が行われていたんです。対応してくれたのが、オーナーの長北さん。「どうしたら企画展に参加できるのか」と聞いてみたら、プロ・アマ問わず作品を展示できると教えてくれて。その場で「次の企画展に出ます」と宣言しました。
――harumiさん、そこから一気に動きはじめたんですね。
harumiさん:「STACK-BOARD」は「何者でもない私」に発表の場をくれた場所です。そういうコンセプトを掲げているギャラリーで、まさにその通りの経験をさせてもらいました。……って、今回は「STACK-BOARD」の記事ではないのに宣伝みたいになっちゃいましたか(笑)

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小さな形ひとつひとつに込めた
メッセージ。
――企画展への参加が決まって、ものづくりへの意欲に変化はありましたか?
harumiさん:誰かに見てもらうのだから、より丁寧に、そして私と似たような境遇の人の背中をさすってあげるような安心感をもたらす作品をつくりたいと思うようになりました。私は細かい模様を描くのが好きで、それをたくさん敷き詰めてひとつの画を完成させます。その小さい模様ひとつひとつに思いを込めてみようと思ったんです。というのは、私、ここに引っ越してきた頃も、その前も「心の波」が大きくなるときがあって。でも別に、無理してポジティブにならなくたっていい、頑張らなくていい、と自分を肯定したいと思っているんです。同じように、作品を見た人には「元気にならなくちゃ」じゃなくて、「大丈夫だよね」って安心してもらえたらいいなと思っています。
――そう思うのには、もしかしてharumiさんが新潟に来たときの思い出が関係しているんですかね。あのとき何か支えがあったらよかったのに、みたいな。
harumiさん:それはあるかもしれません(笑)。「元気を出して」と言われたところで、どうにも気持ちが切り替えられない時期でしたから。
――ところでharumiさんの作品のことは、どう紹介すればいいでしょう? 抽象画? それともグラフィックアート?
harumiさん:主にボールペンを使って表現している「ペン画」ですね。真っ白なボードを絵の具などで塗りつぶして、その上からボールペンで一つひとつ模様を描いていきます。
――とても細かい作業だと思うんですが、制作にはどれくらいかかるんですか?
harumiさん:大きなサイズの作品は、完成までにおよそ1ヶ月かかります。細かい作業が続くので、腕が疲れたり集中力が途切れたりしてしまって。長く描き続けるためにも、1日の作業時間は数時間に抑えるようにしています。


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塞ぎ込んだあの日々を経て、
「大丈夫」と言える。
――はじめての企画展以降は、どんな活動を?
harumiさん:最初の1年間は「STACK-BOARD」の企画展にできるだけ参加しました。だんだんと、県外のギャラリーさんでも発表してみたいって思うようになって。情報を集めて、参加するようになりました。
――それは発信したいって気持ちが強くなったということですか?
harumiさん:それもありますが、「『harumi』を知らない人が私の作品を見たらどう思うのかな」と気になったからです。「STACK-BOARD」での企画展は、「スタッフの『harumi』」というフィルターがどうしてもかかってしまうので、そうではない場所では、どんな意見や感想がもらえるのか知りたくなって。「かっこいいね」という言葉をいただけたり、緻密な作業を褒めてもらえたりして嬉しかったな。
――実績を重ねても、変わらずに持ち続けているビジョンみたいなものは?
harumiさん:私の作品は、ダークな印象のものが多いです。それがかえって「安心」「仲間がいる」と思ってもらえる部分があるんじゃないかなと思っていて。作品に触れる人が落ち込んでいても「ひとりじゃないんだな」ってホッとできるような作品を作りたいです。誰にも作品を見てもらえなくなったら、自分のために描き続けたいと思っています。
――どんな答えが返ってくるかちょっと心配ですが、今のharumiさんにとって、新潟はどんな場所ですか?
harumiさん:もちろん、大好きです(笑)。たくさんの出会いに恵まれた「STACK-BOARD」は忘れられない場所ですし、ご飯も美味しいですしね。車でいろいろな場所へ行きたくて、新潟へ来てから免許を取ったんですよ。南北に長くて、いろいろな場所で豊かな自然に触れることができるんだから魅力的ですよね。

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